第4話 ちょっと休憩
「なんかこの洞窟ってキャンプ場みたいね。スライムとかいうやつも全然出て来ないし、宝石どころか金貨も落ちてないじゃない」
ミユは甘いお茶を飲みながら、呆れてつぶやいた。
「私の宝物はこのチョコレートクッキーです!」
ギリーは最後の一枚を愛おしそうに眺めると、意を決して口に入れた。
「確かにな、トゲネズミ一匹出てこないのは変だよな、
ブランは火のついた薪木を拾って遠くに投げてみたが、動くものは何も見えなかった。
「ミユさんが納得するような宝物って、もっとずっと奥の方とかずっと下に降りた所にしか残ってないんですよ」
「えっ?! じゃあ何で行かないのっ!?」
「俺たちはレベル6だからな……」
「何がいるか分かりませんから……」
どうりで似たような風景がずっと続くと思ったら、薄暗い洞窟だからではなく安全な同じ場所をぐるぐると歩き回っていたことに、ようやくミユは気づいた。
「あのねぇ……『ちょっとぐらいは冒険をしないと見返りは無い!』って私のお姉ちゃんが言ってたわ」
「それはそうですけど」
「まあな、その姉ちゃんが言うことは正しいんだよな」
「ミユさんのお姉さんもコーコーセーなんですか?」
「貿易会社でOLやってるわ、事務員だけどね。趣味でいろいろな投資とかやってるけど、私もよく分かんない」
FX投資に手を出して泣いていた姉の姿は、この際忘れることにしたミユだった。
※FX投資は預けた証拠金の100倍の金額で取引が可能ですが、それだけ損失も大きくなる可能性があります。
「ブランどうしよう……」
「そうだな、このままじゃらちが明かないしな……」
ギリーとブランは意を決すると立ち上がった。
「二人とも偉い! さあ行くわよっ!」
ミユも元気に立ち上がると、火の点いた薪木を
「あれ? この模様は何?」
ミユは薪木で照らされた壁の模様に触れてみた。手の平ぐらいの大きさのタイルがたくさん並んでいる。
「綺麗ねーっ、魚の鱗みたい!」
ギリーとブランは泣きそうな顔をしている。
「あれ? どうしたの?」
ミユが薪木を
「恐竜っ!」
ミユは目をキラキラと輝かせてドラゴンの背中をバシバシと叩いた。ギリーとブランは腰を抜かして地面に転がった。
〝パシャッ! パシャッ! パシャッ!〟
ドラゴンの大きな背にもたれて自撮りをするミユ。
「あれっ、何だろう?」
ドラゴンは丸いボールのようなものを抱えていた。
「もしかして、卵っ?」
〝パシャッ! パシャッ!〟
「ねえ見て! 大きな卵がっ! ってちょっと二人ともどこ行くのっ! ねえちょっと待ってよーーっ!」
ミユは地面を這いずって逃げるギリーとブランを追いかけた。
〔第4話 ちょっと休憩 終〕
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