第10話 入るクラスは1ーE

「へぇ、これがエトワール魔法学校の制服なんだね」

「よく似合ってますよ、アリスさん」

「ありがとうね、ファナ」


 無事、後期の入学手続きを完了し、制服が届いた。

 どうもこの学校の制服は着た人に合わせてサイズが変わると言う魔法の布で作られているみたいだ。

 それに、水色のブレザーっぽい感じかつ赤いリボンタイの付いたブラウスとフリルの付いた水色のプリーツスカートが可愛い。

 着用してすぐにクルクルと回ってみる。

 スカートがひらりと翻るが、今は気にしない。

 傍で見ていたファナも似合っていると言ってくれたし、これからの学校生活に気合が入る。

 ファナは、クレス校長がボクの住む寮の前にくるまでにこっちに訪れて、制服の確認をしてくれたのだ。


 おっと、ここで彼女を呼び捨てにしているのは、同じ学校で過ごす仲間として接して欲しいという彼女の願いからだ。


「教材はお父様が持って来てくださいます。 お手洗いを済ませてから出ましょうか」

「そうだね。 行ってくるよ」


 そろそろ時間なのだが、ファナの言うように先にトイレを済ませておく。

 自室の中にトイレがあるのは便利だなぁ。

 ワルジール時代は、トイレの件ではいい思い出がないからね。


「お待たせ」

「では、行きましょうか。 丁度お父様も来たようですし、ジャックさんとミーナさんも来ましたし」


 トイレを済ませたボクはファナと一緒に部屋を出た。

 寮の入り口でクレス校長が教材を持って待っていた。

 同時にジャック君とミーナも準備を終えて来たようだ。


「やぁ、今日までよく休めたかな?」

「はい。おかげさまで」

「ミーナさんとジャックさんも似合ってますよ」

「ありがとう。 この制服、可愛いよね」


 ミーナもエトワールの制服を気に入ってるみたいだ。

 ワルジールの紺のブレザーも悪くはないけどね。


 なお、昨日の説明で学費は寮の費用を含めて一年で25万ガルドらしい。

 あの【ワルジール魔法学校】では一年で10万ガルドだったから、かなり高い部類だ。

 今年はお母さんからの支援で何とかなるが、ボクは来年以降に備えて、この学校の制度を利用して自主鍛練時の時に学費を支払う為にダンジョンに入り、素材を集めないといけない。

 二人以上でダンジョンに潜る事が条件になるが。

 ジャック君やミーナは当然として、あとはファナに頼もうかな?


「では、これが教材だ。 君達が入るクラスは後期になるから1-Eだ。 担任にも話を通してあるから問題はない」

「校長先生、フットワーク軽くないですか?」

「それがお父様たる所以ですから、気にしては負けです」

「ファナ、何気に酷くないか?」

「あはは……」


 クレス校長のフットワークの軽さに対し、ファナが気にしたら負けだと言った事にボクは苦笑いした。


「後期クラスは現時点では1-Eのみになる。 アリス君やジャック君、ミーナ君以外にも入る生徒たちはいるぞ」

「そうなんですか?」

「フリスク一派によってやられた一部の子たちが落ち着くまで寮で待機して貰ってたんです」

「なるほど……」


 クラスに関しては、後期入学なので1-Eになるが、ボク達以外にも待機していた子たちもいたようだ。

 いずれもワルジールのフリスク一派にやられた子たちの一部で、ボク達の入学を機に、授業を始める事になったようだ。


 そうしている内に教室に近づいてきた。

 そこに男性と白衣の女性がが待っていた。 担任と副担任かな?


「お、来たな。 校長先生、彼女達が?」

「そうだ。 アリス君とミーナ君とジャック君だ」

「アリス・パリカールです」

「ジャック・エヴァンスです」

「私は、ミーナ・ファーウェイです」

「私は1ーEの担任のトッシュ・ファルコンだ。 よろしく頼む。 分からないことがあったら遠慮なく聞いてくれ」

「はい!」


 トッシュ先生か。

 爽やかないい人だという印象だなぁ。


「私は副担任のラビリスタ・ベルエールだよ。 気軽にラビ先生と呼んでおくれ」

「あ、はい。 よろしくお願いします、ラビ先生」


 一方で、白衣の女性が副担任のラビリスタ先生のようだ。

 セミロングの眼鏡女子という印象だねぇ。


「じゃあ、ファナは自分の教室に戻ってくれ」

「はい。 じゃあ、アリスさん達、また昼休みに」

「アリスとジャックとミーナは少しだけここで待ってくれ」


 そう言いながら、トッシュ先生とラビ先生が教室に入る。

 ファナは、前期入学なので自分の教室に戻るのだろう。

 多分、新たに入る生徒が来るという報告をするんだろう。

 なんか盛り上がってるなぁ。


「よし、入ってくれ」

「はい!」


 クレス校長に見送られながら、ボク達は教室にゆっくり入っていく。

 一応、向こうで知ってる人たちばかりだが、改めて自己紹介をしたのだった。

 みんな、ボクにかなり気に掛けてくれていたのが救いだなぁ。


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