魔法学校のアリス～いじめを受けて退学した少女は、新たな魔法学校で花を咲かせる～

第３話 オルクスの町にて

　オルクスの町の正門前で馬車が停まり、ボク達は馬車を降りる。

　そして、正門へ向かうと大人たちが待っていたようだ。

　それを見たミーナとジャック君がその大人たちに声を掛けていく。

「お帰り、ミーナ」

「お母さん、ただいま」

「親父、ただいま」

「ああ、事情は聞いた。 とんだ災難だったな……。 校長が急に変わるとはな」

　どうやら、ミーナのお母さんとジャック君のお父さんだった。

　双方とも、予め事情を聞いていたので、退学の件もすんなり受け入れていた。

「お母さん、こちらが友人のアリスちゃん」

「アリス・パリカールです」

「ミーナの母親のリリア・ファーウェイです。 事情は娘から聞きました。 大変でしたね……」

「ええ、校長が変わってからが地獄でした」

　まず、ミーナが自分の母親のリリアさんにボクを紹介する。

　リリアさんにもワルジール魔法学校におけるボクの事情を伝えてくれているみたいだった。

「おおっ、君がイリスさんの娘さんかな？」

「あ、はい。 アリスと言います」

「俺はジャックの父親で帽子屋の店主のエリック・エヴァンスだ。 うちの店にはイリスさんが常連となってくれてるが、まさかその娘である君がそんな目に遭ってたとはなぁ」

　次にジャック君のお父さんがこっちに来た。

　やはりボクのお母さんであるイリス・パリカールが帽子屋さんの常連となっているみたいで、そこからも話を聞いたのだろう。

「ボクの母親、どんな感じでした？」

「そりゃあ、激怒してたな。 王家を通じてでもワルジール魔法学校にクレームを入れたんだが、聞く耳持つどころかもみ消されたってな」

「やっぱりかー……」

　エリックさん曰く、急に校長がフリスクに変わってからボクが受けた仕打ちの件で、お母さんはかなり激怒したとの事。

　やはり王家経由でもクレームをいれたんだけど、聞く耳持つどころかもみ消しにしたとか……。

　嫌な予感しかしないなぁ、これ。

「まぁ、校長が急に変わってからワルジールはおかしくなったって話もしてて、かつての仲間にも相談するって言ってたな」

「あー、お母さんは勇者パーティーに加わってたって言ってましたね」

「アリスちゃんのお母さん、【聖魔女】って呼ばれてたもんね」

「そこは俺も聞いたな。 フリスクに変わる前の学校で」

　それから、ミーナとジャック君も加わって色々な話をした。

　お母さん、どうやら当時勇者パーティーの一員として同行した際の仲間にも相談するってエリックさんに言ってたんだ……。

　どんな仲間だったかは、聞いてなかったし、教えてもくれなかったけど……。

「とにかく、お疲れでしょう？ アリスちゃんもうちで休んでいきなさいな」

「ありがとうございます。 お言葉に甘えさせていただきます」

「良ければ、後でうちの店にも来てくれ。 アリスちゃんに似合う帽子を仕立ててやるさ」

「はい！」

　ミーナから事情を聞いているリリスさんから、ミーナの家で休むように言ってくれたので、お言葉に甘える事にした。

　フリスクに変わってから受けた仕打ちによる心のダメージを癒したいからね。

　また、エリックさんからも帽子屋さんでボクに似合う帽子を仕立ててくれるみたいだしね。

「じゃあ、早速夕飯にしましょうか。 暫く休養してから別の魔法学校への入学を考えましょう」

　リリアさんの一声で、時間的にも頃合いなのかそろそろ夕食にしようと言った。

　そして、暫く身体と心を休めてから別の魔法学校への入学を考えようという。

（確かに、冒険者とかになるにも学歴に魔法学校卒業がないとダメなんだっけ……）

　そうなのだ。

　クーデルカ王国内では、冒険者になったり他の魔法関係の職に就くにしても、最低でも魔法学校は卒業しないといけないのだ。

　一部の魔法学校では、他国で言う冒険者学校のシステムも採用しているので、魔力が低くても武器の扱いなどに長けていれば卒業も可能だ。

「ささ、早く家に入りましょう」

「そうだね、お母さん。 さ、アリスちゃんも」

「じゃあ、俺はあっちだし。 また明日な」

「うん。 ありがとうね、ジャック君」

　ミーナとリリアさんに先導される形で、ボクはミーナの家に向かう。

　ジャック君の実家の帽子屋さんは逆の方角なので、ここでひとまず別れる。

　その後、ボクはミーナの家族と一緒に夕食を摂り、空き部屋のベッドで休んだりして心の傷を癒すことにしたのだった。

　それから４日後……。

「おーい！ イリスさんが他の二人を連れて俺の家に来たんだ！」

「え！？ お母さんが！？ 他の二人を連れて！？」

　ジャック君が息を切らしながら、ミーナの家に来てそう言った。

　お母さんが他の二人を連れて、ジャック君の帽子屋さんの前に来ていると。