第34話 また?
「おう! おはようラモン」
第1の団長室へ呼ばれたのは、そのまた次の日の昼過ぎになってからだった。缶詰だった私はヒマだったので、久しぶりに読書をして過ごした。色々事後処理があるからね、しょうがない。
「お疲れ様です! ユーキさん一昨日はありがとうございました」
「いや。問題ない。それより身体は大丈夫か? その… ドーンは残念だ。団長、副団長で仲良かったからな~お前ら」
「ううん。いいよ。しょうがないし」
「それならいいんだが… まっ、困った事があったら何でも言え」
「え~? 優しいユーキさんってちょっとキモイんですけど~、ははは」
「お前! 下手に出たら調子こきやがって!」
「ははは」
この2日で落ち着いた私はユーキさんをいつもの様に揶揄うと少しだけど元気が出てきたよ。よし。いけそうだ。
「ま~ま~、ラモンちゃん~。大丈夫?」
ユーグさんが両手を広げて迎えてくれる。
「あはは。大丈夫ですよ~」
ぎゅーぎゅーに抱きしめられてちょっと苦しい。
「そう? それならいいんだけど。びっくりしたわよ~、ドーンの記憶がないなんて。あなた達いいコンビだったから」
「ん~、ま~。ドーンの方がショックは大きいかと。当事者ですから」
「へぇ~。ラモンちゃんもショックなんだ~、ふ~ん。ドーンの記憶がなくなって~ん~?」
「べ、別に。いいでしょう! 私の部下なんですし、心配して当たり前です」
「別に~いいけど~。恋の相談ならいつでも乗るわよぉ~?」
「ははははは、恋って何の冗談ですか、あははは」
ユーグさん。さすがに鋭いなぁ。変な汗が出てきた、もう。
「皆揃ったな。団長会議を始める」
総団長が席に着くと、各団長達も席に着いていよいよ会議が始まる。
「今回招集したのは一昨日のパーティーに賊が入った件だ。各自大体の事は把握していると思うが、答え合わせついでに話を聞いてくれ。スナッチ、報告を」
「はい」
スナッチ総副団長が総団長に代わり、事のあらましを話し出す。
「一昨日、夜8時過ぎ、総団長と歓談していた第3副団長ドーンが突如体調不良にみまわれ別室に移動。その際、ドーンには記憶が混濁するという症状が見られました。また、その10分後、第3のラモン団長より賊が侵入したかもしれないと報告を受け、第6ユーキ団長と第1のスバル、第3魔法士団副団長のキャスリーンが現場へ向かいました。捕えた賊は2人。元タッカー伯爵家の子息と子女である事が判明。この事件は今後第1のスバルと第6が担当します。現在、容疑者は第6の第19牢に収容されている」
第19牢か、第1級の重罪人が入る牢屋じゃなかたっけ。結構厳重なんだな。
「はい」
第7のシニアス団長が手を挙げた。
「ドーン氏は魔法攻撃を受けたのでしょうか? それとも物理的な何か? 薬とか… で、その犯人は同じ賊、またはその仲間の仕業ですか? と言うか本人はどこですか?」
「まだ全てが不明だ。ドーンは現在療養中である。この件は総団長直々に調査に当たる。また、本人は混乱が見られる為、復帰には1ヶ月程先を予定している」
「ん」
「どうぞ、グロッサー副団長」
「この場を借りて再度申請させてもらっていいっすか。いい加減、うちの団長を決めてくれない? 今回捕まったヘボが辞めてからトップがいなくて困ってるんすよ~。お願いしますよ~。次は使えるやつでお願いします」
第2副団長のグロッサーさんがタメ口混じりでキレ気味に話の流れを変えた。猛者だなぁ。
「グロー、ちょっと待て。この後にその話もする予定だ」
「うっす」
グロッサーさんは満足したのか、両手をポケットに入れて壁際に下がる。
ちょい悪なの? 度胸あるね。
「では、今後の進捗は第6へ問い合わせる事。次、団長について。総団長お願いします」
総団長は私達を見回し、一息ついてから話し出す。
「今回の事件を受けて、第3副団長のドーンは第1へ異動。私の下に戻る。そして、第3団長ラモン?」
え? 私? てか、ドーンが戻るって… 離れるの?
「はい」
「お前は、また異動で悪いが第2へ行ってくれ」
「は?」
第2って。私も元に戻るのかな? ついに平騎士に戻るの? え?
「そして、空いた第3団長の席は第1のゲッコーが就く事になる。意見がある者は?」
パチパチパチと拍手が鳴る。概ね、みんなは賛成の様だけど。
「ちょっといいですか?」
「ん~? 何だ? 第2は嫌か?」
「いえ… 私も戻るのはいいんですが、団長は誰でしょう?」
「何言ってんだ? お前だよ。第2団長はラモンだ」
「はぁぁぁぁ? 平騎士に戻るんじゃないんですか?」
「団長から平に戻さねぇよ。バカ。失敗した訳でもないのに」
いやいや。
久しぶりにニヤニヤ顔のスナッチ副団長が総団長の後ろでエアー『ば~か』をしている。むむむ。
「いや、団長としてこれで3度目の異動ですよ? 1年以内でちょっと異例過ぎませんか? 先程のゲッコーさんが第2へ行けばいいのでは?」
「それはない。今後の第3の課題は、王城警備の各騎士の力量を上げる必要がある、だ。ゲッコーは双剣の名手だし適任なんだよ」
… それを言われてしまっては言い返せないよぉ。確かに私は騎士としてはまだまだ実力がないけど… 私がしゅんとしていると総団長が笑い出した。
「ははははは、ラモン。お前はよくやっている。今度は第2だ。確か『掃除屋ラモン』だったか? また好きな様にやって団をキレイにしろ」
「好きな様にって… 掃除屋なんて呼ばないで下さい!」
たまたま策が当たっただけじゃん! しかもドーンが居ないんじゃぁ… 自信もないし、やる気も出ないよ。
「では、新団長は明日から着任しろ。急だが引き継ぎを今日中にやってくれ。取り敢えずは大まかでいい」
「「「はっ」」」
こうしてあっという間に会議が終わり、私は第2に戻る事になった。団長としてね。は~。
「なぁ、ちょっといいっすか?」
「ん? はい」
私を呼び止めたのは、さっき文句を言っていた第2副団長のグロッサーさんだった。
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