第5話 不調の赤木たち


〜〜赤木視点〜〜


「今日はBランクのダンジョンに潜る」


 へへへ。

 この前はAランクのダンジョンで調子が悪かったからな。

 無双配信して人気を取り戻してやるんだ。


「もう、この前のような失態は懲り懲りです。僕の子猫ちゃんたちが悲しみます」

「本当だよね。あたしもこの前みたいな撤退は嫌だよ」


「ダンジョンのランクを落とせばモンスターも弱くなる。雑魚を倒してれば調子も戻るさ。俺たちの力を視聴者に見せつけてやろうぜ」


「いいですね。やりましょう」

「ふん。暴れてやろうじゃないの!」


 最強探索者パーティー 炎の眼フレイムアイの復活だぜ!


 俺は配信用撮影機コウモリカメラの電源を入れた。


「よぉ、みんな!  炎の眼フレイムアイ、リーダーの赤木 迅平だ! 今日も燃やしてやるぜ! 探索スタート!!」


 フフフ。

 ダンジョンのランクを教えないのがポイントだよな。

 まぁ、出てくるモンスターでどの程度のダンジョンかはわかっちまうが、無双を見せれば問題ないだろう。


「メガファイヤー!!」


 俺の炎はダンジョンを燃やす。

 無双だぜ!!


 ところが、妙な感じは続いた。


「はぁ……はぁ……」


 なんでだ?

 ここはBランクだぞ?

 妙に敵が強い。


「ねぇ、赤木。ここって本当にBランクなんでしょうね?」


「間違うわけねぇだろ! そもそも、戦ってるのがドリルラビットだ。Bランクのモンスターじゃねぇか」


「そ、それはそうだけど……。きゃああッ!!」


  夜摘やつみが倒れる。


「ったく何やってんだよ! 青野原、フォローしろ!!」


「フォ、フォローしたいのは山々なんですけどね。僕だって苦戦しているんです」


 な、なにぃいい!?


 クソ、こうなったら最大ダメージを狙うしかない。


 剣に炎の呪文を宿らせて、


「ファイヤーソード!!」


 俺は3匹のドリルラビットを倒した。


「よし!」


 ところが、まだ10匹以上のドリルラビットが残っている。


 こんなことは日常茶飯事だったのに。

 いつもなら空気を吐くように余裕で討伐してたのによぉ!


 クソがぁ!

 ファイヤーソードは準備に時間がかかんだよぉお!!


 と、準備をしようとしたその時である。



グサァア……。



 脇腹に熱い感覚。


「な、なにぃいい……?」


 それはドリルラビットの角が俺の脇腹に刺さる感触だった。


「ぐはぁあああ!!」


 流血。


 やべぇえ。過度の出血はアカウント停止の対象だ。


「は、配信は中止だぁああ!! て、撤退だぁああああ!!」


 俺は直ぐ様コウモリカメラを停止した。


 俺たちは這う這うの体でダンジョンの出口へと到達した。


「「「はぁ……はぁ……」」」


 クソ。

 一体どうなってるんだ。


 魔法はダンジョンの中だけしか使えない。

 よって、入り口付近で治療する。


 俺は青野原の回復魔法で一命を取り留めた。


「なんでB級モンスターがあんなに強いんだよぉお?」


 コメントは荒れていた。


『ええええ、マジで?』

『ドッキリじゃないよね?』

『なんか格好悪いんだけど?』

『調子悪いのかな?』

『なんか違うかなって』

『冷めたーー』

『弱くね?』

『ファン辞めます』


 この動画は失敗だ。

 早めに削除しよう。


「おかしいじゃないですか!? 赤木も 夜摘やつみちゃんも真面目にやってください!」


あたしは真面目にやってるわよ!」


「お、俺だってだな……」


「だったらどうしてB級のモンスターに負けるのですか? おかしいじゃないですか!?」


 それはこっちが聞きたいんだよぉ!?


 くそ、どうなってやがる?


「な、なんか……敵の攻撃が当たるのよねぇ。以前はもっと余裕で避けれたのにさ」


 確かにな。

 妙だぜ?

 なんで敵の攻撃がこんなに当たるんだ?


「うう。酷いことになってますよ。見てください」


 と、青野原はスマホの画面を見せる。

 それは 炎の眼フレイムアイのチャンネルだった。


 ぐっ。

 チャンネル登録者数が減ってるぜ。

 10万人もいたのに9万5千人に落ちてる。


「ク、クソがぁあ!!」


 なぜだ!?

 なにが問題なんだよぉお?


「ちょ、ちょっとぉ。ヅイッターのフォロワーも減ってるわよ?」


 2万人いたフォロワーが1万6千人にまで落ち込んでやがるぞ。


「インズタも減ってますよ? どうするんですか赤木? このままじゃ 炎の眼フレイムアイはお終いですよ!」


 こ、こうなったら。


「し、C級だ。C級のダンジョンを探索して無双するんだよぉお!!」


「C級ぅ? 流石にバレますよ。ダンジョンモンスターが弱すぎるんですからぁあ!!」


「んなもん構うかよ!! 無双できればいいんだよ!!」


「しかし、弱いモンスターを無双してもファンは喜びません!」


「だったらもう一回、B級にチャレンジするかぁ?」


「うう……」


「視聴者なんてバカばっかりなんだからよ。カッコよく無双してりゃあいいんだよぉ。大事なのは勝つことなんだからよ!」


「た、確かに……そうかもしれませんね」


  夜摘やつみは眉を寄せた。


「ねぇ……。ちょっと考えたんだけどさ」


「なんだよ?」


「て、敵の攻撃が妙に当たるじゃない」


「それがどうしたんだ?」


「……う、うん。ちょっとそれが気になって」


「んなことより無双だぜ。敵を殲滅しちまえば敵の攻撃なんて関係ないんだからよ」


「……だね」


 なんだぁ?

 歯切れが悪いなぁ。


「なにか引っ掛かるのか?」


「も、もしもだよ。仮にだけど……」


「はぁ? なにが言いたいんだ?」


「……あ、いや。いい。やっぱり言うの辞めとく」


 やれやれ。

 負け続きだからな。

 不安も増えるか。


「よし。んじゃあ、次はC級を探索する。いいな?」


「わかった」

「うん……」


 へへへ。

 C級なら大丈夫だぜ。

 モンスターが弱いんだからな。

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