五色石のパズル

沙羅双樹

プレリュード

序章ー1 ネットカフェの住人

 白井彩は夜間大学に通いながらスーパー銭湯でアルバイトをしていたが、クレーム対応でミスをして、クビになってしまった。住居にしているネットカフェの女店主に

一週間だけ会計を待ってもらおうと思い、覚悟を決めて呼び止めた。


 女店主は愛想はよくないが、慈愛のある眼差しだったので、もしかすると、待ってもらえるかもと思ったのだった。


「すみません。一週間だけ会計を待ってもらえませんか?日雇いバイトをみつけて、必ず払います」


 女店主は彩のネックレスの石に視線の焦点を合わせた。


「そうねえ、別室で話しましょう」


 女店主は休憩室に彩を招き入れ、彩は休憩室に入り、勧められるまま椅子に座った。


「その、白い石のネックレスは家宝なの?」


 女店主は彩にコーヒーをいれながら、訊ねた。


「はい、祖母のものです。だから、これはダメです。必ず、働いて払います」

 

 彩は女店主の視線が石に釘付けだったのを警戒していたが、身寄りのない彩にとっては命の次に大事なものだった。


「そう。明日のお金は信用しないというのは商売の鉄則。今、これから話すことに同意すれば、お金を払わなくてもいいけど、同意しなければ、出て行ってもらいます」

 

 女店主はポーカーフェイスで彩に取引を申し込んだ。


「どんなことでしょう」


 彩は警戒を怠らず、闇バイトや売春だったら野宿をしようと覚悟を決めた。


「その、白い石の謎を解いてほしいの。その白色の石は五色石のうちの一つで、あなたは一つをもっている。他の4人もこのネットカフェの客よ。あなたは、このネットカフェで働きながら、他の4人についても調べて、他の4人も謎解きに協力すれば、あなた方に百万円づつあげる」


「謎って、なんですか?」


 彩はもちろん、やる気になって女店主と視線を合わせた。


「石はそれぞれ記憶をもっているの。その記憶と石が生まれるあたって発生した感情があるの。もちろん、石には感情がないと考えられているけど、創造主の神は石に感情を持たせたの。その石の感情を理解して共感することができれば、謎解きが終わって、5色石はもとの姿に戻って、強力な力を得ることができるの。そうなれば、私があげると約束した百万円が小さなプレゼントになるわね。まぁ、何をやるにしても、お金がないと行動はできないからね。あとね、謎解きをするにあたって、危険なことをすることになるけど、それも含んでおいてね。どう?同意する?同意したら契約書にサインをして」





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