第4話 天ヶ崎舞羽と寝起き
僕の隣で彼女が寝ている。いい加減驚かなくなってきたけれど、暑い事は暑い。
夏休みを目前に控えた夏の朝である。じめっとした空気が肌に纏わりつくような朝に、柔らかいマシュマロのような女子に纏わりつかれているのだから、暑くないわけが無かった。
「暑い暑い……暑いよぅ……」
そう言ったのは他ならぬ天ヶ崎舞羽だった。
「なら僕の上から降りればいいんじゃないか」
「いやーーーーー」
柳のようにしなやかな髪を振り乱して舞羽が首を振る。バサッ バサッ と彼女が首を振るたびに髪の毛が顔を撫で、ふわっとシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。フレグランスな箒に顔面を掃かれたらこんな気分になるのかと、僕は顔をしかめた。
「今日は学校だぞ。いつまでもこんな所にいないで準備をしたらどうなんだ」
「大丈夫。制服着てきた」
じゃあん、と膝立ちをして舞羽が半袖のセーラー服を広げてみせる。僕のツッコミなど予想済みだったらしい。空色の線が入った目にも涼しい夏服である。
「このために早起きしたのか?」
「うん。朝ご飯も済ませてるよ」
「そのやる気を別のとこで活かせないものかねぇ」
ベッドから身を起こして伸びをする。彼女の侵入に慣れるにつれて僕まで寝起きが緩慢になっていくようである。
「だめぇーー!」
「うごっ!?」
ところが、僕の寝起きを阻止するかのように舞羽が僕をベッドに押し倒したではないか。
「この時間のために早起きしたの! もっと!」
ギュッと柔らかい体を押し付けて、とても大切なモノを守るように懇願する舞羽。
まるで骨が無いかのようにふにふにした女子の柔らかさに、僕がドキドキしていると、ぐーーー、と誰かの腹の虫が鳴いた。
「………食べてないんだろ?」
「………うん」
天ヶ崎舞羽はときどき嘘をつく。
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