犬の骨 23
「ご理解とご協力をお願いいたします」
「ふざけるな!」
小学一年生の娘が学校に行きたくないと言い出した。
学校で、裏山の崖から飛び降りろと言われたので行きたくないと言っていた。
最悪子どものいじめか、まあ娘の何か勘違いかもしれないと思い、一応学校に問い合わせた。学校に呼び出された。
校長室に通された。校長と教頭、学年主任がいた。
学校の行事で、娘が選ばれた。裏山の崖から飛び降りてくれと言われた。ご理解とご協力をお願いいたしますと頭を下げられた。
意味がわからなかった。
「本気で言っているのか?」と聞くと、当然ですと返事があった。
十年毎に行っている事です、ご理解とご協力をお願いいたしますと。
その時校長の目線が動いたので、ふとその先を見た。
子どもの写真が飾ってあった。
古い物は昭和初期か、下手をしたら明治時代のものに見えた。
写真はどんどん新しくなっていき、全部で十五枚ほどあった。
嘘だろ、と思った。
「お前ら狂ってるよ」
それだけなんとか言って、部屋を後にした。
それ以降、娘は学校に行かせなかった。
教育委員会に訴えたが、そこでも
「ご理解とご協力をお願いいたします」
と言われた。
警察や弁護士、マスコミにも連絡してみたが、なしのつぶてだった。
家の周りに、不審者が出没しはじめた。
逃げるように引っ越した。
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以上が、最近中途採用で入社してきたSさんが酔って話していた事だ。
A町には近づかない方が良い、あそこはおかしいと言っていた。
Sさんはその数日後に住んでいたアパートが火事になり奥さんと共に亡くなった。
娘さんの遺体は発見されなかったらしく、行方不明のままだという。
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