伝説の勇者、千年の時を超えて

でるぴん

目覚めた勇者

第1話

 人はなぜ、期待をするのだろうか。


 何度も裏切られても、希望があればそれに期待を抱く、それは自然なことなのだろう。


 俺もかつてはそうだった。


 小学校に上がったくらいのときに父と母が亡くなり、絶望していた俺を救ってくれたのは母方の叔父さん夫婦だった。


 叔父さんの夫婦は子供はいなかった。出来なかったと言った方が良いだろう。なので、俺を本当の息子のように育ててくれた。


 しかし、俺は転校先の学校に馴染めず、いじめを受けていた。学校は地獄だったが、家に帰れば優しい叔父さんたちがいる。それだけで良かった。


 高校生になった頃、叔父さんの会社が倒産し、多額の借金を背負うようになっていた。


 そして、叔父さんは俺の母と父の死亡保険で手に入れた金を借金に当てたことがわかった。


 正直に俺は、そんなことで叔父さんたちに孝行ができるなら良いと思っていた。


 しかし、叔父さんたちの態度はどんどん変わっていく。生活の余裕の無さから、俺に当たるようになった。


 極め付けは


 「お前なんて、引き取らなければ良かった」


 という一言だった。


 ただただ、絶望をした。


 私生活も学校生活も逃げ場が無くなった俺は、何も考えなくなっていた。


 そして、学校の帰り道、車道を飛び出した子供を守り、トラックに轢かれて死んだ。

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