月日が経ち
緊張してきた。
ドキドキと高鳴る鼓動がよく聞える。
どうしてこんなに緊張しているのかというと、今日、愛野さんに会うからだ。
そして、気持ちをしっかりと伝えようと思っているのだ。
空からは白く儚い粉雪がゆらゆらと落ちていく。
はぁ、と息を吐くと白くなるほどに寒い夜空。
十二月に入ってから俺は一週間のリフレッシュ休暇を取得し、愛野さんに会いに来たのだ。
本音を言うとクリスマスにしたかったのだが、年末が近いということで忙しい為そもそもリフレッシュ休暇は取れないようになっている。
だから、かなり早めの、俺たちだけのクリスマス。
緊張しすぎて待ち合わせ時間より三十分も早めに来てしまった。
近くのコンビニでホットの缶コーヒーを買い、手や頬を温めながら愛野さんを待つ。
こうして待ち合わせするのはいつぶりだろうな。
なんて耽っていると、愛野さんが見えてきた。
まだ五分も経っていないが、早めに来てよかったかもしれない。
マフラーを首元に巻いていて、白いスカートから伸びる細い足は黒いタイツでしっかりと防寒されていた。
「お、お待たせしました……」
「久しぶり」
こういう時は褒めてあげるんだよな。
「似合ってるね。可愛いよ」
やっぱ褒めるの苦手。
愛野さんのこの超絶な可愛さを表現する言葉なんて俺には持ち合わせてないからな。どうしても淡白なものになってしまう。
でも、愛野さんは顔を赤くして首元に巻いたマフラーで少し顔を隠した。
「ありがとうございます……」
照れてくれてるのかな。
そうだとしたら嬉しい。
ってか、ほんと可愛いな。
他の男に言い寄られていてもおかしくないぞ。
「浩多さん、少し痩せられました?」
「やっぱり? 毎日仕事で体動かしてるからね」
ここ最近は早歩きで往復するようなことが多かったので、かなり痩せた。
「か、かっこいいです」
「あ、ありがとう……なんか、めっちゃ照れる」
「私も照れましたから、お返しです。それに、お世辞とかではないですから……」
そこまで言うと愛野さんは恥ずかしそうに俯いてしまった。
「俺もお世辞じゃないからね。まぁ、行こうか」
このままだとお互いに照れ死にしてしまう。
俺は何気なくを意識しつつそっと手を差し出す。
「はい」
愛野さんはそう言って俺の手をギュッと握ってくれた。
小さくて細くて、柔らかな手。
「温かいね愛野さんの手」
「ポケットにカイロを入れてましたから。ずっと握ってました。浩多さんも温かいです」
「俺はこれのお陰。もう冷えてるけど」
もう飲み切って冷えつつある缶コーヒー。
「では、今度は私が温めます」
上目で微笑む愛野さんが可愛すぎてこの瞬間を写真に収めて待ち受けにしようかと思ってしまった。
「じゃあ温め合いっこするか」
「はい」
それから俺たちは事前に予約しておいた焼き肉店へ向かうのだった。
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