お 出 か け ①

 土曜日。


 それは一週間の中で最も素晴らしい日と言えるだろう。


 まずは休みだという事!


 さらに夜更かししても翌日も休みなのでOK。


 オール一日ぐーたらしても良い日なのだ。


 だけど俺は今そんな日に……



 お出かけしようとしています!



「お、お兄ちゃん……玄関で何をしようとしているのでありますか……?」


 愛花も語尾が変わる程驚いている。


 敬語なのは変わってないが……。


「外出だ」

「なっ!? 毎週土曜は家にこもってアニメやゲームをしてダラダラしていたお兄ちゃんが……外に!?」

「酷い言いようだなおい」


 でも何も言い返せない……。


「じゃあ行ってくる」

「あ、えと、お気を付けて……」


 扉を開けてアスファルトの地面に立つ。


 ……土曜日に外出なんて久しぶりだからいつも通ってるこの道が違う道に感じる。


 えーと待ち合わせ場所は……


 スマホを見て待ち合わせ場所を再確認する。


 電車がいつもと違うから間違えないようにしないと……。


 時間を見ると少し急いだ方がいい時間だったので、早歩きで駅に向かった。


『まもなくー、四番線に――』


 あ、来た。


 休日の為いつもより空いていたので席に座る。


 早是からはただ待ち合わせ場所しか聞かされてないので、何をするのかは分からない。


「何やるんだろうなぁー」


 と小声で呟いた。









「おっ、岩井ー」


 声がした方に振り向く。


「あっ、早是」


 手を振っている早是に手を振り返す。


「待っちまったか?」

「いや、全然待ってない」

「うし! じゃあ遊び行こうぜ!」


 そう言って早是が歩き出す。


「遊びに行くって……どこに?」

「んー、考えてなかったけど……ゲーセンとか?」


 考えてなかったんかい!


「な、何で考えてないの……」

「え? だって友達とのお出かけってそういうもんじゃないの?」


 そ、そういうもんなのか?


 友達とでも流石に予定は決めると思うが……まあ陽キャの中の陽キャである早是がそう言うんだからそうなんだろう。


「んじゃ、行くぞー」


 早是が再び歩き出す。


「あぁちょ! 待って!」


 そう言いながら俺も走って追い付く。


 数分歩くとゲームセンターが見えて来た。


「うっしゃ、ここ行こうぜー!」


 自動ドアが開いて色んな音が聞こえてくる。


「あ、あれやろうぜ!」


 早是は近くにあったカーレースのゲームの椅子に座る。


「え、これどういうやつなの?」


 カーレースのゲームというのは分かる。


 でもそれ以外は分からない。


 だって友達と出かけるどころかゲーセン行った事ないんだもん!


「おま、これ知らないのか!?」

「ははは……」

「分かった、こっち来て座ってみ」


 遊び方を教わる。


 へぇー、実際の車みたいな感じでやるのか。


 こういうのがゲーセンにあるなんて知らなかった。


「やり方覚えたか?」

「うん」

「よーし、じゃ対戦すっぞー!」


 早是が隣の台に座る。


 キャラクターを選ぶ。


 何にしようか……このでっかいオバケにしておくか。


 次に車とタイヤと……グライダー?


 グライダーなんていつ使うんだ?


 取り敢えずそれらを選ぶ。


 速さ……重さ……曲がりやすさ……


 うーん……取り敢えず速さと曲がりやすさが高ければ良いんじゃないかな。


 隣で早是は


「モモンガァァー!」


 と叫びながらムササビのグライダーを選んでいた。


 グライダーは……雲に顔が書かれたやつにしよう。


 なんか可愛いし。


 タイヤはなんか見た目が気に入ったやつにした。


 テレッテッテッテテーレー


 と音楽がなりカウントダウンが始まる。


 右上に雲に乗った亀みたいなキャラが出てきて信号みたいなのを釣竿でぶら下げている。


3スリー 2ツー 1ワン GO!』


 そう開始の合図が関わった瞬間


『キュレェ〜!』


 なんか車が爆発した。


「お前ー、カウントダウン始まった時からアクセル踏んでたな?」


 早是からそう言われる。


「う、うん」

「それやるとスリップしちまうんだよ」

「それ最初に言ってよー!」

「はははは!」


 遅れて俺も出発する。


 アイテムボックスを取ると左上のルーレットがリロリロと音が鳴って一つのアイテムに決まる。


「な、何だこれ? お、おら!」


 ハンドルの真ん中のボタンを押してアイテムを使う。


 すると車が大砲になる。


「えぇ!? 何これ何これ!?」

「うわお前大砲引いたのか」

「た……大砲?」

「順位が低いと手に入ってめっちゃ加速してその間無敵になれるアイテム」

「すっご!」


 ん? 順位が低いと出る?


 右下の順位を見ると9thとなっていた。


 それでさっき三人くらい抜かしたから……


 さっきまで最下位だった!?


 マジ大砲様々っす!


 アイテムボックスを再度取ってアイテムを使用する。


『ビリリリ!』

「うわっ!?」

「へへへー」


 サンダーを使用して前にいた人を踏んでぺちゃんこにする。


「おい岩井! せっかく赤甲羅持ってたのにサンダーで消えたぞ!」

「あははは!」


 めっちゃ爆笑しながらそのまま車を走らせる。


 そして目の前に早是がいるという状態になった。


「くらえ早是!」

「何!?」


 そこで持っていた甲羅を投げる。


「あ、あれ?」


 その甲羅は早是には当たらず変な方向に向かって行く。


 そして数回跳ね返って割れた。


「何で!? 勝手に当たるはずじゃ」

「勝手に当たるのは赤甲羅だ、緑甲羅は自力で当てないと」

「うわー、クソゲーだー」


 そして結果は早是が一位で俺が3位だった。


 あの後一回落っこっちゃったのだ。


 ま、初めてやって3位なのは上場だと思うけど。


「いやー、中々接戦だったねー」

「アイテムとかちゃんと教えてくれよー」

「ごめんごめん」


 そう言いつつ次のゲームに移る。


 エアホッケーだ。


「おっ、これなら分かるよ」

「んじゃ、始めようか」


 お金を入れるとカランと音がして円盤パックが出てくる。


 それをカンと打つ。


 そして早是も跳ね返す。


 お互い一点も入らずに2分が経過した。


「や、やるなぁ……」

「そっちこそ……」


 今円盤はこっちにある。


 壁で弾くようにすれば入るんじゃないか?


「おらっ!」


 力をこめて打ったが……


「へへっ」


 早是はそれに反応してガードした。


 そして円盤がこっちに飛んでくる。


 そしてそれを俺は……


「うおっ!?」


 普通にストレートで打ち返した。


 そしてその放たれた円盤はガードをしようとした早是のスマッシャーの後ろ側に当たってゴールに入る。


「よっしゃー!」

「ま、マジ!?」


 そしてその後も試合をしたが、点数は変わらなかった。


「エアホッケーで負けるとは……」

「ふはははははは」


 その後も色んなのをやった。


 UFOキャッチャーやダンシングゲーム、太鼓◯達人などだ。


 かなーり満喫したので、ゲーセンを早是と出る。


「楽しかったなー」

「うん」

「んじゃ、飯食いに行こうぜ」

「え?」


 てっきりこれで終わるかと思っていた。


「ん? だってまだ昼だろ? まだまだ遊べるぜー」


 と、友達とのお出かけって結構長いんだね……。


「んじゃ、サイ◯リアかジョ◯サンどっちかに行こうぜ」

「うん!」


 そう返事をして一緒にファミレスへと向かった。

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