通勤ラッシュ!!
朝起きたら……暑苦しい。
え? 何で? 何でこんな暑いんだ?
てかなんか重……はっ!? まさか!?
布団をめくる。
「んぅ〜」
「……愛花、またか」
俺に覆い被さるように愛花が寝ていた。
言っておくが、お兄ちゃん大好きとかいう意味で入った訳ではない……と思う。
理由は単純、普通に部屋を間違えたからだ。
俺の部屋と愛花の部屋は隣なのだが、扉がお互い近いので暗いとよく間違える。
そして愛花はマジで眠くなった時に自室に行って寝るのから……めちゃくちゃ間違えて入ってくる。
「起きろ愛花」
愛花の体を揺する。
「んん〜……後5分から10分〜」
「
少し力を強めて揺する。
「起きないと遅刻するぞ〜」
「はわっ!」
こういう時の愛花の対処法はこれだ。
愛花は遅刻するのがめちゃくちゃ嫌な性格をしている。
だからこの言葉を言えば飛び起きるのだ。
「あ、お兄ちゃん……わ、私、またやっちゃいました?」
「やっちゃいました」
「ご、ごめんなさい! また後で!」
愛花はそう叫んで部屋を飛び出して行った。
……さてと、俺も着替えてリビングに向かいますか。
制服に着替え、リビングにあるソファに座ってテレビを見る。
後ろでは愛花が料理を作ってくれている音がしている。
『おはようございます。6月29日の、朝のニュースをお伝えします』
アナウンサーがそう話してニュースが進む。
「お兄ちゃ〜ん、朝ごはん出来ましたよぉ〜」
「おっ、ありがとう」
愛花の朝食を食べながらテレビを見る。
『では早速道ゆく人にインタビューしてみましょう!』
そして色んな人がインタビューに答える。
『乗るしかない このビッグウェーブに』
『働いたら負けかな〜と思ってる』
『何故か俺の集合時間だけ5時だったんですよ』
なんか既視感あるやつばっかだなぁ!
テレビを消そうとリモコンに手を伸ばした瞬間、その手が止まる。
『私は、やっぱり――』
花園さんが、出ていた。
「お兄ちゃん、この人綺麗ですね」
「あ、ああ」
花園さんがテレビに出てるぞ!?
……やばい、学校で花園さん大注目だろうなぁ……
というか花園さんがテレビに出たら気絶者数凄い事になってそうだけど。
『イ、インタビュー、ありがとう……ごさい……ました』
『はい、では私はこれにて』
インタビュアーの人女性なのに顔
いやまあそっち系かもしれないけどね。
花園さん……大丈夫かなぁ?
『続いてのニュースです。連続
プツンとテレビを消される。
「なんだよ愛花、急に消さないでくれよ」
「時計見て下さい! 遅刻しちゃいますよ!」
「うぉ!? ほんとだ!」
食器を急いでキッチンに運び、
「じゃあ行ってきます!」
そう言って急いで家を出る。
最寄り駅に着いて電車に乗って揺れを感じる事20分。
駅のホームがとんでもなくザワついている。
え? 何があったんだ?
事故? 事故でも起きたの?
いや、それにしては悲鳴とかないな。
ドアが開いて全員の目線が一つのドアに集まる。
……あぁ〜、そゆことね。
「あ、岩井君!」
花園さんが俺の隣に来る。
おーっとー視線超えて殺気が凄い事になってますねぇー。
花園さん、貴方何も感じないんですかい?
「ねえあの人って……」
「ああ、テレビに出てた……」
「めっちゃ綺麗じゃない?」
「ど、どっかのモデル?」
小声のつもりだろうけど結構耳に入ってくる。
花園さんは……気付いてるのか分かんないや。
「ねえねえ岩井君聞いてよー」
「何です?」
「私朝ニュース見てたんだけどねぇー」
あっ、察し
「私のインタビューが流れてたんだよね!」
「あぁーあれやっぱり花園さんでしたか」
「えっ! 見てたの!?」
「そりゃあ……ねぇ?」
「な、なんか恥ずかしいなぁー」
恥ずかしい!? いつも誰かに見られている花園さんが!?
いや、テレビに出たのを知られていたら何か恥ずかしくなるのかもしれない。
俺が味わうことは無いだろうけど。
「でも、今のところ君と母親以外は知らないだろうから、この事内緒ね?」
いやめちゃくちゃ他の人にもバレてますよ?
「分かりました、内緒にしときます」
「あっ、そういえば昨日――」
その後は昨日の放課後の話をしまくった。
夜に沢山話したはずなのに、まだ話せるとは……。
【探知】パイセンも使ってない。
やっほぉー! 俺トーク力上がってるんじゃね!?
すぐに次の駅に着いたのだが……一つ問題が起こった。
「あの人もしかして……」
「もしや……」
この車両だけ密度がエグい事になった。
普通1車両って大体50人くらいだと思うんだけど……。
今絶対150人は超えてる。
そしてその全員が花園さんを見てる。
人と人の
たまたま花園さんの隣になれた人はもう
次の駅でも次の駅でもこの車両に人が乗ってくる。
こ、混みすぎだろ……。
「今日凄いこんでるね」
「そ、そうですね……」
花園さん、皆貴方目当てですよ……。
「あ、次私達が降りる駅だ」
花園さんがそう言った瞬間、車両内にいた全員の意思が固まる。
何かを決意してんなぁー。
『◯×駅ー、◯×駅でございます』
そうアナウンスが流れて扉が開く。
すると乗客達はまるで訓練していたかのような見事な列を作り、電車の出入り口の
完全に花園さん専用
歩いていく花園さんの後ろを付いて行く。
うん、想像してた通りだわ。
『『『ジッロジロジロジロジロ』』』
視線が! 視線がぁぁ!
「なんでお前が」みたいな視線がぁぁ!!
「大丈夫?」
花園さんがそう声をかける。
「だ、大丈夫です」
顔をあげたその時、俺は初めて見た。
花園さんの怒った顔を。
怒っている相手は俺ではなく、道を作っている名も知らぬ人達だ。
「早く行きましょ」
そう言ってスタスタと歩いて行く。
「はい!」
嬉しかった。
花園さんが俺の為に怒ってくれた事が。
マジで嬉しかった。
学校に着くと同時に花園さんに対する視線がいつにも増して多い事に気付いた。
やっぱ朝のニュースの影響って凄いな。
花園さんが校舎に向かっているだけで校舎内にいるほぼ全員が花園さんを見ていた。
2階からも3階からも4階からも窓を開けて顔を出して。
校舎内に入ると同時に窓から覗いていた生徒達が一斉に下駄箱に向かって走り出す。
「やっぱ……花園さんの人気って凄いなぁ……」
少し呆れつつ俺は校舎に向かって歩いた。
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