脱出方法



ニャミスとクーを埋もれた荷物から引っぺがして起こした後、改めてどうするか考える。


俺は再び真っ暗な先の見えない天井を見つめ溜息をこぼす。



「しっかし、どうするかなー、幻覚魔法を使ってるって読みまでは合ってたんだが


 まさかさらにドツボにハマるとは…。」



「まあ仕方ないですよ、元気出して行きましょう!」



「…おー。」



なんだかんだこの2人は良いコンビなのかも知れない、


2人を見てると落ち着く…いや、落ち込むのがバカらしくなってくる。


重症なのは大剣使いのカエデ様の方か…


体育座りで身体を小さくして丸まっている。



「…もう、終わりだ。これ以上人なんて来るわけない、このまま、ずっとこのまま…


 干からびてミイラになるまでずっとこのまま…」



「おい、大丈夫かあんた…意外と打たれ弱いな。」



「バカなの!?貴方たちが上から降ってきた時、心の底から救われたのよ!


 助かるかも知れないって…魔法使いもいた、間違いないって。


 そこからまた振り出しに戻る絶望を味わったことがあるの!?」



「…クーのせい…?」



またもやクーがしょんぼりしている。



「違うよー、クーは何にも悪くないからねー、あそこにいるお姉さんが


 勝手に勘違いしただけだがら、クーは何にも悪くないからねー。」



ファサファサと頭を撫でてやる。



「…うん、誠優しい。」



クーが俺にむぎゅっとしてくる。



「あー!ずるい私も撫でてくださいよー!」



こんな短期間であるがこの二人の扱いが何となく分かってきてしまった。


これが俗にいうチョロインか…いやこいつらヒロインというよりペットに近い。



「よく、こんな状況でそんなことしてられますね、このまま助けが来なければ


 私たち死ぬんですよ。」



せっかくの癒しの時間にそっぽを向いて水を差す大剣使い。



「分かってるよ、だから落ち着いて考えなきゃいけないんだろ。

 

 …あんた落ちてきてどのくらい経つんだ?」



「………。」



そっぽを向いたまま返答がない、シカトかコノ野郎…

しかし、イラついても良いことは無い、ここは冷静に…



「…ニャミス、お前から聞いてくれないか。」



「はい!カエデさん、ここに落ちてきてどのくらい経つんですか?」



「そんなの分かんないわよ。ずっと真っ暗なんだからどのくらい経ったかなんて


 分かる訳無いでしょ!」



はい、シカトけってーい!後でぶっ殺す。



「時計は持ってこなかったのか?ダンジョンに入るならそのくらい普通持ってくだろ?」



「………。」



ガルルルルルウッルウルルルルルr………っふう、落ち着け俺。



「ニャミス…」



「はい!時計は持ってこなかったんですか?」



「持ってきてたら確認してるに決まってるでしょ!」



どうやら同言語なのに通訳がいないと会話ができないらしい。


困ったヤツだ…まあいい…とりあえず話を進めよう。



「落ちて来てから、上に登ろうとして試したことは何か無いか?…ニャミス。」



顎をクイっとやって聞けとジェスチャーする。



「どうですかー?何か試したことありますー?」



「…大剣を壁に突き刺しながら、オピリム(素早さを上げる呪文)を使って


 上に登れないか試したけど、50メートルが限界ね…この岩壁やけに脆くて


 差しても直ぐに崩れちゃうのよ。基本的にあと私が使える魔法は簡単な治癒魔法


 だけだから、それ以外の方法はお手上げ状態。


 …それで、ラールしか使えない可愛い魔法使いさんの他に何か使えそうな


 魔法や手段は無いかしら?」



 ちょっと小馬鹿にしたように聞いてくる大剣使い。



「俺が使える魔法は初歩の防御魔法だけだ…そういえばニャミスは何か使える魔法は


 無いのか?」



「もう誠さん何言ってるんですかー、獣人族に魔法が使える訳ないでしょ?


 私たちは先取速攻の前衛タイプ、後方支援なんてできません。」



うむぅ…



「そうだ…お前の爪でこの岩壁を登っていくことはできないか?」



「登りきる前に爪が折れちゃいますねー♪」



…早くも万策尽きたな。



「………とりあえず、ちょっと休むか。」



「…早くしないとちょっとじゃなくて永い眠りに付くことになるわよ…」



そんな言葉はお構いなしに勝手に盛り上がるニャミスとクー。



「わーい、休憩だー!クー持ってきたお菓子食べよ―!」



「…やっと?凄く楽しみだった、一杯食べる。」



一応釘を差しておかなければ、命に関わるからな。



「おい、大切な食糧一気に食べるなよ。」



「「えー。」」



「我慢しなさい。」



「「はーい…私たちが持ってきてのにねー。」ねー、」



「なんか言ったか?」



「「なんでもありませーん。」」



…しかし、本当にどうするか…自力での脱出は困難と考えれば、助けを待つほか無い。


幸い食料はあの2人の過剰な持ち込みで2週間分はありそうだ。


まあクエストを受注した俺たちがギルドに返ってこないとなれば


数日で捜索隊は派遣されるだろうが…


本当に死にそうになるまで誰も来なければ


最悪、クーのプルパンテに神頼みするしかないが………


…神?頼み?、カミダノミ…かみだのみ?……あの…あの野郎………あの野郎!!



「あのポンコツ女神何してやがる―――!!」



「キャッ!びっくりした急に発狂?これだから地球人の男は…。」



一方その頃、女神アテネ



「いやー、やっぱパチンコはリ○ロですわー、おっしゃまた3000発!


 あ!お兄さーん、箱交換お願いしまーす!」


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