初クエスト!



おれはクエストを探しにギルドに来ていた。

数日後ニャミスのアタッカーとしての階級は俺と同じシルバースティグマ、

仲間の魔法使いはブロンズスティグマらしい。

スティグマの階級によって受けられるクエストは変わってくるのだが、

今回はブロンズクエストまでのものしか受けられない。

パーティの中で在籍する一番低い階級のものまでしか受けられない決まりだ。


「ブロンズか…まあ、ブロンズもシルバーも大差ないしな…。 

 しかし最近は不景気なのか、なかなか条件の良いものは無い…。」


―世の中ってのは世知辛いもんですな~


アテネがうんうんと唸っている、この女神、キャラが定まっていない。

すると、ギルドの事務員さんが新しく依頼を受けたクエストを貼っていく。

その中である一枚のクエストに俺の目は飛び込んだ。


「これだ!」


その日の内にニャミスに連絡を取り、同意を得る。


「どんなクエストですか?」


「ダンジョンの調査クエストだ、最近新しいダンジョンが発見されたらしくてな。


 ダンジョン内のマップ制作が今回のクエストだ。」


「新ダンジョンの調査?ブロンズスティグマでそんな内容のものが?」


「いや、ブロンズどころか、ホワイト(スティグマなし)でもOKなんだ。おれも不

 思議に思って聞いてみたんだが、どうやらダンジョンの中にはモンスターがいない

 らしい。」


「モンスターがいないダンジョン?」


「ああ、プラチナスティグマの先遣隊が先に調査に入ったらしいんだが、

 スライムはおろかゴブリンすら見つからなかったらしく、敵反応も全くなかったら 

 しい。

 ただ、ダンジョンが発見されたからにはマップ制作をしなければならない

 上の決まりがあるらしくてな。」


ニャミスはふむふむと頷いている。


「へえ、報酬は?」


「何と破格の100万ジュリーだ!」


「マジですか!」


「ああ、ただ条件が一つだけ合ってな。


 マップ制作はおれができるからいいんだが、

 ダンジョンの中がかなり入り組んでいるらしくて道に迷ってしまう可能性があるら

 しい。

 だから魔法使いがいるパーティでラール(空間転移魔法)

 が必須条件になるらしいんだが、攻撃魔法も回復魔法も使える魔法使いなら

 当然初級魔法のラールくらい使えるよな?」


 突然、表情が曇るニャミス。


「ああ……そうですね。まあ……はい。でも―


その時の俺は条件の良さに目が眩んでいた。


「そうだよな!実はもう契約してきてしまったんだ。確認している間に誰かに取られ

 たら元も子もないからな!」


ニャミスから気まずそうに返答が返ってくる。


「……そうだ、私その日用事があったんだ。ちょっと行けないかもしれません。

 そのクエストキャンセルしてもらえませんか?」


「それは困る。」


「なぜ?」


「クエストの実行日は明後日だ。直近で依頼が出されたクエストとはいえ、

 契約した後、キャンセルするなら同じようにキャンセル料は掛かる。

 今すぐキャンセルしても報酬の1/4のキャンセル料、つまり25万ジュリーを支払わ

 なければならない。」


「なら2人で行ってくれば…」


「おいおい…知らない訳じゃないと思うが、クエストを受注してダンジョンに潜る時

 は必ず3人以上のパーティで潜らなければいけない規則があるだろう。忘れたの

 か?」


「そうでしたね…そうでした。」


「うん、じゃあ2日後だ。よろしく頼むぞ!」


「……いろいろ準備しなきゃ。」


「ん?」


「いや、なんでも。」



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