異世界の



なんだここ…

確か俺はギルドにいたはず…

おれは直ぐに合点がいく、これは夢だ。

するとどこからともなく、強いて言うなら上の方から…美しい女性の声が聞こえた。


「夢ではありません…ここは異世界空間の聖地、アルカディア

 そして私は異世界恋愛を司る女神、アテネです。」


後ろを振り向くと、この世のものとは思えない絶世の美…女?がいた。

赤目に白髪、白いドレスの様なローブを身にまとい


背中にはペガサスのような翼が生えている。

聖地アルカディア?異世界恋愛の女神?

直ぐに分かった。これは夢だ、こんなピンポイントで都合の良い神がおれの前に

現れる訳がない。


「夢では無いのですが…今は置いておきましょう。さして重要な問題ではありませ 

 ん。それよりもあなたにお願いしたいことがあるのです。」


何故声に出していないことが分かるのか疑問に思ったが、まあ夢ならなんでもありか…


「おれに頼み?」


「はい、実を申しますと私今かなりピンチでして…

 このままだと神の座を下されてしまうかも知れないのです。」


別にアンタが神様じゃなくなってもおれには何の関係も無いしなー…と

あまり興味が無かったのでその辺にあぐらをかいて鼻糞をほじりながら生返事を返す。


「へー、なんで?」


「…理由は簡単です。異世界恋愛の神である私にその願いを捧げるのが、

 もうあなたしかいないからです。」


おれは手のひらを直ぐに返す。


「なんだと!おれしかいない!?じゃあおれの夢である

 おとぼけ主人公、異世界ハーレムでウッハウハ生活なんて実現できないじゃない

 か!」


異世界恋愛の女神、アテネは「はあっ」とため息をつく。


「そもそもその願いは実現不可能だと思いますが…それも今は置いておきましょう。

 信仰を失った神は、神としての地位を剥奪されます。

 それは神世界においての絶対的なルール。

 …そう、だからあなたの力が必要なのです。」


おれはふむふむ…と考え結論を足早に出す。


「なるほど、つまり異世界恋愛の女神様であるアテネさんは

 最後の信仰者である俺を使って、異世界恋愛をする人間を増やして神の座を維持

 したい…そういうことか?」


「…はい、察しが良いですね。あ、いえ、あくまでお願いですが…平たく言うと。」


しかし、異世界恋愛するヤツを増やすか…勿論それはおれにとっても、

望むところではあるが…問題はどうやって増やすかだ。


「ですから…佐藤誠さん、あなたにある力を差し上げたいと思います。」


「力!?」


これは何と!よく考えたらこの流れは昔の異世界アニメで見た能力付与シーンそのままじゃないか!さすがはおれの夢!…しかし夢とは言え、ずっと憧れてきた名シーンの再現だ。

途端に緊張してきた…おれは急に芝居がかった演技を始める。


「なるほどぅ…能力か…してその能力とは一体!?」


「それは…」


ゴクリッ


「それは…異世界ラブです♡ズキューン♡♡」


アテネとかいう異世界恋愛の女神は古臭いポーズと表情を浮かべキャッツアイのように、おれに手で作ったピストルを打つ。


「………。」


「すみません。これが力を付与する時の決まりなんです。」


…だから異世界恋愛は流行らないのか。


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