【一話完結】冬の貴方へ

黒川

彼女、三谷小春は。

『お久しぶりです。三谷さん、私の事覚えていますでしょうか』

僕は彼女への手紙を書いている。

いつもなら進まないペンも今日、貴方の命日ならきっと進むだろう

『私、高校2年生の時同じクラスだった、東雲です』

彼女、三谷春子は名前とは真逆の冬みたいな人だった。

いつもガヤガヤしてる教室の隅っで読書をしているような彼女の

周りはやけに涼しかった記憶。

そんな彼女を毛嫌いする人も居たが、そんな目も気にしない彼女を

僕は好きだった。

しかし、この気持ちは恋情ではない。言うなれば、尊敬…憧れていた。

だが、僕は貴方にとっては他人。時々、言葉を交わす、同級生。

『高校の時の同級生からの突然の手紙、驚きますよね。

でも、私はこの機会に貴方と友達になりたいのです』

ペンで殴り書いた。

そう、私はただ貴方と友達になりたかったでけなのに…

この手紙を書いたって貴方からの返事はない。

そんなこと随分前から理解している。

「三谷さん、貴方が亡くなって三年が経ちました。

時は無情にも過ぎていくものですね。

貴女がいなくなって、私の心はずっと雪が降り積もってます。」

友達になれなくてもいい、ただもう少し話がしたかった。

「僕が一歩前に進めば、貴方と話せたんですがねぇ…」

僕は震えた声で後悔を零した。

近所の野良猫が小さい声で鳴くと、取り巻きのように肌寒い風が吹いた。

机の上の手紙が中を舞い、今の僕を表現するように床に落ちた。

頬に生温い一筋の雫が伝った。

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【一話完結】冬の貴方へ 黒川 @kurokwa

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