パーティリーダー、パーティ追放

清永 和日郎

第1話 流行ってるから俺もパーティから追放されるのか!?

「アルマ ローゼン。お前をパーティリーダーから解任し、同時にパーティ追放とする」


 ざわついたギルドの酒場スペース。


 俺の向かいの席に座る男の声は、信じられないぐらいはっきりときこえた。

 男の名は、ロイド アーク。俺がパーティリーダーをつとめている『マーテル』の古参メンバーの『聖騎士』だ。


「何か言うことはあるか?」


 真剣な声で、ロイドが言う。

 静かに話を聞いていた俺は、腕を組み、深く考え込んだ後、言葉を発した。


「解任と追放か。わからないな……」


「まさか、理由に心当たりが無いのか?」


「いや、言葉の意味がわからない」


 ゴンッ。

 ずっこけたロイドが、テーブルの天板に額をうちつけた。


「大丈夫?」


 突然、何の前触れもなく倒れたロイドを心配する。


「よくそんなんで、パーティリーダーやってこれたな!?」


 と、顔を上げたロイドが叫ぶ。


「俺にかかれば造作もないことさ」


「褒めてねぇよ!」


 話を仕切り直すと言わんばかりに、ロイドがため息をついた。


「解任は辞めさせるってことだ。追放は追い出すってこと。つまり、アルマは、『マーテル』のパーティリーダー辞めさせられて、さらにパーティメンバーでもなくなるってことだよ」


「ふんふん……」


 ようやく話の趣旨が理解できた。

 つまり俺は、パーティリーダーをやめさせられて、ついでにパーティも抜けなければならないということか。


「なんでそんなことになるんだ!?」


 慌てた俺は立ち上がり、ロイドの両肩をすがる思いでつかんだ。


「『マーテル』は俺たちで立ち上げたパーティじゃないか! なんで俺が自分で作ったパーティクビになるんだよ!?」


「俺も信じられないさ……おい、揺らすな! あんまり、揺らすな!」


 俺がロイドの肩を前後に揺らしていると、ウザそうに手を振り払われた。


「そういえば、ルツが加入したときに、前のパーティを追放されたとか言ってたな。……流行ってるのか? 流行ってるから俺もパーティから追放されるのか!?」


 ルツは、少し前に『マーテル』に加入した新人の冒険者だ。

 ルツの話を聞いた時は、追放の意味がわからず、ふんふんとうなずいて話を合わせてしまった。


「たしかに追放はよくある話だけど、アルマが追放になる理由は、流行ってるからとかじゃない」


 そう説明したロイドが上着の内ポケットから、一枚の皮紙をとりだした。


「アルマ、お前がパーティ追放になる理由だ」


 テーブルの上で、皮紙が広げられる。

 その中央を指さしながら、ロイドが俺の目を真っ直ぐ見つめ、言った。




「――なんで、脱税なんて働いた?」




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