綺麗な眼鏡


 あらすじ:

 高校三年生の翔太は、学校ではヤンキーとして恐れられているが、実は介護士になるのを夢見ている。


 ある日、文学部に所属する眼鏡の女子高生・美咲に一目惚れする。


 美咲は国立大学を推薦で入るほどの秀才だが、翔太は彼女の眼鏡を外した素顔に惹かれる。


 しかし、美咲は翔太のことをヤンキーだと思って避けている。


 翔太は美咲に近づくために、文学部に入部することを決意する。


 しかし、文学部の部長・慎吾は美咲の幼なじみであり、翔太のことを快く思わない。


 翔太は美咲の心を射止めることができるのか?そして、介護士になる夢は叶うのか?

 本文:

「お前、文学部に入りたいって言ったよな?」


「え?ああ、そうだけど……」


「じゃあ、今日から入部しろ」


「今日から?」


「そうだよ。今日からお前は文学部の一員だ」 


「でも……」


「でもじゃねえよ。お前が美咲ちゃんに惚れたんだろ?」


「……」


「黙ってんじゃねえよ。答えろよ」


「……うん」 


「そうだろ?じゃあ、文学部に入って美咲ちゃんと仲良くなれよ」


「そう簡単にできるわけねえだろ!」


「できるさ。お前はヤンキーだろ?ヤンキーなら何でもできるんだぜ」


「そんなことねえよ……」 


「そんなことあるよ。お前はヤンキーだけど、介護士になりたいって言ってたろ?」


「……うん」


「それってすごいことだぜ。お前は人のために生きたいんだろ?人の笑顔が見たいんだろ?」 


「……うん」


「じゃあ、美咲ちゃんも人の一人だろ?美咲ちゃんの笑顔も見たいんだろ?」


「……うん」


「そうだろ?じゃあ、文学部に入って美咲ちゃんと話せよ。美咲ちゃんもお前のことを知れば、きっと好きになってくれるさ」


「本当かよ……」


「本当だよ。信じろよ。俺が言ってるんだから」


「……わかったよ。ありがとうな」


「いいぜ。それでこそ俺の親友だ」


 翔太は文学部に入部したが、そこで待っていたのは厳しい現実だった。


 文学部の活動は、詩や小説、随筆などの執筆を主な内容としており、毎週作品を提出し、部員同士で批評しあうというものだった。


 翔太は文学に興味がなく、読書もほとんどしなかったので、作品を書くのに苦労した。


 部員からは「つまらない」「感情が伝わらない」「表現が乏しい」と酷評され、翔太は落ち込んだ。


 美咲も翔太の作品に対しては厳しい態度をとった。


 彼女は文学が大好きで、国立大学を推薦で入るほどの秀才だった。


 彼女は翔太の作品を読んで、「こんなものを文学と呼ぶなんて恥ずかしくないの?」「文学部に入ったのは本気で文学に取り組みたいからなの?それとも私に近づきたいからなの?」「私はあなたみたいなヤンキーとは話したくない」と言って、翔太を拒絶した。


 翔太は美咲に傷つけられたが、彼女に惹かれる気持ちは変わらなかった。


 彼は美咲の眼鏡を外した素顔に心奪われていた。


 美咲は普段は分厚い眼鏡をかけていたが、外すとかわいらしい顔立ちをしていた。


 翔太は美咲の眼鏡を「キレイな眼鏡」と呼んで、彼女にプレゼントしたかった。


 そんなある日、翔太は美咲が図書館で本を読んでいるところに出くわした。


 美咲は眼鏡を外して本に没頭しており、周りに気づいていなかった。翔太は美咲の姿に見とれてしまった。彼は思わず声をかけようとしたが、そのとき、文学部の部長・慎吾が現れた。


 慎吾は美咲の幼なじみであり、彼女に想いを寄せていた。


 慎吾は美咲に気づくと、「美咲ちゃん、今日も本を読んでるんだね。君は本当に文学が好きだね」と声をかけた。


 美咲は慎吾の声に驚いて眼鏡を探したが、見つからなかった。


 慎吾は美咲の眼鏡を見つけて、「これ、君の眼鏡だよね慎吾は美咲の眼鏡を手に取って、「これ、君の眼鏡だよね。君は眼鏡なしでも本が読めるのかな」と言った。美咲は慌てて眼鏡を取り返そうとしたが、慎吾はそれを避けた。


「ちょっと待ってよ。君の素顔を見せてよ」と言って、美咲の顔をじっと見つめた。


 美咲は恥ずかしさで顔を赤く染めた。



 翔太はその光景を見て、憤りを感じた。彼は慎吾に近づいて、「おい、美咲の眼鏡を返せよ」と言った。


 慎吾は翔太に気づいて、「ああ、君が文学部に入ったヤンキーだね。どうしたの?美咲ちゃんに何か用かな」と言って、嘲笑した。


 翔太は慎吾の態度に腹が立って、「お前が何か言うことじゃないだろ。美咲の眼鏡を返せって言ってんだよ」と言って、慎吾の襟首を掴んだ。


 美咲は翔太と慎吾の間に割って入って、「やめて!二人ともやめて!」と叫んだ。


 彼女は翔太の手を振り払って、慎吾から眼鏡を奪い取った。


「私の眼鏡に何してるの!私はあなたたちみたいな人たちと関わりたくない!」と言って、眼鏡をかけて図書館から走り出した。



 翔太と慎吾は美咲の後を追おうとしたが、図書館の司書に止められた。


「静かにしなさい!ここは図書館ですよ!」と怒られた。


 二人は仕方なくその場に留まった。


 翔太は慎吾に向かって、「お前、美咲に何かしたんだろ。俺はお前が許せない」と言った。


 慎吾は翔太に向かって、「君こそ、美咲に何をしようとしてるんだ。君は文学部に入っただけで、文学も美咲もわかってない」と言った。


 二人は睨み合ったまま、沈黙した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る