第十二章 田中、喧嘩するってよ
第1話 須田、釣られる
「これで最後、っと」
襲いかかってくるモンスターを斬り伏せ、俺は一息つく。
池袋にいるモンスターを倒した後、俺は更に三箇所ほど回ってモンスターを倒していった。
現れた全ての場所に俺が着く前から警察や魔対省、協力を要請されたギルドの人間や橘流剣術の門下生の人たちがいた。
おかげで市民と街に対するダメージは最小限で済んだ。俺もモンスターを倒すことに専念できて非常に助かった。しかし、
「……キリがないな」
いくらモンスターを倒しても、須田にはたどり着かなかった。
俺が表に出てくれば、須田も我慢できず出てくるかと思ったけど駄目だったか。
昔のあいつなら考えなしに出てくるはずなんだけど、一回捕まったことで警戒心が上がったのかもしれない。成長したな、クソが。
「今はまだ上手くいってるし、あの程度のモンスターなら負ける気はしないけど……いつかは大事故が起きるかもしれない。早く須田をとっ捕まえないとな」
どうやってモンスターを出しているのかは知らないけど、二箇所同時にモンスターが出たらさすがに対処できない。そうなったら市民に犠牲者が出てしまうかもしれない。
そうなる前に須田を見つけ出さなければいけない。
そう考えた俺は、少し離れたところから撮影していたドローンに近づき、カメラ目線で話す。
「どうした須田、モンスターに任せっぱなしで終わりか? これがお前の言う復讐なら、お前の怒りとやらもたいしたことないんだな」
"草"
"めっちゃ煽るやんww"
"ねえ須田君、今どんな気持ち?ww"
"須田ァ! みっともねえぞォ!"
"復讐してやる!キリッ だっておww"
"シャチケンいいぞもっと言え!"
"いやあ凄い復讐でしたね(暗黒微笑)"
"部下任せなのは変わっておまへんなあ"
"こ、こいつ……殺してやる……!"
"なんか怒ってる奴いて草"
"こいつ須田じゃね?ww"
"んなわけないだろwだったら情けなさ過ぎるww"
"須田くん、怒りのアンチコメ"
"キーボードカタカタで草"
いい具合にコメント欄が荒れてきたな。
普段はあまりこういう風にはしたくないけど、須田の神経を逆なでするためだ。仕方ない。
あいつは人を馬鹿にするくせに、煽り耐性は0だ。
きっと今頃歯ぎしりして悔しがっていることだろう。
"須田くんまだ復讐する気なのかねえw"
"いい加減諦めたらいいのに"
"おい須田ァ! 見てるゥ!?"
"ん? なんか変な動画上がってるぞ"
"まじ?"
"盛り上がってきたな"
"え、どれ? 見たい"
"これ《https://www.dtube.com/watch?v=XXXXXXX》"
"ないす"
"うお、まじやん"
"須田くん顔真っ赤で草"
「……来たか」
どうやら須田がアクションを起こしたみたいだ。分かりやすい奴で助かる。
俺はコメント欄に貼られたURLをタップし、Dチューブにアクセスする。するとそこには『田中、俺は逃げも隠れもしねえ』というタイトルの動画があった。
再生すると怒りで青筋が浮かんでいる須田の姿が映る。前より少しやつれている感じがするな。別れてからは逮捕されているか逃亡しているかだったからな。そりゃやつれるか。
映像の中の須田は、カメラを強く睨みつけながら口を開く。
『おい田中、お前、く、クソ野郎のくせに言うじゃねえか。土下座すりゃあ許してやろうと思ってたのに、やめだ。お前だけはぶっ殺してやる』
「よく言うよ。そんな気はないくせにな」
土下座なんてしたら更につけあがるに決まっている。
社長の時もよく「〇〇したら許してやったのによお」と嘘の仮定をペラペラ話していた。
『「見晴らし公園」に来い田中。覚えてるだろ? ガキの時よく遊んだ公園だ。そこに一人で来い、お望み通り決着をつけてやる』
「ああ……分かったよ」
須田のメッセージを聞いた俺は、動画を止める。
見晴らし公園か、懐かしい。まだ小学生の時、須田と足立とよく遊んだ公園だ。
"面白くなってきました"
"須田くんも覚悟決めたか"
"見直したぞ須田ァ!"
"でも罠とかあるんじゃね?"
"確かに"
"小物レベル100だからなw"
"てか見晴らし公園ってどこ?"
"そんな名前の公園いくらでもありそう"
"須田くんがボコボコにされるとこ早く見たい!"
盛り上がるコメント欄。俺がけしかけたところもあるので申し訳ないが、ここから先を映すことはできない。
「……申し訳ありませんが、配信はここで止めます。会う場所を推測するのもやめていただきたいです。どうなったかは後日お知らせいたします。それでは今日は来ていただきありがとうございました」
"え"
"ちょ"
"うそ!?"
"見せてくれないの?"
"ちょま"
俺は謝りながら、配信停止ボタンを押す。
もし見晴らし公園の場所を知られたら、視聴者が見に来てしまうかもしれない。そうなったら人質に取られたり、巻き込まれる可能性がある。
今の須田は一般人だろうと容赦はしないだろうからな、絶対に来ない方がいい。俺はそう判断した。
「よし、行くか」
再びステルス機『月影』を呼んだ俺は、須田に指定された公園へと向かうのだった。
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