第3話 田中、調べられる
「筋繊維の密度が非常に高い……細胞の魔力保有量と骨密度も異常値を示している。鬼人族や龍人族でもこの値にはならないというのに普通の人間が……面白い! ふふふ、いったいどのような環境で過ごせばこのようなことになるのか。非常に興味深い」
ネロ博士は虫眼鏡みたいな道具で俺の体を観察したり体を触ったりしながら、ぶつぶつ呟く。
すっかり研究モードに入ってしまっている。こうなってしまったら中々止まってくれないだろう。
"やっぱりシャチケンって異世界基準でもおかしいんだ"
"ブラック企業で働けばこうなりますよ"
"耐えられればね……"
"異世界でもこれだけ働かされている人はいないか"
"わいも田中の体を調べたい、じっくりと"
"おまわりさんこっちです"
"鬼人や龍人をしれっと超えてて草なんだ"
「ダンジョンが生まれわずか10年やそこらでこれほど特異な存在が生まれるとは。ああ……なんと素晴らしい……!」
「あ、あの。もういいですか?」
このまま観察を続けられると、服を全部剥がされそうだ。
凛が嫉妬と興奮が混ざったような視線をこっちに送ってるし、このまま続けさせるのはマズい気がする。
Dチューブは性的コンテンツには厳しいと聞く。こんなのでアカウントBANなんかされたらたまったもんじゃない。
「ああ、すまない。思わず興奮してしまった」
「いえ大丈夫ですが……そんなに俺の体は変なんですか?」
「変とはとんでもない! 君の体は実に
ネロ博士はねっとりとした視線をこちらに向けてくる。
うわ、ぞくっとした。いったいどんな実験をしようとしているのか考えたくもない。この人絶対マッドサイエンティストだろ。
"また狙われてる"
"モテモテですなあ"
"このラノベ主人公め!"
"全然羨ましくないけどね……笑"
"凛ちゃんやきもち焼いててかわいい"
"ていうかマジでシャチケンなんでこんなに強いんだよw 現地の人も引くレベルとかww"
"検査結果を公表してほしい"
「あの、そろそろ……」
「もう少し待ってくれ、今サンプルを採取……むぎゅ」
どう引きはがそうか悩んでいると、堂島さんが博士の首根っこをつかんで持ち上げてくれた。助かったけど重要人物に対する扱いではない。
「ほれ、とっとと行くぞ。魔素もだいぶ濃くなってきた、最下層はもうすぐじゃろう」
「ええ……そうですね」
下の方から感じる魔素量は、明らかに多い。
その量は代々木世界樹ダンジョンの時と同等かそれ以上だ。
俺たちは警戒しながら、更にダンジョンを下っていくのだった。
◇ ◇ ◇
その後も俺たちはモンスターに襲われながらも大きなトラブルなく進んでいった。
フライングシャーク以外にも竜巻を起こすサメ、サイクロンシャークや3つの頭を持つサメ、シャクベロスなど個性的なサメが襲ってきたが、全て倒して先に進んだ。
「そろそろ最下層に着く。用心したまえ……うぷっ」
ネロ博士はえづきながらそう言う。
結構しんどいだろうに弱音の一つも吐かずにここまで着いてきた。意外とガッツがある人だ。それとも知的好奇心がつらさを上回っているのか。どちらにしろこっちとしては助かった。
「……ここか」
狭い通路を抜けた俺は、速度を緩める。
そこはかなり開けた空間だった。巨大な地底湖のようになっていて、地面には水が満ちている。
水はかなり深そうで底が見えない。そして水の上には陸地が点在している。陸地は繋がっているわけではないが、ジャンプして渡れる程度の間隔にはなっている。
「なにもいませんね」
「ああ、だが注意した方がいいだろうな」
ダンジョンの最深部には、必ずボスがいる。
それには例外は存在しない。今目の前にいなくてもどこかにボスはいるはずだ。
あたりに注意をはらいながら、俺たちは陸地をジャンプしながら渡り進む。
そして地底湖の中心部にある大きめの陸地にやってくる。
「ふむ、なんも出てこんのう」
「強い魔素は感じますが、空間中に満ちていて分かりませんね」
俺と堂島さんは辺りを見渡す。
しかしボスどころかモンスターも見つからない。どうしたものか。
「どうやら地上にはおらんようじゃな。となると……」
堂島さんの目が足元に広がる地底湖に向く。
まあそうなるよな。水中に存在するダンジョンのボスなんだ。水中に生息するモンスターだよな。
「じゃあまずは俺が行きます。堂島さんと凛は博士の側に……」
そう言って再び水着姿になろうとした瞬間、突然バシャ! と音がして、水の中からなにかが飛び出してくる。
それは緑色をした数十本の細長い
これがここのボスなのか……? いったいなんなんだこいつは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます