第8話 田中、ゲストを紹介する

「……ということで今回はここ東京湾にできたダンジョンに潜っていきます。ドローンも深海に対応できるよう改造してもらいました」


 俺はカメラの前で今回の配信内容を説明する。

 今まで使っていたドローンも耐水仕様ではあった。でも今回の目的地は深海200m、もしかしたらもっと深いところまで潜る必要が出てくるかもしれない。とても前のままじゃ耐えることは難しいだろう。

 なので足立に頼んでドローンの耐水性を更に上げてもらった。ダンジョンの素材を使ったのでウン百万かかったらしいけど、まあ必要経費だ。


"今度は海か、忙しいなw"

"でも海中配信ってめったにないし楽しみ"

"水の中のダンジョンって珍しいからなあ"

"待てよ、ということはシャチケンの水着が見れるってコト……!?"

"ガタッ"

"話変わってきたな"

"おいおい水着回かよ。テンション上がってきた"

"●REC"

"視聴者がぶれなくて安心する"


 なんだか意味の分からないことで視聴者が盛り上がり始めてくる。

 俺の水着に需要なんてないだろう。ダンジョン配信の見過ぎで感覚がおかしくなってないか?


 この手のは触れると収集がつかなくなると配信で学んだのでとっとと進行するとしよう。


「海中作業は相方バディがいないと危ないので、今回はゲストがいます。凛、こっち来てくれ」

「はい。みなさんこんにちは、田中誠のの絢川凛です」


 凛はそう言って両手でピースをしながらドローンに向かって挨拶する。

 こいつ、無表情なのに一発目からかましてきたな……。


"草"

"凛ちゃんだ!"

"スライムダンジョン以来だな"

"自己紹介の肩書が魔対省所属じゃなくて妻なの草なんだ"

"いい顔してるぜ"

"キーッ! この泥棒猫!"

"分かりやすい嫉妬民おるな"

"まじかよ凛ちゃんの水着姿も見れるの!?"

"確かにそれはシャチケンの水着姿と同じくらい嬉しいな……"

"田中の水着どれだけ需要高いんだ……w"


 凛が出たことでコメントの勢いが増す。

 配信に出たのは久しぶりだからみんな嬉しいんだろう。凛が人気だと俺もなんか嬉しくなるな。


 さて、もう少し凛と話してもいいが、画面外でそわそわしている人がいるので、その人も呼ぶことにしよう。


「実は今回はもう一人ゲストがいます。どうぞ」

「わっはっは! 待たせたのう! 今回はワシ、堂島龍一郎も参加させてもらうぞ!」


"は?"

"えっ"

"ええええ!?"

"まじかよ!"

"大臣で草"

"なにしてるんですか大臣!"

"とうとう来たか"

"なんで大臣がいるんですかね……"

"つまり堂島さんの水着も見れるってこと?(錯乱)"

"それは混乱しすぎ"


 堂島さんが登場すると、混乱するコメントが一斉に流れる。

 まあそれも無理はない。堂島さんがこうやって公にダンジョンに潜るのなんて、それこそ皇居直下ダンジョンの時以来じゃないか? それ以降は天月を筆頭にした部下たちが現場での仕事をやっているからな。


「ワシがおるからには海底ダンジョンなぞバシッと潰してやるわい。まあ見ておるがいい!」


 堂島さんは上機嫌な様子で視聴者と会話を楽しむ。

 この人は昔から目立つの好きだからなあ、配信者適性は高そうだ。ひょっとしたら俺の配信を見て羨ましく思っていたのかもしれない。


「さて、挨拶も済んだことだしそろそろ行くとするか」


 堂島さんはそう言うと高そうなスーツを脱ぎ捨てる。

 すると堂島さんは白いふんどし一丁の姿になる。スーツの下にそんなもの履いていたのか……。


"ふんどし似合いすぎて草"

"てか筋肉すご"

"体バキバキ過ぎるww"

"こんなボディビルダーみたいな大臣この人だけだろうな……"

"●REC"

"撮影班ここにもいたのか"

"【朗報】イケオジ好きな私、よだれが止まらない"

"色んな性癖を受け止める配信やね"


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