転生したら前世でメイドとしてお仕えしていた時に死ぬほど虐げられていた口の悪い悪役令嬢が部下になっていて、もう1匹の部下である餓鬼と3人で地獄の罪人を裁きまくる楽しいほのぼのスローライフを送ります!!

ツーチ

第1話 お嬢様に謗られても

 

 「この汚い豚!! 何度言わせるの!! あたしはアールグレイに1割ローズヒップを混ぜ合わせた紅茶が好きなの!! いい加減学習しなさいよ!! 」

 「も、申し訳ございません!! お嬢様」

 大きなシャンデリア、荘厳な飾りつけの部屋で誰かをそしる声が響き渡る。


 名門貴族の一人娘、ソシアティア・バレースカインデルクである。ソシアティアは専属のメイドとしてこの屋敷で仕えているキョーコ・アンディアサンを睨む。



 「全く……お父様があんたをあたしのメイドとして雇ってやったからあんたはこうしてこの屋根のある大きな屋敷で暮らせているの! それなのにあんたは……しっかりと仕事が出来ないんならクビにするわよ? 」

 「は、はいっ……申し訳ございません。お嬢様」



 1838年、イギリス。

 キョーコ・アンディアサンは下級貴族の令嬢であった。しかし、当主である父の没落により一家は離散。頼る家を無くしたキョーコはメイドとして上級貴族のバレースカインデルク家でメイドとして仕えることになったのである。

 そうして仕えることとなったこの家の令嬢、ソシラティア・バレースカインデルクは貴族の子女の中でもとりわけ評判が悪い令嬢。キョーコはそんな令嬢の元で日々のそしりに耐えて仕えていた。

 しかし、そんな名門貴族であるバレースカインデルク家も他の貴族家の策略により未明の屋敷に火が放たれてしまう。



 『ゴーーーー!!! 』

 バレースカインデルク家からは濛々と赤い炎が立ち込めている。

 「おいっ、はやく火を消せ!! 」

 「……ダメだ……消せない」 

 「何でだ!! まだ十分に間に合……。まさか」

 バレースカインデルク家の外では消火活動へ来た消防団たちが話している。

 「ああ……上からのお達しだ。この火災は消火はしない……消火活動をしたという事実だけのために俺たちはここへ来たんだ」

 「……腐ってやがる。中にはまだ人がいるんだぞ……」

 が、これは極めてセンシティブな問題。その場にいた消防団たちはその何者かの謀略に加担し、バレースカインデルク家は見殺しにされた。



 「……お、お嬢様!! ……こほっ、お……お嬢様ぁ!! 」

 屋敷を激しくつつむ炎の音で外部の会話などまったく聞こえないキョーコはあれほどにそしられていたはずのソシラティアを探し、燃えて崩れゆく屋敷内を必死でかける。


 「な……何よ、これ!! 一体……何が起こってるのよ!? 」

 キョーコがソシラティアの身を案じ、彼女の部屋に行くとソシラティアは自身の寝室のベッドの上でうろたえていた。部屋の中はすでに周囲を囲む炎の熱で意識がもうろうとする。

 

 『ガッ!! 』

 その時、部屋に飾られている大きなシャンデリアがベッドにいるソシラティアへ落ちてくるのが見えた。

 「お嬢様……あぶないっ!! 」

 キョーコはとっさにソシラティアの元へ駆け寄り、そしてソシラティアの上に覆いかぶさる。




 『ギシャアアアアアアン!! 』

 キョーコは身を挺してソシラティアを守った。が、部屋はすでに火災による煙で充満していた。キョーコの命がけの行為も虚しく、その火災に巻き込まれてキョーコと令嬢のソシラティアは死んだ。



 

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