第8話消灯後

若い女の子はベッドに横になり、彼はソファーの背もたれを倒して毛布を被り、消灯した。

「先輩、おやすみなさい」

「うん、おやすみ」

しばらく、静かになった。


ブッ!ブリブリッ!


「うわっ、ウフフフ、くっせ~」

「クスクス、先輩、最悪~」

「自然現象だ!寝ろっ!」

「こっちまで、臭いがしますよ!」


また、しばらく静寂が。

「バリッ、バリバリ、ガリッ、ガリッ」

「誰だ!ベッドでせん餅食べるバカは?」

「すいません、先輩」

「もう、ベッドが汚れるでしょ!やめてくれよ」

「だって、この醤油せん餅、美味しいんですよ!」

「お、お前なぁ~。早く寝ろ!」

「はーい」


再び静寂が。

「グガァ~、グガァ~」

「うるせっ」

彼女は凄いイビキをかいて寝ていた。

「勘弁してくれよ!あっそうだ」

彼は、女の子に近付いた。イビキのうるさい人間には回復姿勢をとってもらえばいいのだ。

彼は、女の子の上半身に手を置き、横に向けようとした。

「キャー、変態!このデブ!」

「な、何だと?」

「先輩、私の体に何しようとしたの?」

「君のイビキがうるさいから、回復姿勢をとってもらおうとして……」

「あ、す、すいません。わたし、イビキ凄いんです。家族からもイビキの事言われていて。先輩すいません。わたし、横向いて寝ますから」

「分かった」

彼らは再び寝始めた。


「ガァ~、ガァ~……ガァ~」

「うるさいわね!先輩!」

「ガァ~……ガァ~」

「先輩は睡眠時無呼吸症候群なんだ~!」


パチンッ!


彼女は彼の額を叩いた!

「イダッ!今、君は僕を殴った?」

「いいえ。先輩、イビキッ!」

「ぼ、僕はイビキしてた?」

「はい」

「これじゃ、寝られないな」

「じゃ、先輩、やることは1つ」

「……ちょっと待った!僕はもう殆んど童貞と一緒なの。優しくしてね」

「バーカ!酒ですよ、酒!何で、先輩とやらにゃいけんのじゃ」

「じ、冗談さ!」


2人の夜は、続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る