厭な病院
羽弦トリス
第1話厭な通院
今日は精神科の通院日。今夜から睡眠薬が切れるのでかの厭な病院に行かなければならない。
今日は、朝から厭な雨。傘をさして、かの厭な病院へ向かう。歩いて30分の場所にある厭な病院は、その道程、自販機がある。
この自販機以外は見かけない、ジョージアのオリジナルの缶コーヒーを飲むのが通院前のルーティンになっている。
缶コーヒーを飲みながら、備え付けの円筒状の灰皿にハイライトの灰を落とす。
5分程、休憩すると再び歩きだす。
雨足は酷くなり、スニーカーの中に雨水が染みてくる。
何とも厭な通院日である。
やはり、カッパを着て自転車で通院すれば良かったのか?
彼はため息をつき、歩き進める。これから、何百回も精神科に通院しなければならないのか?と考えればため息をつくのは当然な行為と言えよう。
彼は29歳で統合失調症を発症させた。
幻覚、幻聴に悩んだ30代だった。40代になり初めて、病状が軽くなったが、たまに幻聴がする。
彼には彼女もいないし、兄弟もいない。よく話す友達さえもいないのだ。
現在は、コールセンターの契約社員として、生計を立てている。
月、20~25万円の給料をもらっているが、彼はタバコ以外、酒は飲まないし、ギャンブルもしない。
身長は178センチで体重は68キロ、顔も悪くはない。
だから、仕事先で数人の女性から交際を申し込まれたが、全て断っていた。
会社には、統合失調症患者とは秘密にしている。
こうやって、月1の通院日は何とか理由を付けて休んでいる。
コールセンターの仕事は、土日でも出勤なので、平日休みは有難い。
タイミングの問題で、土日出勤する代わりに平日休みは優遇されているのだ。
この厭な雨の中、歩きエレベーターのない厭な建物の階段を上り、厭な4階の精神科の病院の扉を開く。
彼の主治医は60代の女性だ。
主治医は、彼の話しを聞き、睡眠薬と精神安定剤の量を増やした。
眠れないのだ。いかに夜遅くに寝ても3時間以下の睡眠なのだ。幻聴も聞こえた。
よって、薬を増やされるのは当然な流れだと思われる。
診察は10分程で終わり、院内処方なので薬が出来るまで30分待った。
彼は、肝臓も悪いため薬の量が半端ではない。
1日100錠を軽く超える。
薬をもらい、それをリュックに詰めると、再び厭な雨のなか自宅を目指して歩いた。
帰宅すると、濡れたスニーカーを靴用のたわしで洗剤を付けて洗い、濡れたジーンズを脱ぎ、熱いシャワーを浴びた。
夕方になると、雨は止んだ。
彼はベッドに横たわり、小説を読んでいると、スマホの着信音が鳴る。
画面を見ると、会社の後輩からだ。
めんどくさいが、電話に出た。後輩が彼を飲みに誘って来たのだ。
彼は断るつもりであったが、契約社員から正社員になれるチャンスだと言われ、嫌々ながらその飲み会に参加する事にした。
彼は着替えると、待ち合わせの場所に向かった。
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