第13話

日本への帰国後は、米国での多忙な毎日とは、また違った意味での騒々しい毎日であった。


帰国を機に、妻の症状が改善するのではないか、との私の希望的観測は、完膚なきまでに、文字通り粉々に打ち砕かれた。


彼女は、十分ごとにまるで別人になるがごとく、気性が変化した。山の天候より、よっぽど気まぐれであった。


双極性障害。それが帰国後に、正式に下された病名である。


躁状態の時の彼女は、私の甲斐甲斐しい世話に、涙まで流して感謝した。いわく、こんな優しい夫を持って、自分は世界一幸せだ、とまで言い、私の手を取った。


かと思うと、かつて会社を黙って辞めたことや、米国での生活(主として、私が家庭を無視して、仕事ばかりしていたこと)を、阿修羅あしゅらのような形相で強くなじった。


しかし、これはまだ序の口である。


うつ状態のとき彼女は、一切の生きる気力を失い、何度も自殺を試みた。夜中に包丁を持って、死のうとしたのを止めたことは両手の指で足りないぐらいだ。制止しようとして、逆にこちらが刺されかけたこともあった。警察は何度も何度も、我が家に来た。


こうした生活を通じて、私は、彼女への愛情が薄れていくのを、本当にまざまざと感じた。


もう限界だった。


私は、彼女との生活を終わらせることを決意した。


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