【推理士・明石正孝始まりの物語】神体山(しんたいさん)殺人事件
@windrain
第1話 事件
山は異界への入口ともいわれている。
僕の故郷にあるその山は、標高300メートルほどの小さな山だが、いわゆる「
昔、その山の頂上には神社があった。秋になればふもとの町で収穫祭も行われた。
しかし冬には雪が積もり、元々狭い
移転後も山頂の神社はしばらくの間残されていたのだが、やがて積雪の重みと老朽化で屋根が剥がれ、床が抜け落ちるという状態になったため、正式に解体されることになった。
その後、山頂の神社は跡形もなく解体され、今では跡地の石碑だけが残っている。
その山の正式名称は「
僕が小学校低学年だった頃、ちょっとした遠足でその山に登ったことがある。近場とはいえ、小さな子どもには結構きつい山道だった。
その頃はまだ解体前の神社が残っていたが、床は落ちていたし、外廊下の板も折れていたのを覚えている。引率の先生は、危ないから中へ入らないように言ったが、そういう所へ入ってみたくなるのが子どもというものだ。
僕がその時に見たものを、なぜ今頃になって思い出したのかは、実はよくわからない。ただ、そのことをあいつに話してみたんだ。
あいつはちょっと変わったやつで、口数は少ないし、人付き合いもあまりない。表情に乏しく、陰で「人造人間」などと呼ばれていたりもする。
ただ、結構頭のいい奴なんじゃないかということは、話しぶりからそこそこ感じ取れた。
僕は頭のいい奴は嫌いじゃない。それで、あいつが何に興味を持っているのか知りたいと思い、いろんな話を振ってみたんだ。あいつは滅多に自分のことを話さないから。
僕があの山のことを話したのは、たぶんそういう
意外なことに、あいつはその話に興味を持ったようで、その山に登ってみたいと言い出したんだ。
観光地として整備された山じゃないぞ、たぶん今は誰も登らないような山で、山道も藪だらけになっているんじゃないか、と言ったが、それでもあいつは登ってみたいと言うんだ。
それで連休を利用して故郷へ帰り、その山に二人で登ってみた。
でも山道の入口で早くも後悔したよ。「熊出没注意」なんていうイラスト入りの立て看板が立っていたんだ。
案の定、山道は
移動距離は1.5キロメートルくらいだったろうか。山頂に到着するのに1時間以上かかってしまった。
そこには山頂を表す杭と、少し離れたところに「
僕がその石碑に触れたとき、その後ろの方に何かくすんだような白いものが見えた。何だろうと思って覗き込んだ僕は、危うく心臓が止まるかと思った。
「樹木が整備されていないから、山頂なのに景観が悪いな」
あいつはふもとの方を見ながら、のんきに言った。
「あ、明石っ!」僕は腰を抜かしそうになりながら、あいつに言った。「はっ、白骨死体だっ!」
あいつ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます