僕の守護天使。
猫野 尻尾
第1話:守護天使。
守護天使(しゅごてんし、Guardian angel)とは、人間一人一人についていて
一生を守り導く天使のこと。
神が人間につけた天使で、その守護する対象に対して善を勧め悪を退けるよう
その心を導くとされる。
そして全ての人々、クリスチャンであれ、それ以外であれ、たとえ大罪人であれ、
決して離れることのない守護天使がついている。
さらに、まれではあるが天使が見える者には、天使に語りかけることが可能で、
天使たちはその必要性、希望、欲求によって人間に語りかけ、時には実体化し、
啓蒙するとしている。
3歳くらいの頃からエクトプラズムのような「もやもやした白い物」が見える
ようになった。
それはいつも、幽霊みたいに翔太郎の後ろをついてきた。
一度、そのことを両親に話したことはあったが
「翔太郎は霊感が強そうだから、もしかしたら霊が見えるのかもね」
って言われただけだった。
同級生にも話したことがあったが、キミ悪がられるか、オカルト好きな奴だけが
食いついてきただけだった。
翔太郎が言ってることは、何も見えない人には信じがたかった。
だから、これは人には見えなくて自分だけが見えるもんなんだと分かったのは
小学校を卒業してからだった。
その後中学を卒業し、高校を卒業し、それでも「もやもや」したものは、
どこへ行く時もついてきた。
教室や家にいる時は、時々見えなくなる時もあったが、外出する時、
バスに乗る時、電車に乗る時、とにかく外にでる時はかならず、ついてきた。
そのエクトプラズムが、おぼろげに形になり始めたのは、 翔太郎が高校を
卒業したころからだった。
それは、なんとなく人の形に見えた。
その後、翔太郎は大学へは進学して、心霊学やオカルトについて 勉強するようになった。
エクトプラズムのようなものが、なんなのか・・・ その正体が、はっきり
分かったのは翔太郎の20歳の誕生日の日だった。
その日はうまい具合に大学が休みだったため翔太郎は朝寝坊した。
寝ぼけながら布団の中でゴロゴロしていた。
「・・・・・・」
と、誰かの声がかすかに聞こえた・・・気がした。
「翔太郎・・・」
今度は、はっきり聞こえた気がして翔太郎は起き上がった。
目をこすりながら、ぼんやりと見えたのは知らない人?・・・
いや・・・知らない女・・・の子?
翔太郎は、もう一度確認するように片目だけを大きめに開いた。
そして目の前にいる人物を観て、ゆっくり後ろに身を引いた。
そこにいたのは母親でもなく、親戚のおばちゃんでもなく、隣のおばさん
でもなかった。
翔太郎が寝てるベッドのかたわらに知らないひとりの少女が座っていたのだ。
翔太郎は品定めするように、その子を上から下まで見た。
まず髪がピンク色のショートカットで、まだ幼さを残すあどけない顔。
着てる服もピンク・・・ピンク一色。
見たこともない、初めて見る女の子だった。
なんの前触れもなく、自分の前にいきなり現れた謎の自少女。
「誰?・・・きみ」
「ようやく私がはっきり見えるようになりましたね」
とその少女は言った。
「君、どこから部屋に入ってきたの?」
「ずっといましたよ・・・私のこと分かりませんか?」
翔太郎は覚めきらない頭で考えたが、思い当たる節はなかった。
「あなたは幼い頃からおぼろげに、私が見えていたはずですよ」
そう言われて翔太郎は、あのエクトプラズムのことを思い出した。
「あ〜あのもやもやした物体?・・・」
「何?あれって??、君だったの?」
「そうです・・・正確に言うと、私はあなたの守護天使なんです」
「しゅ、しゅごてんし?」
「ほら」
そう言って守護天使だと名乗る少女は自分の背中を見せた。
そこには、なんと小さな羽が生えていた。
とても飛べそうにない可愛い羽だった。
「この羽では飛べませんよ、この羽は私が天使だという唯一の証です」
「私は天国と地上を瞬間移動で行き来してるんです」
翔太郎は天使は海外の絵で見たことがあったし、ファンタジーにも
よく出て来る、架空のキャラだと思っていた。
「はあ・・・・あ、そうなんだ・・・」
「天使って?・・・うそよね!!」
「あなたが生まれた時から、ずっと私が見守ってきました」
「だから、あなたは今日まで生きてこられたんです」
「普通、人間には守護天使の姿は見えないはずなんですけど・・・」
「なぜか、あなたは見えてるみたいですね、私のこと・・・」
「珍しいんですよね、それって」
「見えるよ、見えてる、はっきりと君が・・・見えてる・・・」
翔太郎の目の前に、たしかに背中に羽が生えた女の子が座っていた。
それは子供の頃見た「もやもや」した物体の正体だった。
その子は、自分のことを守護天使だって言った。
守護天使・・・翔太郎はその少女は僕だけの守護天使なんだって思った。
つづく。
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