人として終わってる

人として終わってる

「卑怯だよね、おまえ」

　と、喘ぐ合間にあなたは言う。

「被害者みたいなツラしてさ。誰が一番の被害者だよ。美佑（みゆ）ちゃんでしょ」

　こんな時に、一番聞きたくない名前をわざと出す。

「世間体のためだかなんだか知らないけど、そんな理由で結婚して、挙げ句に裏切ってさ。それでよく俺に対してちんぽバキバキに出来るね？」

　笑っているのか。泣いているようにも見える。眉の間の艷やかな皮膚が深く波打つ。

「むしろそれで興奮してんのか、おまえは。自分を愛してくれている女を裏切って、許されざる関係に溺れる哀れな僕、いや僕たちってか？」

　あなただって。あなただって。あなただって。

　現に今、あなたの肉体は僕を受け入れ、もっともっとと貪ろうとしているじゃないか。

「人として終わってるよ、おまえは」

　あなたは嗤った、今度は明確に。

　僕の熱は芯を失ってゆく。