第21話 Apocalypse 隠された者の存在
Apocalypseはそのまま訳すと、黙示あるいは天啓と言う意味になる。古代ギリシャ語でのもともとの語源は、apo-(~から離れて、否定)+kalupto(覆う、隠す)、直訳すると、隠すことから離れるという意味になる。
しかし我々は、「離れて覆い隠す」の意味をそのまま使って名付けている。
私は柳誠一郎やなぎせいいちろう。総宮の橘様に支持され、世界中に神獣鏡の波動の影響がないか調べていた。Apocalypseも調査した。しかし、橘様の予想した通り、Apocalypseには反応が出てしまったようだ。
それ以外では、ヒマラヤ山脈のあたりで、急な気温の上昇があり、雪解け水が下流に大量に流れ、砂漠地帯が水浸しになった地域があった。非常に珍しい現象だそうだ。
その他、航空宇宙局、軍事衛星の管理局、人工衛星の情報管理局へ連絡したが、宇宙規模での反応は無かった。
ブルガリアの首都ソフィアから38㎞ほど離れたバルカン山脈の中に位置している、小さな村のツァリチナでは、何週間も前から地下の調査が行われていた。
利津子さんが神獣鏡を使用した数日後、ある霊能力者が、地下トンネルの奥にテレパシーを送る何かがいると主張した。「私はドメインの者。」、「あの人に会いたい。」、「ここから出たい。」、そして、それはブルガリアの大預言者ババ・バンガも別の角度から主張していたものだと言い出したという。
大変高齢のババ・バンガも、調査団がトンネルの下に穴を掘ろうとしたときに、男性でも女性でもない宇宙にいる宇宙人から、「貴方たちは、あれに近付いてはいけない」、「調査を中止せよ。」とメッセージが届いたと主張した。宇宙人からのその他のメッセージは次のような内容だった。
「地下の奥深くに巨大な水晶があり、それは地球の動きを制御している。触れてはいけない、それがないと地球は滅んでしまう。」、「これは貴方がたの物ではない。ドメインが支配してはならない。」と言ったそうだ。
調査隊たちは忠告を無視し奥に進んだらしい。壁が鏡のように磨き上げられた円形の空間に到達すると、澄んだ岩と背の高い生物が融合して中央で浮かんでおり、壁には象形文字のような文字がびっしりと書かれていたそうだ。
調査隊は、澄んだ岩と背の高い生物が融合した物からは、目に見えないバリアが貼られていて、前に進めなかったり、突然不気味な霞が現れ、驚いた調査団がその霞に向かって拳銃を打ってしまったら、銃の玉が地面に落ちて行ったり、澄んだ岩と融合した背の高い生物に近付こうとすると、1人、2人と、体が投げ飛ばされ、投げ飛ばされた人は頭が砕けて即死したと報告をしてきた。
「何なんだ・・・。Apocalypseとは一体何なんだ。」
私は急いで橘様に報告する。
橘様にプリントアウトした調査報告書を手渡す。橘様は言う。
「ヒマラヤと火星は反応は無いか?」と聞かれたので、
「ヒマラヤ山脈のあたりで、急な気温の上昇があり、雪解け水が下流に大量に流れ、砂漠地帯が水浸しになった地域があったそうです。」と報告する。
橘様は額の辺りを親指と中指と薬指で抑えて大きく溜息をついた。
「火星での影響には数日から数週間かかる可能性がある。引き続き観察を続けてくれ。それくらいの反応が出てしまったならば、欧米魔法界は事を察知したかもしれない。利津子さんの存在が調べられてしまうのも時間の問題だろう。利津子さんのご家族に気付かれないようにして、警備の者を多めに付けるように。」
橘様は続ける。
「Apocalypseが反応したならば、反帝国は死に物狂いでApocalypseを動かしまいと、押さえ付けに来るだろう。何故動き出したかも探りに来る。ドメインにこの状況を知らせておくように。」
「ドメインにですか?」柳は驚いた。
「この日本は、もうすでにドメインに守られている。しかし、連絡を密にとることは今後重要になる。宜しく頼むよ。」
私は流石に驚いた。ドメインと言えば、人間の世界の者ではないじゃないか。60年以上前にあったという交流が、実際に行われるという事か。私は身が震えた。
「橘様、Apocalypseとは実際のところ、一体何なのですか?」
橘様は窓を見つめて言う。
「あのお方が保護した、昔は竜と呼ばれた地球外生命体だ。今でいえば、人が猫を保護するように、あのお方は地球外生命体を保護し、愛情を込めて育てていた。Apocalypseは、ドメインを統一した帝王の子供だった。」
橘様は続ける。
「Apocalypseを助けたことにより、この日本は地球も含めて、とてつもなく巨大な勢力から大きな庇護を受けていた。これと同じことが起きないように、地球外生命体と接触したものは、付け狙われたり、消されたりする。二度とこの日本に、そのような庇護を受けさせないようにな。」
「最初にメッセージを受けた霊能者は、Apocalypseからのものだろう。ババ・ヴァンガは反帝国の宇宙人からのものだろう。もう既に、戦いは始まってしまったようだな。あと3年。何とか持ってくれればいいのだが。」
柳は、言葉が出なかった。
柳は思う。これまでも色々な問題が起こり、それを解決する為に奔走してきたが、今回の問題はあまりにも大きい。
「あの小さな少女が現れただけで、こんなに話が大きくなるのですか。」とつい呟くと、橘様は表情を険しくして、低い声で答える。
「そうだ。・・・・そう言う事だ。」
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