Incomplete World

乾杯野郎

第1話

「ハァ…ハァ…クソ!しつけぇ野郎だ!」


ブロンクスの一角で男が何かに追われていた…手には拳銃


バァン!バァン!


男は威嚇射撃をしながら逃げいていた

しかし前から走ってきた車がすれ違う時に急にドアをあけ男に命中

男はその場で倒れ込んだ


「痛てぇ!何しやがんだ!このクソが!」

「黙れ!保釈金も払わねぇで逃げ回ってるクソが!」

サングラスをかけた男が車から9mm拳銃を構えながら降りてきて男を拘束した

「保釈金?てめぇ!サツじゃねぇのか?!」

「俺がサツにみえるか?」

そういいタイラップを男の手首と足首に巻き抱き抱えて車へ

「俺をどうするつもりだ!」

「黙ってろ!」

クルマを発進させてしばらくしてクルマを止めた


看板には「マルコ 保釈金金融」の文字


「てめぇ賞金稼ぎか?!」

拘束されていた男が言い

「俺は頼まれただけだ」

そう言い男を建物の中に連れていき引き渡した

「てめぇ!うちから保釈金借りてばっくれられと思うなよ!あんたは本当に仕事が早い、今回の謝礼だ」

輪ゴムで束ねた金を男が投げてサングラスをかけた男が受け取り

「おいおい、マルコさん?ちょっと足りねぇんじゃねぇの?」

「あぁん?そうだったけか?まぁでも不満ならそれでいいわ、次からバードに仕事を振るかな」

少し不満そうに

「…わかったよ…」

承諾し金を受け取った

「わかりゃいいんだ、フミト」

聞き終わる前に外へ出ていった


保釈金金融から出てきた短髪でガッシリとした体格の男

「弟村 史」

両親は日本出身だがアメリカで産まれた為国籍はアメリカだが日本人だ


「あれだけ体を張ってこの額かよ…溜まった家賃…また大家に見つかったらうるせぇな。どこかで時間潰すか…」

そう思い保釈金金融ビルの対面に渡り先の小道を抜けBARに向かう途中


「おいおいおい、こんな時間にお猿さんが飼い主も連れずにこんなところ歩いてるぞ?!」

路地裏から3人で程の男が弟村に寄ってきた


「なんの用だよ」


「ここは黄色いお猿さんが来ていい場所じゃねぇ、無事に帰ってママのおっパイが飲みたいなら有り金全部置いていけや」

3人組の1人がリボルバータイプの拳銃を弟村にむけながら言った


正直弟村は辟易していたのでとにかく早く休みたい一心

イラついてのもあったのだろう

警告無しに男の構えていた拳銃のシリンダー部分を握りそのまま相手の鼻面に一撃

そのまま拳銃を握りながら横の男左頬を振り抜き撃鉄を起こしてもう1人のこめかみに銃を突きつけた

「小銭稼ぎで命まで失ったら損するだけだ、バカガキども、さっさと行け!」

殴られた男達は顔を抑えながら逃げて行った

「おら!忘れもんだ!」

シリンダーから弾を全部抜いた拳銃を逃げていった男達に投げつけた


はぁ…なんか色々嫌になってきたなぁ…


鬱積した気持ちを酒で流そうとしBARの扉を開けお決まりの席に座り


「よぅ、スコッチくれよ」

そう言いながらタバコに火をつけ1口目を吹かした


無愛想なBARのマスターがグラスに酒を注ぎつっけんどんにグラスを弟村の前に置きその勢いで少し酒が零れた


「うれしいね熱い歓迎、涙が出るよ」

皮肉混じりに言いながらネクタイを緩めグラスに口をつけた


「お前さんなんか荒れてんな」

BARのマスターがグラスを拭きながら弟村に喋りかけた


「別に…ただ色々疲れただけだ」

「お前さん便利屋だっけか?」

「俺は一応探偵だ」

「探偵がツケや保釈金回収なんぞするか?」

場が悪そうに弟村は後頭部を掻きむしった

「そういう仕事しかこねぇの」

「ならあんたはやっぱり便利屋だ」

そんな会話をして時

「バァン!」

店のドアが勢いよく開き女が慌てて入ってきた

追われているのか靴すら履いていない

「ごめんなさい!お願いだから隠れさせて!」

「なんだ、どうしたお…」

マスターが言い終わる前に厨房奥へ女は入って行き、マスターと顔を見合わせた時、2人連れの男も入ってきた

「おい!今ここに女が…ん?フミト…?フミトじゃないか!おいおい!懐かしい顔だなあ!」

1人目の男が馴れ馴れしく肩を組んできてもう1人の男もニヤニヤしながら弟村に話しかけた

「誰かと思えば…薬を横流しした悪徳警官じゃねぇか」

「てめぇらででっち上げたクセに…馴れ馴れしくするなよ」

彼らをいなしグラスの酒を飲む

「まぁいい…今ここに女が入ってきたろう?隠すと身のためにならねぇぞ?フミト?」

肩を組んだ男が弟村の顔を睨みながら言った

「女なんか来てえねぇ、俺とこの無愛想なマスターだけだ」

「そうかい…じゃあ店の中を…見させてもらうぞ」

2人の男が狭い店の奥へ入ろうとした時、1人の男か置いてあった酒瓶を落としてしまった


ガチャンッ!


「あーあーあー、酒がかかっちまったじゃねぇか!」

「お前さんなんて事するんだ!その酒はウチで1番高い酒だぞ!」

「知るか!こんなせめぇ店が悪いんだ!俺達を誰だか分かってるだろう?こんな店…」

「俺の相棒のスーツは高ぇんだぞ?どうすんだ?」

「知るか!お前ら今すぐ出ていけ!」

2人組に近づいた時1人の方がマスターに関節を決めた

「イタタタ!何を!」

「なーにしてんだ!ジジィ!」

「お前ら、いい加減しておけよ、やり過ぎだ」

「っせぇ!フミト!このジジィが…」

2人組の1人がオイルライターでタバコに火をつけようとしていたので弟村は間に入って男にぶつかり持っていたライターを酒溜まりに落とした


ボッ


度数の高い酒なのだろう、弟村がぶつかった勢いで落としたライターで引火したのだ

床に火がつき、スーツについた酒にも反応して2人組の1人のスーツに火がついた

「おいおい!早く!早くコイツ消してくれ!」

「おい、フミト!水持ってこい!」

2人とも大慌てだ

「人にお願いするときなんて言うんだ?」

「うるせぇ!店だって…」

「お前らに好き勝手に荒らされるなら燃えた方がマシだ」

1人が水の瓶を開け服にぶっかけ床にもかけたが服の火は消えたが床の火はかすかにまだ燃えていた

「きょ、今日は勘弁してやるからな!フミト!次会った時容赦しねぇぞ!帰るぞ!」

そう捨て台詞を残し2人組は足早に出ていった

「アルコールに引火した火なんて落ち着きゃすぐ消えるのにな、馬鹿丸出しどもめ」

弟村は消化器を持ってきて吹きかけ火を消した

「さすがはお前さんだな、あそこにある酒がスピリタスだと知らなきゃこんな芸当はできんよ、しかしこれ誰が掃除するだ?」

マスターは労ったうえでの皮肉なのかブツブツ言いながら店の入口の看板を裏返して鍵をかけた

「これで誰も入って来れんよ、お嬢さん、さっこっちにおいで」

そういいマスターが厨房に隠れていた女に話しかけたが厨房から何も帰ってこなかった

痺れを切らした弟村が

「いつまでもそうして隠れられてるとな?ここのマスターが誰も出入りさせないように鍵をかけちまったんだ、そのせいでお前がそこから出てこないと俺は家のベッドで寝られん、まぁ気が向いたら出てこい」

そう言うと厨房から女が弟村とマスターの様子を伺いながら恐る恐る出てきた

「さ、もう誰も入って来れない、俺とあんたとツケまみれのコイツだけだ、安心なさい。おや?転んだのか?傷の手当もしよう、ここにお座りなさい」

マスターはカウンターと椅子を軽く拭き案内したが女は緊張がほぐれたのか腰から崩れ、弟村が手をやり女を抱きかかえるように椅子に座らせた

震えていた女に自分のジャケット羽織らせ

「言いたくなかったら無理には聞かない、とりあえずここは安全だ」

「ちょっと救急箱をとってくるよ、絆創膏くらいはある」

マスターがカウンター奥へ救急箱を取りに行き絆創膏を取ってきたがしかし女の方が触られることを拒絶したので察したマスターは絆創膏をカウンターに置いた

「ここに置いとくよ、何か温かい飲み物でも作ろう」

「俺とは随分と扱いが違うんだな」

「お前はツケまみれ、こちらは新しいお客さんだ、差をつけるの当たり前だろう」


弟村とマスターも会話をやめボコボコと湯を沸かす音が響いた時


「助けてくれてありがとう」


女が重い口を開いた




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