第41話 バッドエンドは残酷で、

どうするったって、どうしようもないでしょ……


口にはしなかったが、そんな諦めが、僕の頭の中にずっと巡っていた。


攻撃手段もない。

無力化する方法もない。

相手の力は、規格外。


現実はやっぱり残酷だ……

力ある者にパワープレイで押されたら、弱者は理不尽も受け入れるしかない……


「はは、いい鍛え方してるな! 最高の依り代だ!」


体育の神は喜びを見せながら、ギアを更に上げた。

人間の出せるスピードは間違いなく超えている。


「死ね……死ね! 俺より早いやつは全員アキレス腱切れろ……! 前十字靭帯を断裂しろ……!」


彼(彼女?)は、まるでリズムを取るように呪詛を唱えていた。

このままでは、本当に三宅さんの脚が潰れてしまう。


助けないと……助けないと?


そもそも、僕は助けられるような人間だったろうか。


最近、幽霊退治が上手くいったのだって、すべて姫野さんの発明品のお陰だし、僕自身には何の力もない。


所詮、学校にもまともに通えないダメ人間なのに。

教室の隅っこで震えてた陰キャなのに。


できることなんて、ひとつもないだろ……


僕のこのネガティブな考えが、具現化したのだろうか。


体育の神の走る音のほかに、ザクザクと、規則的な暗い足音が耳に入ってきた。

旧校舎の方向からだ。


顔を上げると、焦げついて所々溶けた銅像が、こちらに歩いてきていた。


「ニノキン……」

気づいた国木田さんが、驚いたように呟く。


しかし、彼だけじゃない。

二宮金次郎像の後ろには、様々な幽霊たちが、列をなしてこちらに近づいてきていた。


「うわぁん! 復讐に来たぁ! オーバーキルです! 泣きっ面に蜂です! お化けに幽霊ですぅ!」

「ふぇぇ……命だけはお助け下さいぃ……」

わかと柳女さんが嘆いている。


僕はもう、恐怖を超えて、つい苦笑してしまった。


いくらなんでも、酷いじゃないか。

疑いようもない、バッドエンドだ。


俯き、戦意喪失しかけた、そのとき……


甘ったるい猫なで声が頭上に響いた。


「ほぉんと、貴方たちの陰気って美味しそうで、すぐ見つけられるわねぇ」




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