第8話 検問だ!
それからしばらくの後、アリエスたちはヒルダたちと相談した結果、検問船を迎え入れていた。
事前の通信で検問の目的を尋ねると「違法薬物等の取り締まり」という事だった。
建前の理由だろうが、これで協定破りではなく、突然にアリエスが捕らえられるという可能性は減ったと言える。
協定違反での検問と思い込んで、無理に脱出しようとしていたら、それこそ捕まっていただろう。
検問船からチューブが『クロマグロ号』に接続され、軍人たちが乗り込んでくる。
10人程の軍人の間を割って登場したのは、『陰湿』『陰険』という単語が似合いそうな、蛇の様な目をした二人の男エルフだった。
とても似ている二人だが、双子だろうか……?
もちろん長い年月を生きるエルフ族なので、親子の可能性もあるし、この世界ではクローンの可能性だってある。
「にゃにゃ――っ!? にゃにゃ――!!」「おい、どうしたニャニャ、あんまり騒ぐなよ」
双子(?)の男エルフを見たニャニャ一等操縦士が後ろで何か騒いでいるようだが――。
「何か後ろが騒がしいが?」と、双子の片割れ。
「すまん、気にしないでくれ」と、船長のヒルダ。
「アタシがこの船の船長、ヒルダだ。こちらは積み荷の3人。他には積み荷は無いぞ。もちろん違法薬物も積んでいない」
「そうか。それはすぐ分かる事だ。これから調査魔法を使って違法薬物や輸出禁止品、禁制品等がこの船に積まれていないか調べたいが、受け入れるか?」
「もちろんだ。調査魔法を受け入れる準備は出来ている。船内部の魔法防御は切ってある。どうぞ自由に調べてくれ」
「よし」
双子の男エルフ二人は、交互に魔法詠唱を行う。
「XXX XXX XXX サーチ」
「XXX XXX XXX ジャッジメント」
「XXX XXX XXX インフォ」
(あら?)
アリエスは自分の身体を調査魔法の魔力が通過するのを感じる。
(今のは、もしかして、調査魔法で調べられた?)
「失礼。貴女のお名前?」
「アリエス・グリムス・エルアルスペイドと申します」
「ほほう。貴女がアィーヒ帝国の吸血伯爵令嬢……。噂に
――ぞくっ。
男エルフの嘗め回すような視線を浴びながら美辞麗句を聞かされたアリエスの全身を寒気が襲う。
名前を聞いただけで、すぐに素性を見抜かれたのは、やはり最初からアリエスが目当てだったのだろうか――。
「何も違法なものは積んでないようだな。異常な点は見つからなかった。通過していい」
アリエスとヒルダたちが予想していた通り、すんなりと検問は終了した。
おそらくこの後、検問船は『クロマグロ号』を追ってくる。
彼らは、確実にアリエスが乗船している船を探していて、その作戦を確実のものとする為に、別件での事前調査を思いついたのだろう。
「やはりついて来ている。お姫さんの読み通りだったな」
アリエスとヒルダはお互いに
(やはり、この後は……)
2回目のワープ開始地点でスタンバイした『スタークソル号』と『クロマグロ号』。
「このままついてこられたら、次のワープ到着地点で確実につかまるな」
既に皆、覚悟はできているのだろう。
『クロマグロ号』の
「よし、予定変更で、ここで『スタークソル号』とお別れだ」
『クロマグロ号』は静かに『スタークソル号』との接続を切断する。
「『スタークソル号』に感謝の信号を打て」
「航路計画変更。プランQ314からV315に変更!」
「航路計画変更! 新計画入力V315番!」「V315番、入力完了!」
「われら『クロマグロ号』とお姫様一行は勇敢かつ無謀にも『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます