第33話 戦利品の解析
~非通知情報記録域~~~~~~~~~~~
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>>不破勝鋼矢(ジュエルアーマリースライム)が〖スキル:夜目〗を獲得しました。
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「(おっ、着いた着いた。〖方向感覚〗様様だな)」
ホブゴブリンを滅ぼしたオレは、トレントの丘に戻って来ていた。
枯れかけた大木の前で一息つく。
「(取りあえず戦利品を見てみっか)」
〖武具格納〗から洞窟で手に入れた武器の数々を出していく。
細身ゴブリンを倒した後、オレはホブゴブリン達の死体を食べるついでに、あいつらの使っていた武器も仕舞ったのだ。
あとその作業中、〖夜目〗って〖スキル〗も手に入った。
〖マナ〗節約のため死体や武器を
この〖夜目〗があると暗闇でもある程度視界が利くので大助かりだった。
「(お陰でこれらも見つけられたしな)」
武器を取り出しながら呟く。
オレが転がり落ちた坂の途中には、最初の小部屋のような小型スペースがいくつかあった。
その中の一つに武器が纏めて置かれており、それらも貰って来たのだ。
そうして得た武器達を種別ごとに一つずつ並べて行く。
「(にしても、〖武具格納〗の
〖スキル〗に意識を向ければ容量の埋まり具合や、内容物の種類が分かる。
仕舞った物を忘れてもこの機能のおかげで問題はない。
……ぶっちゃけ回収の際はテキトーにポイポイ放り込んだので、これがなくては大変なことになっていた。
「(と、これは人間の武器か)」
剣や槍、斧、棍棒等々に続き、弓を取り出したところで呟く。
ホブゴブリンの武器は基本的に鉄製だった。
それは多分、あの細身ゴブリンが製作してたからだろう。
しかし中には、他の素材を加工したっぽい武器もあった。
この弓なんかがそうだな。
よく
ゴブリンにこれほどの加工技術があるとは思えないのと、弓がこの一つしかないことからこれは人間から奪った物だと推測したわけだ。
「(さてと、まずはこいつから確かめて行くか。〖レプリカントフォーム・解析〗)」
オレが武器を並べているのは〖レプリカントフォーム〗を使うためだ。
手始めに手元の弓に使ってみる。
〖進化〗で得たこの〖スキル〗は、武器を解析し、それを模倣するってものだ。
武器を大量入手した今なら試せる。
「(解析、結構時間かかるんだな)」
〖マナ〗の消費とかはねぇが、解析中は意識を集中させる必要がある。
「(ふむふむ、ほうほう、そんな性質が──)」
少しずつ頭の中で組み上がって行く武器情報。
それらが全て集まったところで解析は完了した。
「(じゃあ次は、〖レプリカントフォーム・模倣〗)」
〖スキル〗を発動。伸ばした鞭の先端がグニィと変形し、弓の姿を
「(弦もちゃんと張りがあるな)」
ビーンッ、ビーンッ、と弦を弾いて確かめる。純粋な形状や強度のみならず、こういった性質もコピーできるらしい。
その張力は本物と比べても遜色なかった。
「(んでもおかしいな、〖ウェポンボディ〗の強化が働いてんのに……)」
〖ウェポンボディ〗は武器の性能全般を引き上げられる。
その対象は張力にも及ぶはずなんだが。
「(……もしかして、レプリカは劣化すんのか……?)」
そんな仮説を思い付いた。
元の性能が低いせいで、強化と打ち消し合っているのかもしれねぇ。
まあ考えても埒が明かないので、弓を格納して次の武器を手に取る。どんどん解析して行こう。
それからしばらくして全武器種の解析が終わった。
「(あ゛ー、疲れたぁ……)」
調べ終えた剣を仕舞い、ぐったりとする。
武器解析は情報を処理しなくちゃならねぇから頭がクラクラすんだよなぁ。
鞭を伸ばし、トレントの実を食す。
「(けど、お陰で色々分かったぜ!)」
少し休み、ピョンと起き上がる。糖分補給で完全復活だ!
スライムの思考に糖分が必要かは例の如く不明だけども。
「(武器解析は武器の強さによって解析時間が変わるみてぇだな)」
それが分かったことの一つ目。
最初の弓の解析にはかなり時間を要したが、それはアレが上等な武器だったからだ。
ホブゴブリン達が使っていた鋼鉄武器の解析もそれなりに時間はかかったが、どれも弓の半分ほどで終わった。
〖レプリカントフォーム〗の練度向上もあったんだろうけど、やっぱり一番大きな要因は武器の格だ。
「(武器に特殊効果があるって知れたのも収穫だよな)」
この世界の武器の中には物質的な特性の他に、特殊能力を宿す物もあるらしい。
解析に最も時間のかかったあの弓には、〖マナ〗を込めると矢に風除け効果を付与できる、って能力があった。
空気抵抗や風向きを無視して狙撃できることの有用性は、ド素人のオレでも分かる。
素材はどれも貴重な物のようだし、きっとかなり上質な弓なんだろう。
「(まあ、ゴブリン達のが粗悪だったかっつーとそうでもねぇんだけどよ)」
あれらの装備の元となった鋼鉄は、細身ゴブリンの〖スキル〗で強化されていた。
強度や鋭利さは通常の鋼鉄武器より一段上。
特殊効果はないが、基礎性能の優れたバランス型って事だな。
試しに剣で木を斬ってみたが、素の変形能力で作った剣よりも〖レプリカントフォーム〗で模倣した剣の方が切れ味が良かった。
強度はさすがにオレの方が上のはずなので、状況によって使い分けて行こう。
それから他に人間製の武器が無いか〖武具格納〗に意識を向けて探していたその時。
丘の麓に見覚えのある人物が姿を現した。
「あっ、やっぱりスライムさんだ!」
そこに居たのは、これで三度目の邂逅となる水色髪の少女だった。
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