第14話 〖進化〗2
「スラーっ」
ボゴォンッ。
大熊に吹っ飛ばされ、落ちた先は岩の上だった。
ジュエルスライムの〖タフネス〗で怪我はしなかったが、代わりに岩が砕け散る。
「(気軽に吹っ飛ばしてくれやがって、タンコブが出来ちまうぜ……)」
殴られ抉れた箇所をさすりつつ、岩から降りる。
大熊の一撃は、何と言うか、オレの硬さを素通りする感じだった。
衝撃自体は巨大魔獣達の流れ弾より小さかったのに、痛みや〖ライフ〗の減り具合は大熊の攻撃の方が上である。
もしかすっと大熊は、物質の強度を一定割合無視するような〖スキル〗でも持ってんのかもしんねぇな。
「(ハァ、体が溶けちまうし踏んだり蹴ったりだ)」
次大熊に会ったら迷わず逃げようと決心しつつ、肉体の様子に意識を向ける。
オレの体はその二割弱がドロリと融解していた。
スライムの肉体は強烈な攻撃──〖ライフ〗が減少するレベルの衝撃を受けると、その威力に応じた範囲の細胞が壊死してしまう。
そして壊死した部分はこのように溶けだすのだ。
〖ライフ〗が二割減ると肉体は一割ほどが壊死する。
つまり壊死が肉体の半分に及ぶと、スライムは死を迎える。
「(──お、あったあった)」
縁起でもねぇことを考えながら歩いていると、見覚えのある魔獣の死体を見つけた。
〖方向感覚〗のおかげで分かっちゃいたが、大熊に飛ばされたのはちょうどザリガニと戦った方角だったのだ。
大熊の一撃の方が強かったから、歩いて戻る必要があったけども。
他の魔獣に食い荒らされていない幸運を喜ぶ。強い魔獣は栄養満点で、食べれば強く成長からな。
〖溶解液〗でザリガニを食す傍ら、〖ステータス〗に意識を向ける。
実はザリガニを倒した後から、体に力が漲っていたのだ。
「(やっぱ〖進化〗できるみてぇだな)」
〖進化〗は強くなる一番の近道だ。
周りに敵もいないことだし、今の内に済ませるとしよう。
早速、〖進化〗候補を見てみる。
~進化先~~~~~~~~~~~~~~~~
ルビースライム 獣位:長獣
ラージジュエルスライム 獣位:長獣
ジュエルウェポンスライム 獣位:長獣
ブリリアントスライム 獣位:長獣
ジュエルメテオスライム 獣位:長獣
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
進化先が一気に増え、今回は五つもある。選り取り見取りだな。
各種族の概要を見るべく、それぞれの名前へと意識を集中させる。
~進化先~~~~~~~~~~~~~~~~
ルビースライム 獣位:長獣
・スライム系統の希少種。
・紅く煌めくその身体はほとんどの攻撃を寄せ付けない。
・逃走能力にも秀で、並の魔獣では赤の残光しか捉えられない。
・また、炎を操る〖スキル〗も持つ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ほうほう、正統進化っぽいな。
炎を操れるってのもカッコよくて高ポイント。
他の候補次第だが、なかなか良さそうな進化先だ。
さて、お次は──。
~進化先~~~~~~~~~~~~~~~~
ラージジュエルスライム 獣位:長獣
・〖ライフ〗の高いラージスライム、その希少種。
・体が大きく、〖タフネス〗や〖レジスト〗も非常に高い。
・巨体にもかかわらず、逃走能力にも優れている。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ラージ系か。スラ太と同じ系統だな。
〖ライフ〗が多いのは魅力的だ。大熊みてぇな〖タフネス〗を貫通してくる相手にも強気に立ち回れる。
ただ、それ以外だと目ぼしい能力が無いっぽいんだよなぁ。
直接戦闘もあんま得意そうじゃないし。
まあ、第二候補くらいにしとこう。
~進化先~~~~~~~~~~~~~~~~
ジュエルウェポンスライム 獣位:長獣
・〖ウェポンスキル〗を使いこなすウェポンスライム、その希少種。
・身体を多種多様な武器に変化させ、〖スキル〗を活かして戦う。
・通常のスライムに比べ高い〖パワー〗を持つが、その本領は〖タフネス〗である。鉄を遥かに凌ぐ硬度の肉体は攻防一体の凶器となる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
こいつはなかなか良いんじゃないか?
ゴブリンから
【ユニークスキル】の影響でかオレは〖ウェポンスキル〗をたくさん覚えているし、これからも覚えて行くだろう。
色んな武器に変形できるというこの種族とは相性が良さそうだ。
~進化先~~~~~~~~~~~~~~~~
ブリリアントスライム 獣位:長獣
・スライム系統の希少種。最も美しいスライムの一種。
・柔軟性では一歩劣るが、〖タフネス〗と〖レジスト〗は他の追随を許さない。
・幻影の〖スキル〗で敵対者の目を欺く。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今度のは防御特化って感じだな。どうも〖レジスト〗も〖タフネス〗と同じくれぇ高くなりそうだ。
幻影の〖スキル〗も気になる。
が、最強を目指す身としちゃあ攻撃能力が低そうなのはちょっとな……。
第三候補くらいにしとこう。
~進化先~~~~~~~~~~~~~~~~
ジュエルメテオスライム 獣位:長獣
・スライム系統の希少種。
・ずば抜けた〖タフネス〗を活かし、落下攻撃によって獲物を狩る。
・スライム特有の落下〖スキル〗を持ち、また跳躍力が高い。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
んで、最後がこれ。
吹っ飛ばされまくったから現れたっぽい進化先だ。
にしてもメテオ……
オレ的にはサッカーボールとかホームランボールとか、そういう感じの自認だったんだが随分オシャレに修飾してくれる。
ちょっと選びたくなっちまうじゃねぇか。
跳躍力が高いっつーこたぁ、木の上で待ち伏せしなくても高く跳んで落下攻撃を仕掛けられるってことだよな?
結構良さそうな進化先に思える。
強いて懸念事項を挙げるなら隙の多さだ。
これまで〖圧し潰し〗を使う際は、〖挑発〗や〖魅惑の輝き〗で敵をその場に留めて来たが、それが今後も通じるかってのは微妙だ。
強い魔獣は〖レジスト〗も高いし、精神系〖スキル〗の効き目も下がってしまう。
少しでもまともに理性が働けば、落下攻撃など躱してから反撃されるだけだ。
「(う~~~ん……)」
悩む。
どの進化先も他にはない魅力があって、いざ一つに絞ろうとすると後ろ髪を引かれちまう。
けど、いつまでも迷っていても仕方がねぇ。
一旦食事を中止し、思い切って選択する。
「(よしっ、お前に決めたぜ! 〖進化〗開始だ!)」
オレの意思に応じて体が熱を帯び出した。
熱はどんどんと高まり、液状の体は沸騰するように震え出し、徐々に徐々にその体積を増して行き、そして──
~非通知情報記録域~~~~~~~~~~~
・・・
>>不破勝鋼矢(ジュエルスライム)が〖進化〗を開始しました。
>>種族がジュエルウェポンスライムに変化しました。
>>〖進化〗に伴い〖スタッツ〗が変化しました。
>>〖スキル〗が追加されました。
・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
──熱が引いて行く。
〖進化〗が完了したのだ。
体の色は変わっていない。依然、透き通るような青色をしている。
だが、サイズが二回りほどデカくなった。
周囲の木々と比較してみるに、小さめのバランスボールぐらいのサイズはあるみてぇだ。
とまあ、外見の話はこれくらいにしておいて。〖ステータス〗も確認してしまおう。
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