第4話 ウルフ達

「(よしッ、ニュートン最強!)」


 ウルフの死体を前に小躍りする。

 偶然に偶然が重なった形だが、格上を倒せたのは嬉しい。


「(お、これは……レベルアップか!?)」


 そうしていると全身に力が漲って来た。

 早速〖ステータス〗を確認してみる。



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魂積値レベル:7(UP)


 スタッツ

ライフ :17/17

マナ  :4/4

パワー :4

タフネス:212

レジスト:10

スピード:4


 スキル

逃走(NEW) 登攀(NEW) 挑発(NEW)

圧し潰し(NEW)

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 おおっ、生まれて初めて〖レベル〗が上がった!

 それに〖スキル〗も何かいっぱい増えてる!

 一つずつ確認してくか。


 まず能力値スタッツ。元から尖った配分だったが、上昇幅も偏ってやがる。

 何だよ〖タフネス:212〗って。〖レベル1〗の頃は確か150ちょいだったはずだろ。これだけ60も増えてやがる。


 代わりに他の伸びは微妙だ。

 普通のスライムなら〖パワー〗も〖スピード〗も10弱はあるはずなのに、オレは4しかない。

 状態異常にかかりにくくなる〖レジスト〗は他よりちょっと高いけどな。


 次に〖スキル〗に目を向ける。何と言うか、多いな。

 いや、ホント何でだ?

 こんなポンポン取れるなら、オレはとっくの昔にスキル長者になってるはず。


 それに〖レベル〗も一気に六つも上がってるし……。

 いくらウルフが格上だからってそう簡単に上がるか?


 故郷のスライム達は〖レベル5〗ぐらいの個体がほとんどで、それ以上になってるのはスラ太みたいな一部の者だけだったのに。


「(うーん……? もしかしてこいつの仕業……か?)」


 オレと他のスライム。もっと言うと昨日までのオレと現在のオレの差異は一つしかない。

 いつの間にか手に入っていた【ユニークスキル】とやらだ。


 たしか収穫量を最大にする、みてぇな効果だったはず。

 レベルアップや〖スキル〗の習得に必要な、ゲームで言う経験値や熟練度みたいなモノの獲得量を最大にした、とかそういう感じに働いた……のか?


 ……ま、この謎は保留だな。

 次、〖スキル〗の詳細を見てこう。



~スキル詳細~~~~~~~~~~~~~~

逃走 逃走時、素早さに補正。


登攀とうはん 登攀時、身軽さに補正。


挑発 対象の、〖スキル〗発動者に対する敵愾心てきがいしんを高める。


圧し潰し 自重を利用して直接攻撃を行った時、威力に補正。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 意識を集中させてそれぞれの効果を視てみた。

 さっきの戦いの時、やたらと調子が良かったのは〖スキル〗を覚えたからみてぇだな。


 〖圧し潰し〗は最後に落っこちたのが〖スキル〗認定されたらしい……うん、計画通りだな。


 にしても、どの〖スキル〗も使える場面が多そうだ。

 〖逃走〗と〖登攀〗は言わずもがな、〖圧し潰し〗は有用な攻撃手段として大いに期待できる。

 それに〖挑発〗は仲間が狙われそうな時に──


「(──いや、オレに仲間なんて居ねぇんだったな……)」


 ……今回のような攻撃準備に時間がかかる場合は、相手をその場に留めるために〖挑発〗は使える。

 オレの今後のメインウェポンは〖圧し潰し〗になる予定なので、こっちも重宝するだろう。


 それに怒りは正常な思考を阻害する。

 ウルフが回避ではなくそのまま食らい付くことを選んだのも、怒ってて冷静な判断ができなくなってたからだろうしな。

 そういう訳で、〖挑発〗を得られたのは幸運だ。


「(よし、確認はこんなとこでいいか)」


 思考を中断し、目の前のウルフに意識を切り替える。

 他の魔物に横取りされる前に、早くこいつを頂いて──


「(──いや、待てよ)」


 その時、一つの妙案が脳裏をぎった。スライムに脳は無ぇけど、気分的にはそんな感じだ。

 上手く行けば今日の夕飯をもう一食、楽にゲットできるかもしれねぇ。

 案を実行に移すべく、オレは〖登攀〗を使って木に登ったのだった。




「ヴァルルゥ……」


 死臭に誘われてだろうか。

 ウルフの一団がやって来た。


 そいつらは同族の死体を見つけるや小走りで駆け寄る。

 同族を心配したのか、あるいは食料を迅速に確保するためか。


 まあ、どっちにしろオレには関係ねぇ!


「スラスラッ!」

「きゃうんっ!?」


 ──ゴキョッ。


 落下攻撃を受けたウルフが情けない声を上げて倒れた。

 ちょうど頭頂を捉えたことでそのウルフは即死。すぐにオレの〖レベル〗が上がる。


 いよぅしっ、上手く行ったぜ!

 ウルフの死体を餌に他の魔獣を集める作戦は大成功だ!


「スララッ」


 そう歓喜しながらも、オレは素早く木に登る。

 相手には仲間があと三匹いる。

 突然のことに理解が追い付いていないようだが、突っ立っていればたちまち襲われちまうだろう。


 枝の上に立ったオレは、そのまま〖挑発〗!

 ウルフ達をその場に釘付けにする。


「「「ガウゥルルゥッ!」」」


 木に登れないウルフ達は根元で唸るばかり。

 よし、完璧にハマったな。

 念のためもう二、三度〖挑発〗を重ね掛けし、満を持して飛び降りる。


「(〖圧し潰し〗!)」


 噛みつきで迎え撃とうとするウルフ。

 しかしオレの〖タフネス〗を破ることは出来ない。

 その個体も最初の一匹と同じ末路を辿った。


 ハッハー、ウルフ風情恐るるに足らず! このまま〖圧し潰し〗を二回使って全滅させてやる!

 早速もっかい木に登……あ、ちょ、攻撃されてっと登れねぇ!

 やめっ、止めろっ。噛んだり引っ掻いたりするんじゃねぇっ。

 ぎゃあぁぁああーッ。



~非通知情報記録域~~~~~~~~~~~

・・・

>>不破勝ふえとう鋼矢こうや(ラフストーンスライム)の〖魂積値レベル〗が11に上昇しました。

>>〖進化〗が可能になりました。

>>ガウル(ワイルドウルフ)が〖引っ掻き〗を発動しました。

>>不破勝ふえとう鋼矢こうや(ラフストーンスライム)の〖ライフ〗が0減少しました。

>>〖スキル:ブロック〗を獲得しました。

・・・

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