群れを追放された俺、実は激レア種族でした ~俺だけ使える【ユニークスキル】でサクサク成長・最速進化。無双の異形に至ります~

歌岡赤(旧:R II)

第一章

第1話 記憶の復活

 ジェル状の体内に浮かぶ木の実を、〖溶解液〗で溶かし吸収して行く。

 取り込んだ果汁が味覚を刺激した。


 んーー、渋い……!


 やっぱ苦手だな、この木の実。

 どうせ果物ならいちごみてぇにもっと甘いのの方が──。


 ──ん? イチゴって何だ?

 そんな果物、生まれてこの方見たこともねぇはずなのに……。


 スライムとして生を受けてしばらく経つが、時折、身に覚えのない知識がふっと湧き上がって来ることがあった。

 最近はそれが特に増えて来ているように思う。


 ……これもラフストーンスライムの特性なのだろうか?

 でも、〖ステータス〗には何も載ってないんだよなぁ……。


「スラッスーラ!(おいっスラすけ!)」


 益体もないことを考えていると、一匹のスライムが話しかけて来た。

 赤く体格のいいスライム、スラ太だ。


 ラージブラッディスライムという希少種で、先代族長がウルフに喰われてからは族長をしている。

 彼の後ろには取り巻きのスライム達が数体並んでいた。


「スラァスー、スラーラ?(どうしたんだ、スラ太?)」

「スーラッス、スラァスッラ!(いいかよく聞け、お前は追放だ!)」


 …………は?

 突然の出来事に頭が真っ白になる。


「す、すららぁ……。スラァスララス!?(な、何でだよ……。どうしてオレが追放されなきゃならねぇんだ!?)」


 突然の宣告に堪らず訊き返す。

 今日だってしっかり仲間を守りつつ、食料を集めて来たじゃねぇか!


「スラッス、スラースラ!(そんなの決まってるだろう、お前がウサギ一匹倒せない雑魚だからだ!)」


 ……たしかに、青い体色の通常種スライムとは違い、灰色のオレは力が弱く〖溶解液〗の威力も低い。攻撃は不得意だ。


 けどその分、他のことで群れに貢献できるよう頑張って来た。

 群れの繁栄のために色々な案を考えたし、高い〖タフネス〗でスライム達を庇ったことだって何度もある。


 そんなことを必死に説明したが、スラ太は取り付く島もない。


「スララスッラ、スラスースラーラスラッ(バカ言え、お前が庇わなくても俺達は平気だッ)」


 んな訳ねぇだろ!


 百歩譲ってスラ太はそうかもしれない。

 ラージブラッディスライムは〖ライフ〗が豊富だ。

 ゴブリンの攻撃を受けたってピンピンしてる。


 けど、他の通常種達はそうじゃない。

 一撃で〖ライフ〗が大量に削られるし、それをオレが防いでいることも知っている。


「スー! スゥラッス!?(なあ! 皆もそれでいいのか!?)」


 きっと庇ってくれるはずだ。

 そう信じてスラ太の後ろにいるスライム達に問いかけた。


「スーラ、スッラ(スラすけ、ヨワイ)」

「スゥスラ、スラ(ヨワイヤツ、イラナイ)」

「スララララ、スーラ、ラッス(ギャハハハハ、ザコ、デテイケ)」

「す、スッラスラぁ……(う、嘘だろ皆……)」


 だが、返って来るのは罵倒や嘲笑ばかり。

 スラ男もスラ美もスラ左衛門も、助けてくれそうにない。


「スララースースラ(分かったらとっとと出て行くんだな)」

「スラスラッスラっ、スーラス? スララースッラ? スゥスゥラ!?(待て待て早まるなっ、オレ無しでどうやって植物の採取地を決めるんだ? 敵の攻撃を受け止めるのは? オレを追い出したら絶対後悔するぞ!?)」

「スラッス、スラースラッス!(往生際が悪いぞ、つべこべ言わずさっさと出て行け!)」


 その強情な声音に、これ以上異議を唱えても無駄なのだとオレは悟った。


「……スラ(……ああ)」

「スラッスーラ、スララスラ(おっとその木の実は置いてけよ、それは俺達が集めた物なんだからな)」


 食料採集にはオレだって同行しているし、今日だって二つの木の実を持ち帰った。

 そもそも安全に持ち運べているのだって、オレが敵の攻撃を防いでいるからだ。

 だけど、そんなことを言ったってスラ太達は聞き入れてくれやしないだろう。


「スララ……(分かったよ……)」


 溶かしかけの木の実を置き、オレはコロニーの外へと進んで行く。

 その時だった。


 ──ゴンっ。


 体を硬い物が打った。

 背後から石を投げられたのだ。


「スララッ、スッラ、スッラ(アハハッ、アタッタ、アタッタ)」

「スラ、スーラース(ツギ、オデガヤル)」

「スラススラッス(アタシモモッカイッ)」


 ──ゴンっ、ゴンっ、ゴンっ。


 スラ太の取り巻き達は次々と石礫を投げて来た。

 どれもそこそこ狙いが良くて、半分以上がオレに当たる。


 ……この投石だって、攻撃手段の乏しいスライム達のため、オレが提案したものなのによぉ……。


「スラぁ……(痛ぇ……)」


 オレの〖タフネス〗なら投石程度、少しの傷にもならない。

 けれど、体ではなくその奥が、胸の内が痛かった。

 石が体を叩くたび、心を直接たれるみてぇな痛みに襲われた。


 オレはあいつらを仲間だと思っていて、ずっと力を尽くして来たのに。

 あいつらはオレを仲間だと認めていなかったんだ。


「スラぁ……っ(クソぅ……っ)」


 覚えてやがれ、いつか強くなって見返してやる……!

 心の中で叫びながら、オレは逃げるようにして元仲間の前から去っていく。


 ──こうしてオレは、スライムの群れを追放されたのだった。




~非通知情報記録域~~~~~~~~~~~

・・・

>>不破勝ふえとう鋼矢こうや(ラフストーンスライム)の本世界への定着が完了しました。

>>【ユニークスキル:収穫最ベストハーヴェスト】が活性化状態になりました。

>>解析結果を〖ステータス表示〗に追加しました。

>>能力活性化に伴い、不破勝ふえとう鋼矢こうやの記憶が一部復元されます。

・・・

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