第13話 ワクチンと治療薬



 私たちは死ぬかもしれない思いをして、あの部屋から抜け出した。


 「確か、あの男の部屋にあるのよね」


 「あの男って誰?」


 涼太が訊いてきたので、私はコウと涼太に気絶している間に起きた出来事を話した。


 「マジか、みくねえは怪我ない?」


 「うん」


 「美久さんほんとありがとうございます」


 「いいの」


 感謝されるのは少しばかり嬉しい。


 そして、それっぽい部屋にたどり着き、鍵が必要かなと思い鍵を取り出すも、鍵は必要なく、普通に開いた。


 入るやいなや、アルコールの匂いがした。それほど広くもない部屋なのに、布団や、冷蔵庫。まるでここで暮らしていたのような形跡が残っていた。


 そうして目的の薬を探していると、床にいかにも怪しげな蓋のようなものが被せられているところがあった。


 「みくねえ」


 「うん」


 私は生唾を飲み込むと、その蓋を開けた。開けたところには人が一人入るくらいの大きさの通路が下に梯子で繋がっていた。


 「行くしかないのね」


 「うん」


 コウと君嶋さんにはここで待ってもらうことにした。


 そうして梯子に足を掛け、淡々と降りていく。


 15分後


 涼太が片腕しかないので少しサポートもして時間は掛かったが、


 私たちは梯子から降りた部屋に出た。そこは沢山の薬が保管されている場所だった。


 そうして、そこにあった机の上に一つの手記を見つけた。


 『…が我々のワクチンサンプルと治療薬サンプルを回収していきやがった、政府の奴らはこれを他国に渡すつもりらしい。2月20日、日本でこのウイルスの感染者が初めて出た、もう諦めた。どうせ政府の奴らにまたなんかやられる。2月21日、私は政府とこの世界に復讐するために強力なZウイルスを開発することに決めた。2月22日、Zウイルスの強力なモノが完成した。名前はXウイルスにしよう』


 どうやらあの研究室で読んだ手記の続きらしく、おそらくあの男が千切ってこちらで手記を記したのだろう。


 そしてその通りにあるはずのワクチンと治療薬はなく、私は絶望した。


 (あの子らを助けられなかったら…命を救えなかったら…)


 私はこの地獄に等しい状況で疲れきっていたのか、地べたに膝から座り込んだ。


 「みくねえ?」


 「ああ、気にしないで、疲れてるだけだから」


 こうして私は深い眠りに落ちていった、そうして、この後、私は眠ったことを後悔するのだった。


ーーーー


 俺の名前は橋田涼太、みくねえが急に倒れたかと思うと、眠り出したからほんとびっくりだ。


 (にしてもワクチンサンプルとか治療薬なんてほんとにあるのか?)


 と、ここで、なんか薬が入っているっぽいスーツケースを見つけた。


 (鍵がいるな、みくねえから鍵貰おう)


 そして俺は鍵を使用し、そのスーツケースを開けた。


 「なんだこれ、薬が全部で2本しかないじゃん!?」


 俺は薬が2本しか入っていないことに驚愕し、同時に、『常温で保管されてるので、使用は早めに』と、管理体制ガバガバじゃないか。


 「とりあえず、1本は君嶋さんに打とう」


 そう決め、みくねえを起こそうとした時だ。


 俺がみくねえに触れる前に、みくねえは痙攣したかのように、ビクッと震えた。


 そのまま目を瞑ったまま起き上がると、みくねえの皮膚の色が緑色になっていく。


 「みく…ねえ…?」


 「……」


 俺は何かまずいと思い、薬を注射しようと、ケースから1本取り出そうとするも、みくねえはこちらへ飛び掛かってきた。


 「うわ!」


 俺はケースごと持って回避したが、机に頭をぶつけたのにも関わらず、怯まずにこちらへまた襲ってくる。


 「グワアアア!」


 「ちょ!みくねえ!」


 俺はケースを盾に凌いでいるが、みくねえの力は段々強くなっていくばかり、このままではまずい。


 (くそっ、こうなったらこれしかない!)


 俺はみくねえをスーツケースで吹っ飛ばし、その吹っ飛ばして稼いだ数秒で、スーツケースから薬を取り出した。


 直後、またこっちに飛びつかれるが、俺は回避し、後ろから腕に注射針を刺し、薬を打ち込んだ。


 (頼む!効いてくれ!)


 みくねえは直後、倒れてしまったが、身体から緑色の皮膚の部分が無くなっているのをみるに、これはきっと効いているのだろう。


 「よかった…」


 俺は小さくそう言葉を漏らした。


ーーーー


 「よかったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 私は弟にそう起こされ、意識を取り戻した。


 「ここは…?」


 「起きたか、時間がない。ここから脱出しよう」


 「ふぇっ?」


 私の名前は君嶋麗奈。起きるとそこには見知った顔の涼太くんがいた。


 「私はなんでここに…っ」


 感覚が戻ってきたかと思うと、脚に巻かれている包帯についた気持ち悪い血の染みた包帯の感触が伝わってくる。


 「どこまで憶えてる?」


 私はありのままの記憶を話した。


 「確か、あの子たちにお菓子をあげて、それで急に眠気がして、それで起きたらここにいた」


 「そうか、とは誰のことなのか?」


 「私の兄弟よ」


 「そうか。じゃあ急いでここを脱出しよう」


 彼はショットガンを手にして、それで女の人を負ぶさってる。


 「色々ツッコミたいところなんだけど、コウ以外の兄弟は?」


 すると今度はコウが答えた。


 「あ、ああ、姉ちゃんにびびって多分警察と一緒に避難したよ」


 「そう?ならいいんだけど」


 家族も生きているということだし、やっとこれでうちに帰れ…


 

  突如、スマホからJアラートが鳴った。


 『国民の皆様。この度日本で大規模な暴動が、宮崎県、山口県、東京都、北海道で発生しました。日本は航路や空路を封鎖します、国民の皆様は人が密集しない場所に行くなど、独自の対策をしてください』


 「なによ、これ…」


 スマホの画面には俺らが住んでいる宮崎の惨状が映し出されていた。


 そして終末世界かのような雰囲気を彷彿とさせる曲が流れていた。


 「宮崎に…核が落ちる…」


 「そんなっ!」


 「もう嘆いている暇はない。一刻も早くこの地獄から出るぞ!」


 私は起き上がって、コウと手を繋ぎ、この地獄から脱出して見せると心に誓った。


ーーーー


 「うっ」


 私たちがいた場所は研究所だったらしく、多くの死体が眠っている場所でもあった。


 「こんな刺激臭を嗅いだのは生まれて初めてよ」


 「ああ、同感だ」


 「くっさぁ」


 相変わらず涼太くんは女の人を負ぶいながら、ショットガンを持ち、いつでも戦いができるような臨戦態勢…とは言えなかった。


 片腕は義手と言っていいのか、普通の人間の腕では無いし、なによりその女性がかなりの負担だと思う。


 「ここを脱出したら何したい?」


 「馬鹿っ!それは完璧なフラグだろ!」


 「フラグ?もうアニメやゲームじゃないんだ…」


 そうして、私が笑おうとした時、扉の向こうのゾンビと言うにはあまりにもおぞましい生き物と目があってしまった。


 「ごめん、なんかやらかしちゃったみたい」


 「そうか、じゃあ逃げるか」


 「ガアアアアアアアア!」


 耳鳴りがするほどにそいつは強烈に叫び、全力で襲い掛かってきた。


 私たちは走りだした、そいつに追われながら。


 「俺がこいつの脚を撃つから、早く走れ!」


 「わ、分かった!」


 私は若干戸惑ったが、コウを連れて走って、走って走り続け、研究所から逃れた。


 しばらくして、彼と女の人もやってきた。


 「さて、ここからどうしようか」


 「そうね、とりあえ…」


 次の瞬間、私の髪を銃弾が掠めたのだ。


 


 


 


 

 


 


 


 


 


 


 



 


 


 


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