《心で笑ってみたら?》

aki

第1話出逢い

その日、高梨笑真(14才)は、白杖を

持って堤防を歩いていた。


(う~ん、風が気持ちいい~今日は

日曜日だからかな?子供達の元気な声が

聞こえるな)


そう思いながら歩いて居ると、急に


「危ない!」


と、男の声がした。

笑真の顔の前で


「バシッ」


と、音がした。

笑真は立ち止まって、動けずにいた。

その男の声は


「お~い!人が歩いてるんだから気を

付けろよ!」


「すみません」


「気を付けます!」


「じゃあ、投げるぞ~」


「は~い」


「ありがとうございます!」


その男と子供達の、やり取りが聞こえた。

そして、その男が


「君、大丈夫?」


「あ、はい!何だか助けて頂いた見たいで

すみません」


「いや、ボールがまともに、当たりそう

だったから焦ったよ!」


「ごめんなさい、私が堤防なんて歩くから

迷惑掛けてしまって」


「何、言ってんだよ!ここは、みんなの道

なんだから、自由に歩いていいんだよ」


優しく言った男の声も、やはり優しかった。

笑真は


「ありがとう」


と、言って微笑みたかったが、自分が

微笑んで居るのか、どうかも分からずに

固まってしまった。

そんな笑真を見て


「君、名前は?」


「私は高梨笑真です」


「俺、青柳達矢14才、よろしくな」


「私も14才です」


「じゃあ、同じ年なんだ?」


「そうですね」


そう言うと、達矢は


「君、見えないの?」


「はい、産まれてからずっと、見え無い

です」


「そうなんだ」


暫く間が空くと、笑真は達矢の顔が

見え無いだけに、不安になる。

すると達矢が口を開いた。


「ねぇ、俺達友達になろうよ!」


「え?友達ですか?私には目の見える

友達なんて居ないから……」


「じゃあ、俺が第1号だよ!家迄送るよ」


「ありがとう」


「学校は?」


「盲学校に通ってます」


「えっ!じゃあ、うちの学校の近くの

〇〇盲学校?」


「そうです」


「そっか~じゃあ、明日から送り迎え

俺にさせてよ!」


「そんなのは駄目です」


「どうして?」


「あなたも学校が有るのに、迷惑掛けます」


「う~ん、えまちゃん、えまちゃんは

どんな字を書くの?」


「笑うに真実の真です」


「いい名前だなぁ~」


「そうですか?でも私、笑え無いんですよ

自分が笑ってるか、どうか分からないから」


「そんなに深く考えずに、心で笑ってみたら?」


「心ですか?」


「そう!楽しいとか嬉しい時に、まず

心で笑って見るんだよ!そうしたら自然と

顔に出るかも!」


「そ、そうですね、ありがとうございます

優しい人ですね、青柳さんは」


テレる達矢は


「笑真ちゃん、俺の事は、たつーとか

たっちゃんでいいから」


「フフフ、じゃあ、達矢さんで」


まぁいいかと、受け入れる達矢。


「私、遅いでしょう?もう大丈夫ですから」


と、達矢を気遣う笑真。、



「い~や!俺は送ると決めたんだから」


「そこまで、どうして?」


ポリポリと鼻の頭を掻きながら達矢も

考えた。


(俺、こんな感情を初めて感じた!

俺は、笑真ちゃんを守る!)


「う~ん、一目惚れかな?」


思わず杖を落とす笑真。

慌てて拾い挙げて達矢は、笑真に渡した。

笑真に杖を渡すと、笑真は真っ赤な顔で

うつむいていた。


「私が、私が目が見え無いから、からかって

るんですね」


少し怒った様な笑真に


「からかってなんか無いよ!目が見えようと

見え無くても、俺には関係無い!遠慮がちな

笑真ちゃんをもっと、前に出してあげたいん

だよ!」


「そんな、私が出来る事は、有りませんよ」


「い~や、きっと有る筈だ、一緒に

見付けよう」


笑真は達矢の言葉が、本当に嬉しかった。


「達矢さん、ありがとうございます」


笑真は心で、笑って見た。

笑真の様子を見た達矢は


「笑真ちゃん?今心で笑った?」


「え?どうして分かるんですか?」


「いや、笑真ちゃんを見て、何と無く

感じたよ」


「凄い!達矢さんは凄い人ですね」


「テレるよ~」


そして二人は、又、歩き始めた。

笑真の家に着くと


「ここです、私の家は」


「そうなんだ、大きな家だな!」


「そんな事って言っても、私には分からないから」


「笑真ちゃん、携帯は操作出来るの?」


「はい、印を付けて貰ってますし

ラインは音声に変換出来る様にして

ますから」


「 じゃあ、連絡先を交換しよう!」


そう言って、二人は連絡先を交換した。


「笑真ちゃん、毎日何時に、家を出るの?」


「8時に出ます」


「分かった!明日迎えに来るからな、じゃあな!」


「はい、じゃあね」


そう言って達矢は帰って行った。

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