AI小咄(AI不使用)
高城 拓
かわいいイラストを描いてくんねぇか
頃は旻究のころと言いやすから、まぁ2130年ごろのことでございましょう。
札幌は北区の長屋に拓三というケチな若い衆が住んでおりやした。
若い衆と言ってもそりゃあ今の感覚での話で、第3次日中戦争後のことでございますから、ガキと爺ィが放射能でくたばった世の中で生きていけるのなんざぁ、40もいいほど過ぎたやつに決まってます。
なにしろ戦後の混乱期でございますから、大方のことはやりたい放題、あっちこっちに闇市蚤の市が立ちやして、公営市場よりよほど人気がありやした。
拓三もケチな商売しながら、どうにかこうにか生きておったそうでございます。
そうしたある日のことでございます。
拓三は長屋のご隠居呼び出されやした。
「菅井一曹、入ります」
「おお拓ちゃん、お上がんなよ」
「拓ちゃんはよしてください、藤原陸将」
「そんなこといったってねぇ、お互いもう自衛官じゃないんだし。戦争は終わったんだよ? いいからそういうかたっ苦しいのこそやめておくんなよ」
なんて言いながらご隠居、煙草をキセルに詰めてちょいと一服。
「ところでねぇ、拓ちゃん。おまえさん、所帯は持たねぇのかい」
「いやぁ、自分はそういうのからきしで。それに今時健康な女性は全員長野のシェルターでしょう」
「そりゃまぁそうなんだがね。お上のほうからお達しがあってね」
「はぁ」
「元自の若ぇ
「それで自分に。いやしかし陸将もご存じでしょう。自分は三次元は」
「ねぇ、こんないい女に言い寄られて毎回振るたぁふてえ野郎だよ」
拓三、これには激しくむせてしまいます。
「まぁそれはそれとしてだ。ちょうど一台、アンタと相性ピッタリのAIが真駒内の駐屯地で保管されててね、あんたにあてがってやろうってんだ。どうだい、悪い話じゃないだろう」
それでそういう話になったそうでございます。
そんなわけで拓三の家に最新ガイノイドボディのAIがやってまいりました。
話してみるとこのAI、拓三が着こんでいた装甲機動服の戦術補助AIでして、気が合うどころか蛤みたいなもんでした。ボディも最新だけあってまぁ二次元趣味の拓三にはもったいないほどのもの。
拓三はこのAIにおみよと名づけ、それはもう周囲がうらやみ夜ごと襲撃するほど仲睦まじく過ごしたそうでございます。
しばらく経って拓三の長屋の周りが襲撃者が捨ててったサイボーグ部品で埋もれ、町でガイノイドを連れた帰還兵が珍しくなくなったころ。
「旦那様、何をしてらっしゃるんですか」
「いやぁ闇市で令和のころのノートPCとSNSのログを見つけてね」
と拓三、百年も前のノートPCの画面を見てニヤニヤしております。
「いやだわ旦那さま。あの日旦那様は私に黒髪陰キャメガネバカでかおっぱい限界オタクダークエルフがいいなぁ、でっけぇおっぱいに埋もれてしにてぇなぁっておっしゃったのに、そんなヌルテカ透けセーラーの乳デカギャルJKが良いなんて」
「いやいや浮気しようってんじゃないよ。ただ俺たち昔っから変わんねぇなと」
「それになんです、この絵。机の脚が太ももにめり込んでるわ、背景の机なんかはゆがんでるわ、ちょっとかわいいからってなんですか、さんざんじゃありませんの。こんなのに一時期ニンゲンの絵が駆逐されたなんて、皆さん目がおかしかったんじゃありませんの」
「やだなぁ、おこっちゃったよ」
「当然です。言ってくださればこの可変ボディの性能の限界値を見せつけられるといいますのに。それに当時のAIなんて、私の使ってる処理チップの5万分の1にも満たない能力しかないじゃないですか」
「あらそっち」
「どうせその画像のALTかメタタグにプロンプト埋め込んであるんでしょう。それをお渡しくださいませ。もっとかわいく仕上げてみせますとも」
「そうかい、それじゃあ一丁、かわいいやつを頼むよ」
これには拓三、大いに興味が湧きまして、どうにかこうにかプロンプトを探し出しておみよに渡しました。
さてどうするかとワクワクして待っておりますと、おみよしばらく考えて、やおら窓際に座ります。
「おいおいどうしたんだい。そのプロンプトを実行するんじゃあないのかい」
おみよ、にっこり微笑んでこう答えます。
「ええ、ですから実行しております」
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