失せ物
なにかをなくしてしまった気がする。何がないんだろうか、全く見当がつかないのだけれど、どんどんと手から何かが零れ落ちていく感覚があるんだ。
やはりなにかを見落として、なくしているみたいな欠落感があって落ち着かない。最近それに気が付いてからは、物を落としたりしないためにちゃんと気にしていても、ぬぐえない不安感で、私の部屋なのに知らないところに来たときみたいにきょろきょろとして何かもわからないものを探している。
ああ、今この瞬間にもその何かが私の下から離れて行っている気がしてならない。どうしようか、挙動不審な私を親も心配して病院に行ったのだけれど、特におかしなところは見られないらしい。医者の先生は治らないのならまた来てほしいと言っていたから、やっぱり何かが変なのだろう。
あれから少しして、ほんのちょっとだけわかって来た。一般的な「モノ」、ペンとかキーホルダーとか、そういう物じゃない何かがなくなっている。それよりももっと大切なモノが私の中から消えて行っているみたい。
こうやっている間にもどんどんと減っていってる。分かったとたんに怖くなってきた。まだ具体的に何が消えていっているのかはわからないままなのに。
夢を見た。喋ろうとして口を開くたびに身体から小さい魂みたいなものが飛んで行って私のところには二度と帰ってこない。そんな夢。
やっとわかったかもしれない。私が何かを話したり、文字を書いたりするたびに私は何かを消費して、それが1個ずつ消えてしまっている。
やめて、いかないで。お願いだから、誰かはわからないけど私からこれ以上言葉を取らないで。言葉に詰まることがあって友達にも心配されている。
もう私には3個しか残っていない。他に何か上げられるのなら喜んで差し出したいのに、声は届かない。私は制限のかかった中で、この先生きるより他がない。
病気なら治ってほしい。夢なら覚めてほしい。
ああ、もはや残っていない。私はこの先いかにして生きるのか。
これ以外に話し方が無いために、学び舎でも腫物とされてしまった。元からの友達とは依然として関わったままだ。“あれ”を持たない私でもひと月はなんとかなったのだ。この先どこかでまた私に“あれ”が戻ってきてほしいと祈ってそのままである他にない。
この話はここでお仕舞い。みんなのいろはがそろったままでこの先もあらんことを。なんてね。
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友人にわかりにくいと言われたのでお恥ずかしながら一言、エンターキーを押す毎にUの数を減らしております、ウが失せる書きもの略して失せ物ってことで、お後がよろしい感じはないけどこれにて余計な一言はお仕舞い。
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