第14話 涙
えぇぇぇええええっと、これはどうすればいいんだろう。二人にじぃっと見られている。
「あの、本当に私は大丈夫だよ? 泣いてもいないし、今は楽しいから」
二人を説得しようとするも、納得してくれない。ずっと、私を見て来るよぉ、誰か助けて。
「…………まぁ、今言ったところで何も変わらないな」
静稀がやっと引き下がってくれた。でも、異鏡君はまだ納得していないみたい。
私の目を見続けて来る。気まずい、気まずいよ。
『異鏡さん、今そのようにしていても現状は変わりませんよ。美波さんがお困りです』
『むぅ…………』
あ、百目さんが説得してくれたらふてくされながらも引いてくれた。
良かったけど、なんか、ごめんなさい。
「…………ふふっ、ありがとう異鏡君。心配してくれて。その気持ちだけでも、私はすごくうれしいよ」
そういえば、私。こんなに心配されたことあったっけかなぁ。
家族からは風邪を引いても放置されていたし、静稀がいない時はずっと一人だった。
静稀以外の人に、まさかここまで心配されるなんて思ってもいなかったから、本当にうれしい。
『あ、泣いてる』
「それを言わない方が、かっこいい男への第一歩だぞ異鏡」
『え、そうなの!? わかった!』
え、泣いてる? 私が?
あ、目から何かが流れてる。これって、涙? え、私、泣いてるの? なんで、なんで私は今、泣いているんだろう。
家族から無視されても、親戚から冷たい目で見られても、涙なんて出なかったのに。
兄に罵倒されても、私は泣かなかったのに。なのに、なんで今、涙が出て、止まらないんだろう。
「我慢しなくていい、泣きたいのなら泣け」
『それも大人への一歩?』
「そうだぞ。泣いている人を見たら、無理やり泣き止ませるんじゃなくて、優しく声をかけてあげるんだ」
『わかった!!』
いや、泣いている人の前でそんな会話しないでよ……。なんとなく気まずいじゃん。
『美波ちゃんはすごく、すごーく頑張ったよ!! だから、今は思いっきり泣いていいんだよ!!』
異鏡君が私を抱きしめて、背中をさすってくれる。静稀はやれやれと肩をすくめながらも、私の頭を撫でてくれた。
もう、優しくしないで。これじゃ、涙が止まらないじゃないか――…………
※
「落ち着いたか?」
「うん、ありがとう」
やっと涙は止まったけど、まだ目がひりひりする。異鏡君の鏡で顔を覗いてみると……うわぁ、目元が真っ赤になってるよぉ。
これ、学校までに治ってくれるかなぁ。
「…………異鏡君、私はもう大丈夫だよ?」
泣き止んだのに、異鏡君がまだ私にバックハグをしてくる。肩口に頭があるから撫でてあげると、ぐりぐりと押し付けてきた。地味に痛いよぉ。
『本当に、大丈夫?』
「うん、大丈夫だよ」
あ、いつの間にか他の七不思議さん達も階段の下や上で私達を心配そうに見てる。
みんなに大丈夫だよと言う意味も込めて手を振ると、安堵の息を吐いて笑みを浮かべてくれた。
そんなに心配させてしまっていたんだ。申し訳ないな。
『ねぇ、美波ちゃん』
「なに?」
『美波ちゃんを泣かせているのって、美波ちゃんの家族?』
「え?」
泣かせてるのが家族かって、唐突だな。
えぇと。これは、家族のせいになるのかなぁ。間接的にはそうなる…………かな。
「た、ぶん。家族のせいになる……の、かな」
『家族に虐められてるの?』
「いじめというか……。私の家族には、私の居場所がないの。母親にとっての家族は兄だけ、兄にとっての家族も母親だけ。二人の間に、私はいないんだよ」
『へぇ……。なら、家族が居なかったら、美波ちゃんは幸せ?』
「え、いなかったら?」
『うん。家族が居なかったら、美波ちゃんは泣かない? ずっと笑っていられる?』
そんなこと、聞かれても。
「えっと、それに頷いたとして、なにかあるの?」
『うん! 君をずっと、ここに居るように、私ならできるよ!』
・・・・・・・・・・・・・。
「「ん!?」」
静稀と驚きの声が重なっちゃった。
いや、でもこれは驚くでしょうよ!! どういう事!?
ここにずっといるって事は、この世界の住人になるってこと?
あぁ、でも。そうなれば、この楽しい空間にずっといる事が出来るのか。
異鏡君と笑ったり、他の七不思議さん達と一緒に遊んだり。他にも、色々。
あの、私の居場所がない所に無理やり帰らなくても、無理に周りに合わせなくてもいいだよね、ここなら。
「美波、今すぐ決めない方がいい。必ず後悔する」
「っ、静稀……」
静稀が私の手を握り、目を合わせそう言ってきた。
あ、危なかった。思わず頷くところだったよ。
「異鏡も、今すぐ決めろと言う話ではないだろ?」
『うん!! 今すぐじゃなくてもいいよ!! ただ、美波ちゃんの居場所は一つじゃない。それだけはわかってほしいかな!』
無邪気な笑顔。やっぱり、私はこの世界にずっといたい。異鏡君や静稀、他の七不思議さん達と、ずっと一緒に居たい。
家に、帰りたくない。
『…………ねぇ、美波ちゃん。美波ちゃんは、家族とお話って、した?』
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