ドS執事と陰キャメイド

ネコ山

ドS執事と陰キャメイドは本日戦闘中!!

この台本の()内にナイフ、銃声、針、日本刀と

武器名が記載されている箇所はSEです。


SEが無くても掛け声でお楽しみ頂けましたら幸いです。



--------------------ここからお話の始まりです。--------------------


ー午前十時、屋敷内玄関


ルイス:行ってらっしゃいませ、旦那様


ユキノ:行ってらっしゃいませ、奥様


ルイス:(M)隣で奥様の見送りをするこのメイドはユキノ、先月配属されたジャパニーズ陰キャ腐女子です

メイドにしては作法もなっておりません、敬語も怪しいですし・・・

唯一の特技といえば掃除くらいでしょうか


ルイス:ユキノを採用した奥様は何を考えておられるのか・・・

まったく、意味がわかりません


ルイス:(咳払い)・・・ちなみに私、ただの執事ではございませんので

日ノ本一、今や世界のトイカンパニー、ロゴ&(アンド)トイズ株式会社、代表取締役の旦那様の在宅時はボディガードを務めております



ルイス:ユキノ、どうすれば高級茶葉からこんなに不味い紅茶が?


ユキノ:すみません、ルイスさん・・・


ルイス:まったく、紅茶もロクに淹れられないとは・・・

主(あるじ)が執事もメイドも不要となったら私たちの仕事はなくなります

もし、そうなったらどう責任とってくれますか?ユキノさん


ユキノ:え?


ユキノ:(M)わぁー・・・ルイスさん、今日もお顔が近いです、はい、本当に

ドイツ人のハーフと聞いておりますが・・・とてもよく似ているのです、あの御方に・・・

乙女ゲーム、イケメン武士クロニクルに出てくる我が愛しの「黒船よりの使者ペリー」様!!

ドS発言とかもう!もう!もう!

まさに!実写版「黒船よりの使者ペリー」様!!!


ルイス:ユキノ、私の顔に何かついてますか?


ユキノ:いえ!何も!!!


ルイス:それにしてもその瓶底メガネ、コンタクトレンズに変えるという選択肢は無いのですか?

メガネフレームが欠けてます、しかも貴方の瓶底メガネは白ブチなんですから目立ちますよ


ユキノ:え?私の本体このメガネですので無理です


ルイス:無理です・・・じゃ、ありません

いいですか?私も貴方も世界企業の代表取締役の元で働いているのですよ、

身なりを整えるのも仕事のひとつです


ユキノ:はあ・・・


ルイス:ツッコミ忘れてましたが、「私の本体このメガネです」て貴方・・・人間辞めたんですか?


ユキノ:人間は辞めてますが、腐女子は辞めてませんよ!!


ルイス:そこで元気な返事はいらないのですけど


ユキノ:ルイスさん!日本のオタク文化はすごいのです!!漫画、アニメ、ゲーム、ヴイチューバー

・・・をはじめとする私のいる三次元にはありえない魅力的なアレやそれやがもうたくさんありましてね~


ルイス:(ありまして辺りで話に割り込む)ユキノ、止まってください


ユキノ:へ?


ルイス:いま私が貴方に何を言ったか覚えていますか?


ユキノ:瓶底メガネやめてと


ルイス:内容をはしょりすぎです

なぜ瓶底メガネをやめるように言ったか覚えていますか?


ユキノ:えーと・・・見るからに腐女子とバレるからですか?


ルイス:はぁ(ため息)・・・それは偏見です、瓶底メガネ愛用者と腐女子の皆さまに謝りなさい


ユキノ:すみません


ルイス:素直なのはユキノの良いところです


ユキノ:え?


ルイス:あと、掃除だけは使用人の中でも一番丁寧で早いです


ユキノ:ルイスさん


ルイス:私も貴方から見習うところはありますので


ユキノ:ルイスさんが私と違って素直ではないというところですか?


ルイス:何気なく私の悪口言いましたね、まあ気にしませんが

さて、お見送りは終わりました

ユキノは奥様のパウダールームの清掃から始めてください

私は旦那様の書斎の整理がありますので、これで失礼致します


ユキノ:はい、わかりました!



ー旦那様の書斎



ルイス:(M)またですか・・・不自然なくらいここだけキレイなんですよね

旦那様の裏の顔、武器の仕入れに関するデータの閲覧履歴、旦那様のスケジュールなど

ロゴ&トイズ社は旦那様の表の顔・・・旦那様は表でも裏でもお命を狙われるこの国のVIPです

今までこの屋敷に使用人として何人も殺し屋が来ましたが、来る度に私が排除しておりました

最近は使用人を雇う際、面接は奥様がされていますので殺し屋などという輩は見なくなりましたが・・・


ルイス:久しぶりに臭いますね、旦那様を狙う輩の存在が



ー奥様のパウダールーム



ユキノ:(M)よいしょっと、これでキレイになったー

ルイスさん、そんなに私の瓶底メガネ嫌いなのかな・・・

というか私のこと嫌いなのかな・・・

ちょっと待って私!目的を忘れたの?

私はメイドとしてここへ来たんじゃないのよ・・・

私は、「殺し屋」よ

でもまさか標的の懐にあんなに素敵な執事がいるなんて!!予想外もいいところよ!

ドイツハーフ美形ドSパーフェクト執事だなんて・・・乙女ゲームの中でしかいないと思ってたのに!!

ルイスさん!なんて罪深いお方なの?!

すーっ、はーっ(呼吸を整える)、落ち着くのよ私、


ユキノ:私はジャパニーズ陰キャ腐女子の瓶底メガネメイドじゃない「殺し屋」よ!



ー旦那様の書斎



ルイス:(M)ん?これは・・・白い金属片・・・それにこの小さなネジは時計?いえ、メガネのネジですね

白い金属片にメガネのネジ、ユキノ??

旦那様の書斎、寝室は奥様以外では私しか出入りしないのですが

・・・怪しいとは思っていましたが、あんなにぬけている人間が旦那様のお命を狙うなど・・・、これこそ偏見ですね、ユキノに直接聞きましょう



ー書斎の扉が開く



ルイス:・・・今から貴方の元へ向かおうと思っていましたが手間が省けました

ただのジャパニーズ陰キャ腐女子、と思っていたかったです


ルイス:ユキノ


ユキノ:ルイスさん、私・・・


ルイス:同じ釜の飯を食った仲という言葉もありますが、

貴方が私と旦那様の敵であるとわかった以上・・・容赦致しません


ールイス、銃をジャケット内から取り出す


ユキノ:(M)え!やば!ちょ、ちょっとー!


ルイス:ここへ来た以上、覚悟は出来ていますよね


ユキノ:は、はいぃ!!


ルイス:拍子抜けする返事をしたところで許しませんよ、ユキノ


ユキノ:(M)ドイツハーフ美形ドSパーフェクト執事のジャケットから銃!!やばすぎ!!ルイスさんはどこまで私の理想を実現してくるの?!?!


ルイス:頬を赤らめたとて無駄ですよ

旦那様のお命を狙う輩は老若男女問わず私の排除対象です


ユキノ:ルイスさん、私・・・


ルイス:排除します


ー銃声が響く


ユキノ:ほえ!

(M)あんな単発銃なのにリロード早い!!


ルイス:ユキノ、旦那様のお命を狙ったところで私に排除されるとわかっていましたよね?(銃声)

貴方の依頼主がどんな輩か今はどうでもいいですが(銃声)


ユキノ:ルイスさん!顔以外狙います!(ナイフを投げる)


ルイス:スカートをまくり上げるなんて品のないメイドです


ユキノ:くっ!!(ナイフを投げる)


ルイス:内ももとニーハイソックスにナイフと(銃声)


ユキノ:ずいぶん余裕なんですね、ルイスさん(ナイフを振り回す)


ルイス:左内ももにナイフ四本、ニーハイソックスに三本(銃声)


ユキノ:目潰ししたいけど、顔は狙えないよぉぉぉ!!(ナイフを投げる)


ルイス:私情を挟む余裕があるとは(銃声)私はずいぶんとなめられているようで、

それにしてもよく私の銃弾に当たりませんね(銃声)


ユキノ:き、きっとそれは!!ルイスさんが「黒船よりの使者ペリー」様に激似だからですっ!!(ナイフを投げる)

本当に似過ぎてて罪深いです!(ナイフを投げる)

本当にギルティ!!(ナイフを投げる)


ルイス:さっきから(銃声)、何を仰っているのか全く意味が分かりませんよユキノ(銃声)


ユキノ:さっきから罪を重ね過ぎですっ!!(ナイフを投げる)

その素敵なお声で私を攻めて!!

本当にギルティですっ!!(ナイフを振り回す)


ルイス:(銃声)貴方さっきから私が何発も撃ってるのにカスリもしないなんて・・・

間抜けなフリして相当な手練ですね(銃声)


ユキノ:て、手練だなんて・・・そんなぁ(ナイフを投げる)


ーカーテンをユキノへ向かって投げる


ルイス:まずはそのナイフを投げる手が動かないようにしますよ


ー投げられたカーテンが切り裂かれる


ユキノ:やっぱり飛び道具だけじゃ全然ダメですね~

(強そうな声)「ヘルハウンドバトラー」の異名を持つ貴方になら本気出せる!!!


ルイス:本気?ジャパニーズ陰キャ腐女子としての本気ですか?(銃声)


ユキノ:いいえ!「殺し屋」としての本気です!!(ナイフを取り出す)


ルイス:今度はメイド服の胸元からナイフを六本、なかなか素晴らしいボディラインをしているなと普段から思っておりましたが・・・


ユキノ:えっ?ルイスさん私のこと見ていらしたの?!


ルイス:(銃声)そりゃあ見ますよ、私も一男性ですし


ユキノ:はわわわわわ(ナイフを振り回す)


ルイス:ユキノ、貴方のナイフさばきはなかなかのものですね、ですが・・・(銃声)


ユキノ:あっ!!(ナイフが弾かれる)


ルイス:貴方同様、投げられたナイフの軌道も素直です


ユキノ:私が、す、素直?・・・(銃声)きゃ!!


ルイス:うなじから何か出そうとしても無駄ですよ


ユキノ:・・・ルイスさん、私


ルイス:掃除以外はさっぱりですが、貴方の仕事へ真摯に向かう姿勢に私は敬意を表します


ユキノ:掃除以外はさっぱりでいいんですっ!!私は、「殺し屋」ですっ!


ルイス:貴方もうナイフ投げきったのでは?諦めも肝心ですよ、ユキノ


ユキノ:ルイスさんが尊い推しにそっくりだからって!

私の「殺し屋」としての仕事を邪魔するのなら倒さなくちゃいけないのです!!(針を出す)


ルイス:今度は脇から針ですか、取り出すときに丁寧に胸も主張して・・・


ユキノ:ルイスさんって、何気なくえっちいですね


ルイス:どういたしまして


ユキノ:褒めてないですっ!(針を突きだす)


ルイス:目の前で起きていることを口にしただけです、失礼な(銃声)


ユキノ:っ!!(針が弾かれる)・・・まだありますよ!(刀を出す)


ルイス:ふむ・・・素晴らしいボディラインにキレイな姿勢を保てるのは

背中に日本刀を常備していたからなのですね


ユキノ:キレイな姿勢って!また私を褒めて!!ルイスさん意地悪ですっ!(日本刀を振り下ろす)


ルイス:「私、意地悪というか性悪ですが何か問題でも?」


ユキノ:!!!(動きが止まる)


ルイス:ユキノ、どうしました?


ユキノ:はわわわわ・・・


ルイス:ユキノ?


ユキノ:さっきのセリフ・・・


ルイス:「私、意地悪というか性悪ですが何か問題でも?」と言いましたが


-ユキノが激しく動揺しだす


ユキノ:イケメン武士クロニクルに出てくる我が愛しの「黒船よりの使者ペリー」様のキャラセリフ!!


ルイス:はい?


ユキノ:罪深過ぎですーーー!!ルイスさん!!!(日本刀を振り回す)


ルイス:言ってることも日本刀振り回すとこもめちゃくちゃですよ、貴方


ユキノ:私を尊死(とうとし)させるんですねっ!そうなんですね!


ルイス:尊死がご所望ですか?ユキノ(銃声)


ユキノ:え?



ー日本刀が弾かれる



ルイス:(低めの声)ユキノ、貴方、かわいすぎですよ


ユキノ:・・・え?え?え???


ルイス:私としたことが、ユキノが殺し屋だと気づくまで時間が掛かってしまいました

惚れた弱みというものでしょうか、三十一年間生きてきて

こんなに心がかき乱されることはありませんでした


ユキノ:ルイスさん・・・


ルイス:ただのジャパニーズオタク陰キャ腐女子かと思っておりましたが、

素直ですし仕事への姿勢も良し、それに素晴らしいボディラインをしていますし


ユキノ:その、素晴らしいボディラインて言葉、その前の褒め言葉を一気に殺しますね・・・


ルイス:その瓶底メガネ!!


ユキノ:ひぃぃ!!


ルイス:瓶底メガネをやめてコンタクトレンズに・・・あと「殺し屋」もやめましょう


ユキノ:なんかめちゃくちゃなこと言い出したなあ


ルイス:そうです、「殺し屋」なんてやめて、ユキノも私と共に

この屋敷で旦那様と奥様のボディガードをしましょう


ユキノ:ルイスさん??いま貴方ものすっごくめちゃくちゃなこと言ってますよ?


ルイス:今後ユキノへ殺しを依頼した人間が報復行為をしに来ても私が返り討ちに致しますので、ご安心を


ユキノ:ルイスさんが私のお話聞いてくれないよー


ルイス:この屋敷の使用人のトップは私ですので、私が奥様へ話を通します


ユキノ:おーい、お話聞いてくださーい


ルイス:これで、この屋敷のガードも固くなってユキノは私の手元にいて良いことしかありませんね、はい


ユキノ:え??


ルイス:・・・(低めの声で)異論は一切認めませんよ、ユキノ

貴方は私に負けたのですから


ユキノ:いきなりのドS発言んん!!心臓に悪いですー!!


ルイス:敗者には仕置が必要ですね


ユキノ:し、仕置?


ーユキノを抱き寄せる


ユキノ:ちょ、ルイスさん?!


ルイス:この華奢な身体に何本ナイフ隠していたのですか?


ユキノ:ルイスさん・・・近い、顔が近いですっ!!


ルイス:瓶底メガネ、邪魔ですね


ユキノ:メガネは私の本体なんですって・・・


ルイス:(低めの声で)まだそんなこと言うんですか?


ールイス、ユキノの瓶底メガネを外そうとする


ルイス:っ!!


ユキノ:このメガネ、私以外の方が触ると針が飛ぶんです~

飛び出す針を間近で避けるなんて、さすがルイスさん!


ルイス:・・・貴方にはうんとキツい仕置が必要なようですね


ユキノ:目が笑ってないです!怖い!怖いです!!


ルイス:怖い?ユキノ、何を仰っているのか全くわかりません


ユキノ:このドイツハーフ美形ドSパーフェクト執事!!


ルイス:褒め言葉ですね、ありがたく頂戴致します


ユキノ:もう!デレっデレじゃないですかーーー!!


ルイス:デレはお好みでないと?


ユキノ:いえ、そんなことは全くないです、はい大好物です





ユキノ:(M)こうして私はこのドイツハーフ美形ドSデレっデレパーフェクト執事に言いくるめられ、

この屋敷に使用人としてそのまま働くこととなりました

私の「殺し屋」時代の依頼主が何度か報復行為にきたみたいですが、

ルイスさんが有言実行で全て返り討ちにしたそうです





ルイス:ユキノが今日こそ美味しい紅茶が淹れられると私、信じてますよ


ユキノ:期待しないでください!

あ、ちょっと紅茶淹れるだけなのに!

ルイスさん!近いです、顔が近過ぎですーーー!!


ルイス:(低めの声で)「私、意地悪というか性悪ですが何か問題でも?」


-完-

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る