第5話 黎明によろしく


 

 「あれはあれで、

 意味がある。」

 携帯の向こう側の、いつもの女にそう言った。

 

 何かが、上手く行かず困り果てる時がある。

 何かをする時は、大抵の事は思う様にならない事が多い。

 社会の当然のルールの様なそれは、

 この世界を埋め尽くす様に、色々な所に張り巡らされた、

 蜘蛛の糸、のようなもの。



 

 蜘蛛の糸、その中から

 黎明の糸を見つければいい。

 

 

 電話の向こうから、女はまたブツブツと言っている。

 「お前があの本から学んだ事は、

 その程度のものか。」

 

 そう言って、携帯をデスクの上へと放り投げた。

 

 

 夜明けが来ないなら、自分が会いに行けば良い。

 もし俺が黎明に会えたら、言っておこう。

 

 

 「お前に会いたがってる奴が沢山いる。」

 

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