第2話 アンダーグルーヴ

 

 「それは無理、届けなきゃならない。

 例え、見てくれる人がいなくなっても、」

 

 (それは願望、傲慢な願望だ、お前の。)

 携帯の向こうの、男の言葉に、

 私は返す言葉を失った。

 

 (他の方法を考えろ。)

 男の言葉に苛立った。

 

 「考えてるよ。

 でも、何をどうすれば良いか、」

 私の言葉を待っていたとばかりに、

 私の言葉を鋭く切り裂き、

 (考える頭があるなら、無理ではない。)

 と、男は言った。

 

 励ましているのか、突き放しているのか分からない、

 その言葉に、また苛立った。

 

 「こんな経験の無い私が書いたって、常識的に、考えたら、」

 でも、諦めない、諦めたくない。

 こんな想いを、抱える人を出さない為に、今頑張ってるんだ、

 そう自分に問いて、言葉を出来る限り飲み込んだ筈だった。

 

 (常識。

 そんなもの知らない。)

 わかってる、そんな事。

 

 「また、振り切って、開き直って、

 バカにされてもいいから、白い目で見られても、

 足掻いて抗って、やってみるよ。

 どうせ、失うものなんて何も無い。」

 そう言って、私は自分の指に爪を立てた。

 

 (思わせればいい。

 そういう世界だ。)

 

 一方的に切られた電話。

 世界、か。


 私の世界は、見向きも、目覚めてもくれない。

 

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