第12話 城の外へ
「それはいいとして、小春はいつ自分の部屋に帰るんだ?もう、かなり遅い時間だけど」
「えっ。何言っているんですか。ここ私の部屋ですけど?」
てっきりここが俺の部屋だと思っていたが、俺が間違えていたのか。
ん?でもここが俺の部屋って言われたような。
「悪い。小春の部屋だったのか。なら、俺の部屋は何処かわかるか?」
「ここですよ」
小春は即答する。
ここが俺と小春の部屋ってことは……。
「うん? えっと。まさか、俺たち、共同の部屋で過ごすことになるのか?」
「そうですよ。元々1人しか呼ぶ予定なかったみたいなので部屋がなかったらしいです」
「まじか」
部屋がないなら仕方がないが、男女で同じ部屋ってのは本当にいいのか?
「嫌でしたか?」
そう聞いてくる小春。
小春は別に気にしていないみたいだな。
「嫌というか、男女で一つの部屋ってちょっとなって」
「そ、そうですよね」
小春も慌て出す。
でも、よく考えてみたらいつでも小春を見守れるってことだ。寧ろ、ありがたいのかな。
「まあ、小春が良ければ俺はいいよ」
俺はそう判断を委ねる。すると小春は
「私は気にしませんよ。先輩ですし」
と返してくる。
なんか傷つく。男として見られていないのか。まあ、後輩に手を出すような人間だと思われていないし、信用されていると思えばいいか。
「なら、一緒の部屋でもいいか」
俺がそう言うと小春は元気よく
「はい!」
と返事をした。
「さて、俺は疲れたしもう寝るよ」
そう言ってベッドに向かう。
「寝るの早いですね」
「今日は流石に疲れた。早めに寝てその疲れをとるよ」
王の前での行動、体験したことのない不慣れな戦闘。疲れない訳がない。それに小春が寝てから少しレベル上げや昼間できないような情報収集がしたい。だから早く寝て仮眠をとって起きたい。
「おやすみ」
と言ってベッドの部屋に入る。部屋に入る直前、
「おやすみなさい」
と挨拶が返ってくる。俺はそのままベッドに横になり眠りについた。
多分、三時間くらい寝た。
俺は起き上がり、小春の寝ているベッドを見る。ぐっすりと寝息を立てて寝ている。
俺と同じでかなり疲れていたみたいだ。音を出さなければ起きることはないだろう。
「さて、行くか」
リビングに置いてある剣と腰袋を持って部屋から出ていく。
色々見て回ったが城から抜け出す道はなかった。裏道なんてないし、壁を乗り越えて外に出ることなんて俺の身体能力じゃできない。
「仕方ないが、正面から出るか」
そう呟いて、昼頃外に出た正門を目指す。
正面突破。どうにか騎士を説得するしかない。
門番以外の騎士に見つかれば部屋に帰ることを促される可能性が高まるため、できるだけ、正門以外では騎士に見つからないように城を抜け出したい。
無事に正門に辿り着くと門番の騎士に話しかけられる。
「こんな時間に何をしている」
俺を見て警戒している。
「ちょっと、外に出たくて」
「なぜ外に出たいんだ。逃げ出す気か?」
下手なことを言うと追い返されるので言葉を選びながら答える。
「いえいえ、そんなつもりはないですよ。俺はこの国を救う為に呼ばれた勇者です。しかしまだ、弱く役に立つことはできない。だから、強くなるためにLevel上げをしたいんです」
この国の為ではないがとりあえずこの理由ならどうにか通してもらえる筈。
そんな俺の予想通り門番は
「そうか。素晴らしい心構えだ。その気持ち大事にしろよ」
と答える。
よし、いける。
そう思って
「なら、見逃してくれますか?」
と聞いてみると
「それは、無理だな。そんな我が国のことを考えてくれている勇者に死んでもらいたくはないからな」
と返される。これは予想外。
無理か。どうしよう。どうすれば抜け出せるんだ。少しでもレベルを上げておきたいのに。
それが落ち込んでいるとそれを見た門番は
「まあ、そんな考え込むな。Level上げくらいならば街の外出なくてもできるからな。夜は少し危ないのだが、しょうがない着いてこい」
と裏庭らしき場所に連れて行かれる。裏庭の隅には階段がありそこに案内される。
「ここは俺たち騎士が時間が空いた時に使う城の地下数階層にわたるダンジョンだ。比較的、弱いが経験値が入りやすいモンスター、一階層ではソイルスライムが大量に湧き、二階層ではヘヴィストーン、三階層ではゴーレムが現れるようになってる。ここでレベル上げをするといい」
と教えてくれる。
無害なモンスターを城の中で育てることで騎士の質を上げれるようにしているのか。これなら、俺でも時間の無駄なくレベル上げができる。
危険が少ないことはなんとなくわかったが念の為に
「スライムって普通はどんな攻撃してくるんですか?」
と聞いておく。
「装備を溶かしたり、人を飲み込もうとしたり、変身したりと様々だよ。ソイルスライムはそんなことできない最弱のスライムだけどね」
「そうなんですか」
なら無我夢中で狩っていればレベルは上がっていくか。
「まあ、ここを使ってくれ。ここなら、モンスターも強くないし、危なくないし、外に出てないから多分怒られることはない」
門番はそう言ってニカっと笑った。かなりいい人だな。そう思って
「ありがとうございます」
とお礼を言う。
「いいよ。あっ、俺がここを教えたことは内緒にしてくれよ。他の奴に文句言われるかもしれないから」
門番はそう言って正門へ戻って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます