第11話 食事
風呂から上がり体を拭いて、服を着る。ただの布の服だが、肌触りがいいことから良質な布であることがわかる。髪を乾かしたいのだが、この世界にそんなものあるのか。
俺は取り敢えず、鏡のある洗面台へ行く。そこにはおもちゃの銃のようなもの、ドライヤーが置いてあった。コードがないためこれも電気で動いているわけではなさそうだ。
俺はドライヤーの電源部分に付いている赤と緑の魔石に触れる。すると、温かい風が出てくる。
赤は火、黄は光、青は水、緑は風ってところか。
髪を乾かした俺は部屋に帰る。扉を開けた俺は
「ただいま」
と部屋に入る。机などがある部屋に小春の姿はない。
「何処だ? 自分の部屋にでも帰ったか?」
俺は取り敢えず、部屋の奥まで入り、剣と腰袋があるかどうか確認した。どちらもちゃんとあった。
これからどうするか。ご飯まであと一時間程ある。TVやゲームがないのでこの部屋で時間を潰すのは難しそうだ。
一人なので、小春と今後の話をして時間を潰さない。
「寝ようかな」
暇すぎるので一時間程寝よう。ご飯の時間になれば小春が起こしに来てくれるだろう。
俺はそう考えて、隣の寝室に向かった。
ベットが膨らんでいる。小春はそこで寝ていた。
「寝てたのか」
俺は小春が寝ているベットに腰を降ろす。ぐっすり気持ちよさそうに寝ている。俺が隣に行っても起きない。かなり疲れていたみたいだ。
「そりゃ、いきなりこんな世界に飛ばされて疲れたよな」
何もわからない状態で一人残して、俺は外に出てしまった。そのせいで苦労をかけた。
「俺は駄目だな」
この世界に来て一人でやろうとしていたけど、小春に頼っていたのかもしれない。
そんな小春が
「先輩」
と寝言を呟く。
先輩か。俺はもっと先輩らしくしないといけない。
俺は小春の頭を軽く撫でる。今の小春は後輩というより妹という感じだ。多分、小春がこの部屋でいつも見せないような姿を見せているからだろう。
「よし」
俺はベッドから立つと小春に布団をかける。その後、城の窓を開けてそこから外に出る。もう一度モンスターを倒しに行く。風呂に入った意味がなくなるが、そんなことはどうでもいい。
「最悪。夜にでもレベル上げできるように城の抜け出すルートを探しておくか」
と城の庭を駆け巡った。
一時間して俺は部屋に戻ってきた。一時間の間、モンスターと戦うことはできず、城から抜け出す道を探すことだけで精一杯だった。そもそも、ここは国王のいる城だ。この国で一番警備が厳重と言ってもいい場所だ。そんな場所に抜け出せる道はないに等しい。正面は勿論見回りの騎士がいる為、そこから夜間の勝手な外出はできない。結局、一時間必死に探して結局見つからなかった。
窓から部屋に入ると、小春は驚いていた。
「ただいま」
「先輩!窓から帰ってくるなんて、どこ行ってたんですか?」
また心配させてしまった。変に答えると更に心配させることになるので
「あー、えっと、城の庭を散歩してた」
と言って誤魔化す。
「本当ですか?」
かなり疑われているようだが、
「ほら、綺麗な庭だったから見て回ろうかなってー」
と言うと、
「そんなに綺麗だったんですか。なら、明日一緒に見てまわりましょうよ」
とユキハが乗り気になってくれたのでなんとか誤魔化すことに成功する。
それにしても明日か。
「明日は忙しいからなー」
それを聞いて小春は肩を落とす。それを見てしまうと無理とは言い切れない。
「時間が空いたときでいいか?」
散歩なんて長い時間ではない。断るのもな。
「はい!いいです!約束ですよ!」
小春はテンションが少しだけ上がっていた。
「さて、そろそろご飯の時間じゃないか?」
「そうですね!」
小春は更に笑顔になる。もう10時間以上何も食べていないからな。そりゃ笑顔になるよな。
「少し準備でもするか」
そう言って準備を始めてすぐにさっきこの部屋まで案内してくれたメイドが来る。そして、俺たちは食堂のような場所に連れて行かれる。
そこにはご飯が並んでいた。メイドによるとバイキング制らしいので適当に食べたいのを選ぶ。並んでいるご飯は卵焼きのように見たことあるような物から何かわからない生き物を焼いた物まで様々だった。
俺は食べれそうなものを選び、小春と夕ご飯を食べ始める。どれも味はそんなに悪くなく、寧ろ美味しかった。
夕ご飯を食べ終えた俺達はそのまま部屋に戻る。正直、長い机に様々な食べ物が並んでいる城での食事会みたいなやつを想像していたので少々驚いた。
部屋に戻ってきた俺は、今日、街に出て武器を貰ったこと、モンスターがいたこと、冒険者と出会ったことなど一人で行動していた時の話をした。心配されるのが嫌で千夏の話はしなかったが。
「やるべきことをすませたら今度、案内するから、楽しみにしとけよ」
俺がそう言うと
「はい!」
小春は嬉しそうに返事をした。
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