第7話 魔石

ラージホーンは斬られた瞬間、汚い鳴き声を上げ、突進の勢いを止められず何歩か動いたが、体を斬られたことで深い傷を負い、足に力が入らなくなったのか倒れ込む。


両手で剣を握ったことで深く剣が入ったみたいだ。


「これでよかったのか?」


なんとなく避けて切り裂いてみたが倒れたラージホーンが動いていたので上手くいったのか実感がわかない。


もう一発やらなければならないのか?そう思ってラージホーンに近づく。


俺がラージホーンに剣を突き刺そうとすると、


「よくやったな」


とドゼルの声が聞こえて止める。俺は振り返りドゼルの方を向く。


「あの、このモンスターはこれでいいんですか?」


俺がそう聞くとドゼルはラージホーンを指差す。


「ああ。よく見ろ。もう動いていない。死んでる」


俺が近づき剣を突き刺そうとする間に体力を使い果たしたみたいだ。もう一発入れなければいけないということが頭にあったせいで気づかなかった。


「後は魔石を取り出すだけだ。そうすれば自然とそいつは消える」


魔石か。魔石の有無がモンスターと動物の違い。って門番のおじさんが言ってた。


「魔石はモンスターの中心部にある。それを抉り取るんだ」


俺は制服が汚れるのを防ぐために腕捲りをしてからしゃがんでラージホーンを斬ったところから手を突っ込んだ。


モンスターとはいえ死体だ。気持ち悪い。


体の中に臓器はない。モンスターの内部には水とは違う液体のようなものの感触しかなかった。そんな中に手を深く突っ込んで探す。すると、硬いものに触れた。たぶん魔石だ。それを取り出すと、ラージホーンは少しずつ消えていった。


ラージホーンが消えたのを見て俺は立つ。


「こいつらの核は魔石だ。魔石を取られれば消える。魔石を取らなくても、魔石の魔力が低ければ、致命傷を与えられたときに回復が追いつかなくなり消える」


魔石によって動いている生物。魔法生物のようなものか。ラージホーンは魔石の魔力が低い雑魚モンスター。だから、俺の攻撃で倒れた訳だ。


ラージホーンは倒れて死んだ訳だから、魔石を取らなくても回復が追いつかなくなって勝手に消えてたんじゃないのか?


「今さっきのラージホーンって、魔石を取らずあのまま放置したらどうなるんですか?」

「魔石だけ残して消える。それだけだ」


やっぱりほっとけば消える。つまり俺は無駄に気色悪いものを触ったってことか?


「先にそれを言ってくださいよ」

「消えるまでの時間が勿体無いだろ」


時間がもったいないか。俺はあんな気持ちの悪いことをするなら時間を無駄にしてもいいよ。魔石をすぐに拾わないで他のモンスター倒した後に拾えばいいし。


「そういうことですか。なら、次からは消えるまで待ちますよ」

「ま、初心者ならそれでもいいか。じゃあ、次行くぞ」


そう言いながらドゼルはまた歩き出した。俺は魔石をポケットにしまいついていく。


歩きながら、


「さっきの動きはすごく良かったけど、何処かで教わったりしてたのか?」


と聞いてくる。見せてもらった通りの戦い方はしていないので、注意されると思ったが、寧ろ褒められた。


「いえ、独学?ですよ」


元の世界でも剣道や空手などを学んでいない。避けて切り裂く。あの動作は間違いではなかったみたいだ。


「独学か。すげーな。お前才能あるかもな」


才能ね...そんなものは無いと思うんだけどな。


「俺には才能なんて無いと思いますよ」


そう言って次のラージホーンの前に立つ。さっきのはまぐれだ。もう一度できるかわからない。だから、今度は勢いに任せて攻撃するのではなく、相手の動きをよく見て慎重に戦う練習をする為に、ドゼルのようにラージホーン目の前に立った。剣を握った俺をラージホーンは警戒している。


「いくぞ」


俺は剣を握り、地面を蹴る。ラージホーンもそれを見て尽かさず走り出す。


俺は剣を強く握り、相手の動きを見る。


どう避け殺すか。


そう考えているとラージホーンは野生の感か殺意を感じると速度を上げる。


俺は一発目の突進を右に軽く跳んで避けると、後ろがガラ空きになったラージホーン目掛けて剣を突き刺そうとするが距離が遠い。俺はラージホーンを追うのをやめて剣を構える。


さっきよりもラージホーンが早かった為、間に合わなかった。さっきは遅かったから問題なかったが、避けるのに無駄が多いのだろう。それをどうにかする必要がある。


ラージホーンはいなくなった俺のことを探してキョロキョロしている。


「追えばよかった」


対象を見失うとあそこまで、隙だらけになるのなら避けたあと追撃するだけで倒せそうだ。


ラージホーンはこちらに気づくとさっきと同じように突進してくる。これで攻撃パターンは対象に突進する以外ないことがわかる。


「なら、避けて倒すのみ」


突進してくるラージホーンの攻撃を先程同様、いや、さっきよりも無駄がないように跳ぶ。


さっきは飛んだ直後、両足で着地して膝をかなり曲げていた。出来るだけ、跳んだ後すぐに動くことを意識して、足をついてから溜めをなくし、一歩を早く。


足をついた瞬間、片足を強く蹴ってラージホーン目掛けて飛びだす。


距離はさっきよりも縮まった。あとは、倒すのみ。


ラージホーンの背後をとった俺は剣を振る。無数の傷がラージホーンにつき、そのまま倒れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る