第12話 女神
配信終了後、私は機材の電源のチェックをした後にガーデンコントローラーに触って、ゴドフリー君の顔アイコンを選択してから会話をするをタップした。
「ゴドフリー君、今大丈夫だった?」
『お、ノドカ。大丈夫だけど、どうしたんだ?』
「うん、ついさっき配信が終わったところだったんだけど、その中で少し気になったところがあったんだ」
『気になったところ?』
「うん……ゴドフリー君の故郷の村ってどうなってるのかなと思って」
その瞬間、のんきそうだったゴドフリー君の声が真剣な物に変わった。
『……あれから帰れてないから、俺はまったくわからないな。俺も気にはなってたんだけど、そもそもここが故郷からどれくらい離れた所なのかもわかってないんだ』
「そうだったんだ……」
『ああ。王都からずっと目隠しをされて馬車に乗せられて来たから、途中の景色もわからないし、時間の感覚も正直あやふやだ。その上、地図も無いからここ自体がどの辺りなのかわかってないしさ』
「道……ねえ、道がわかるなら故郷の様子って見に行こうと思う?」
私の問いかけにゴドフリー君から驚いたような声が返ってくる。
『それはもちろん。でも、何か良い方法があるのか?』
「うん。ちょっと試したい事がある程度だけど、たぶん大丈夫だと思うから、今からそっちに行くね」
『ああ、わかった。わざわざありがとうな』
「ううん、私はゴドフリー君のお手伝いだから」
そう答えてから私はメニュー欄の神庭に出発するを選択した。そして神野和の姿で神庭に来た後、私はそのままゴドフリー君の家へ向かい、その玄関をノックした。
「ゴドフリー君、来たよ」
「ああ、入ってくれ」
「うん」
返事をしてから私がドアを開けて中へと入ると、ゴドフリー君はガーデンコントローラーを膝に載せながらリビングの椅子に座っており、私を見てから片手を上げて微笑んできた。
「よく来てくれたな、ノドカ。配信はどうだった?」
「うん、今日も色々な新神の悩みを聞けたよ。と言っても、話を聞いて私なりの考えを話す程度でしかないんだけどね」
「それでも助かる奴はいるんだし、俺はスゴいと思うぜ? 新神達からすれば、ノドカは本当に女神みたいな感じなんだろうな」
「あはは……そうだと良いんだけどね。それで、私の考えなんだけど、ちょっと神様の力を借りようと思うの」
「神様の……となると、道案内の神様でもいるのか?」
「近いと言えば近い、かな? とりあえずやってみるね」
ゴドフリー君が頷いた後、私は神野和の中にある神力に意識を向けた。そして“ある神様”の事を頭に思い浮かべると、私の手の中には緑色の石が填まった綺麗なペンダントが現れた。
「よし……これで良いはず」
「ペンダント……? それが道案内をしてくれるのか?」
「そうだと思う。今回力を借りたのが
「へー……」
「そして私達の国の神話で道案内の神様として知られてる
「ノドカ……」
ゴドフリー君は私の手の中にあるペンダントをジッと見つめた後、微笑みながら静かに手に取った。
「それじゃあせっかくだし力を借りるか。ありがとうな、ノドカ」
「どういたしまして。でも、故郷に行く前に装備もしっかりと整えようね。道中の安全もそうだけど、ゴドフリー君を追放した人達がゴドフリー君の命を狙ってくる可能性もあるって配信の中で気づいたから」
「たしかにな……証なんて関係ないとか言ってたけど、俺を殺せば証が手に入って、名実共に勇者になれるって考えてもおかしくないか」
「うん……そういえば、ゴドフリー君が勇者だった時に助けた人達に力って借りれないの? 色々な所を旅してたんでしょ?」
「そうだな……俺が困った時は今度は自分達が力を貸すって言ってくれたし、余裕が出来たらちょっとそれも考えてみるか。もっとも、仲間だった奴らに先手は打たれてそうだから、何とも言えないけどな」
「あ、たしかに……」
ゴドフリー君の言う通りだ。すぐには信じなくてもゴドフリー君の悪評を仲間だった人達が広め始めたら、ゴドフリー君が困っていても耳を貸してくれない可能性は十分にあるのだ。ゴドフリー君の一番身近にいたのがその人達なのだから。
「あまり考えたくはないけど、可能性がある事だけは考えておかないとな」
「うん……」
「けど、そうなっても大丈夫だ。少なくとも、俺には気にかけてくれたり力を貸してくれたりする女神様が二人もいるんだからな」
「うん……って、二人?」
「ああ、お前もその一人だよ。設定って奴だとノドカはまだ幼い神様らしいけど、俺からすれば立派な女神様だ。だから、これからも頼りにさせてもらうぜ? 勇者の女神様」
「……うん! 女神様としてはまだまだだけど、ゴドフリー君のために色々頑張るね」
「ああ」
ゴドフリー君は安心したように笑い、私も嬉しさを感じながら笑った。配信者としても名実様としても私はまだまだだ。でも、私の事を女神様として頼ってくれる人がいるなら、私は力になりたい。助けを求めるその声や手を無視したくないから。
ペンダントを握り締めながらやる気に満ちた表情を浮かべるゴドフリー君を前に私も神野和としての活動に向けてのやる気を静かに高めた。
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