第11話 懸念

新神あらがみの皆様、乙神様です。和神VTuberの神野和でございます』




 ある日の夜、今日も私は神野和として配信をしていた。ティアさんやゴドフリー君との出会いから数日、配信活動とゴドフリー君の第二の人生の手伝いを並行して行っているため、確実に前よりも忙しい毎日にはなっていた。


 けれど、神庭の発展は実際に箱庭ゲームをやっているような感覚でとても楽しくやれており、ゴドフリー君の方も神庭に建てた施設で製造した農具などを使っているから少しずつ地面をならしたり近くの川を引いてきたり出来ているようで、神庭での会話の中でそれを聞いて嬉しくなっていた。


 だからか、ファンネームとして名付けた新神のみんなからも前よりも声が更に明るくなったとか声が聞いていてより心地よくなったとか言われるようになっていて、配信の方にも良い影響が出ているようだった。



「さて、今夜も夜会を始めて参りますが、その前に以前からお話をしている神庭の進捗についてお話をします」

『お、キタキタ!』

『神庭?』

『ご新規か。偶然、リアルでリスナーから貰った自作の箱庭ゲームの名前が神庭っていうらしい』

「その通りでございます。出会えた事自体が奇跡のような物だったのですが、その方が新神の一柱でして、お悩みが解決した事のお礼としてそのゲームを頂きました」

『ハードも独特の物だから直接画面は繋げられないけど、いつも現時点の神庭の様子を書いてそれを出してくれるから俺達もアドバイスしやすいんだよな』



 コメント欄に様々なコメントが流れる中、私は新神のみんなに対してありがたさを感じていた。ティアさんに許可を貰っていたので、私は神庭の件を特製の機種でしか出来ない自作のゲームとして説明していて、ゴドフリー君の事情もそのゲームの設定として話していた。


 そして中々そういうゲームをしないから、夜会の途中でアドバイスを貰いたいと話したら、新神のみんなは快くそれを許してくれ、今ではむしろ新神のみんなの方が楽しんでいた。



「現在、神庭の農場や果樹園での作物の生産は順調で、エリクシオンでの僻地の開拓も問題なく進んでいる状況です。

それによって、ゴドフリー君も訓練に時間を割く余裕が出来ており、本人の満足感も最高を維持出来ています」

『おお、良い感じ良い感じ』

『そういうステータスの維持も重要だよな。別ゲーでも疲労度とか満足度みたいなのが訓練の出来に関わるとかよくある話だし」

『後は追放してきた前の仲間が重要なイベントで関わってくるとかあり得そうだけど、その時って大抵がもう一度仲間にしてほしいって厚かましく言ってくるかやっぱり生かしておけなかったからみたいなパターンだよな……』

「……たしかにあり得ますね」



 たしかにその通りだ。よくある追放物でも自分達の都合で追放したにも関わらず困った時だけ頼ってこようとしたり自分に害を為しそうだと思ったから命を奪いに来たりという展開はあるらしく、ゴドフリー君の場合もそれがないと断言は出来ないのだ。



「……となれば、それの迎撃についても考えた方が良いのでしょうか。現時点では新たな武器の生成や訓練くらいしか行える事もないのですが……」

『出来そうならそう』

とりでみたいなのを作れるならそれが良いけど、仲間のシステムがあればそれが良いよな』

『一度裏切られている主人公に新たな仲間が出来る。よくある展開ではありますが、それと同時に燃える展開でもあるので実装されている可能性はありますよ』

『後は僻地を村みたいなのにして、そこに住民を誘致するとか』

『それあると管理がムズいけど、そういう迎撃イベントがあるかもっていう心積もりも出来るから良い指標になるよな』

「仲間や村……」



 仲間に関しては難しいとしてもゴドフリー君には故郷である村があると前に聞いた事があったので、私的にもそれが出来るならそうしたい。ただ、一個だけ懸念点があった。



「ゴドフリー君の設定上、故郷である村があるのですが、こういった追放物だとその村はどうなるのでしょうか……」

『それは作品次第ですね』

『悪役令嬢物だとお家はお取り潰しだったり場合によっては親類縁者も処刑されたりする』

『和様を不安がらせたいわけではないですが、そういった展開もあるので覚悟だけはしておいて頂けると幸いです』

「……わかりました。皆様、本当にありがとうございます」



 私は静かに頭を下げる。お世話になってきたはずの勇者を簡単に裏切り、後は野垂れ死にでもしろと言うかのように何もない僻地へと向かわせる人達だ。きっと、ゴドフリー君の故郷にも何かしているに違いない。


 とりあえず、配信の後にゴドフリー君に会ってこの事は伝えよう。ゴドフリー君も故郷の人達の事を心配しているだろうから。



「……では、神庭についてはここまでにし、ここからはいつものように皆様のお悩みに対してのお告げをさせてもらおうと思います。皆様、本日の夜会も良ければ最後までお付き合い下さい」



 その言葉をきっかけに新神のみんなからの様々なコメントが次々に流れ始める。そしてそのコメントに元気付けられながら私は神野和としてただひたすらに新神のみんなのコメントを読んでその悩みに答えていった。

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