ナナちゃんと回文

「ねえ、そこのお兄さん、読者には見えてない事になってるお兄さぁん!」


えーっ、困るよナナちゃん。

お兄さんは、お話進行の語り部、影の人、黒子なんだから。


「バスケ?」


いやいや、もう随分前に「黒子のバスケ」は、連載おわってるからね。

でもナナちゃんなんでジャンプ読んでるの?


「そんな事よりお兄さん、ナナは退屈なんだよぉー!

台風が来てて、風がスゴイからさぁ、さっき、パラソル持ってお外で〈メアリーポピンズごっこ〉やるってママに言ったら、部屋で大人しくしていなさいって、叱られちゃったの。

ホントわけの分からんママだよねぇ。

そうゆうわけで、暇してるのよお。

一緒に遊んでぇー」


100パーセントママの言い分が正しいと思うよナナちゃん。


「大人同士は、すぐそうやって肩を持つよねぇ。

百歩譲っても99.999パーセントはママが悪いと思うよぉ。

ホント、心の狭い融通がきかない意地悪さんなんだからあーーっ!!!」


あ、ナナちゃん、そんな大きな声で言ったらママに聞こえるよ。


「壁に耳あり、障子にメアリーポピンズ?」


ナナちゃん、ドヤ顔やめて!

ちっとも上手い事言ってないからね。


「ふん、なにさ。

ちょっとお兄さんのレベルに合わせてあげただけなのにさ。

それよか、遊ぼうよ。

ねえ、言葉遊びはどう?

ナナ、今、〈さかさま言葉〉がマイブームなんだよね」


さかさま言葉?


「そうよ、ルールは簡単。

上から読んでも下から読んでも同じ文章を作るって奴。

脳トレになるから山島竜太教授もオススメよぉー」


誰だよ、それ?

だいたいナナちゃん、ボケ防止はまだまだ早いんじゃない。


「いいじゃーん!

面白いよぉ~、さかさま言葉」


まあ良いか、じゃあ〈回文対決〉やって見ようか。


「怪文?」


ナナちゃん、字が違うから!

それに絶対ワザとだよね。

ナナちゃんはそっちのボケを防止した方がいいよ。


「ふふん、だぁかぁらぁ、お兄さんのレベルに合わせてあげてるだけだってばぁ。

じゃあ、始めましょうね。

あ、あと、〈ん〉で終わったら負けだからねぇ」


ナナちゃん、それは、

しぃーりぃーとぉーりぃー!!!

違うゲームになってるよぉー!

あれ、でも〈ん〉で始まって終わる回文って無さそうだから、あながち間違いでもないのかな?


「でしょ、でしょおー。

じゃあお兄さんの先攻で。

そうだ、折角の対決だから負けた方が次のランチをご馳走する事で、よろしくどうぞ!」


OK!

じゃあ、しんぶんし。


「なに、それ?」


えっと、さかさま言葉だよね。

なんだよ、なんだよ、なんだよぉ、そのウジ虫を見るような嫌悪の眼差しはぁ!


「ふん、保育園児以下ねっ!」


えーっ!何それ?

(トマトって言わなくて良かったぁ、ドキドキドキ)


「じゃあナナの番だね。

さかさま言葉のお手本を見せてあげるよ。

『ママが私にした我儘』

どうよ?」


えええーっ!

あのぅ、ナナちゃん、回文スペック高過ぎるよ。

しかも〈メアリーポピンズごっこ〉を禁止したお母さんを、さりげなくディスってるよねぇっー!


「はぁい、ウジ虫の番よぉー」


ああ、とうとうウジ虫にされちゃったよぉー。

トホホ、じゃあ、

竹藪焼けた、でお願いします。


「、、、。」

チッ!


あ、あ、ナナちゃん。

今、舌打ちしたよねぇ。

しかも雪の女王でも凍りつきそうな冷たい視線。


「はい、はい、もう対決とか勝負ってレベルの話じゃあないわよね。

では、ナナは、隣のお姉さんに捧げる、さかさま言葉でぇす」


女子高生のお姉さんの為にって、何?

回文を捧げるなんて聞いた事ないけど。


「それでは、発表しまぁーす。

『なんてしつけいい子、いいケツしてんな』

どうよ!」


だぁーっ!どうよ、じゃあネエよぉー!

完全にアウトのセクハラじゃん!

中年のおっさんかよぉ、ローマのネプチューンかよぉ!


「ふふん、ウジ虫のお兄さん、ナナの圧勝だったわね。

じゃあ、約束通り今度のランチはお兄さんのおごりでね。

『確かに貸した』わよ」


うわぁおーっ!

まだ続いてるのぉ?

(私、負けましたワ)

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